あの時、一番好きだった君に。

三嶋トウカ

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社会人_プロジェクト2年目春

第151話:君も同じ_1

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 我ながら、ビックリするほど下手くそな言葉だった。これほどまで気の利いた言葉が出てこないとは思わなかったし、正面を向いてきちんと話ができないとも思わなかった。私にとって、アレは終わった過去の話で、今回、自分のような人間を出したくない、そう考えていただけなのに。

(あれじゃあ身構えちゃうし、航河君も不審に思うよね、絶対そうだよね……)

 己のポンコツぶりに嫌気をさしつつ、私はただ、この日綾ちゃんからの連絡を待った。それはなぜか。今日はふたりきりで、会社の外で会っているのだ。反応が良く、ノリも良ければ、早々に遊ぶ日を決めてくるだろうと思ったから。

 綾ちゃんだって、モタモタしているうちに航河君に彼女ができてしまっては嫌だろう。だから、きっと言えるタイミングで言うはずだ。あのときの、私みたいに。それに、kiccaやメール、電話よりも、顔がちゃんと見えていて考える時間のあまりとられない、対面のほうが断る側は断り辛い。断られたくないことであれば、そういう手段をとるだろうから。

(あー……一分一秒が長い……)

 夏乃が隣でスヤスヤ眠る姿を横目で見ながら、私はスマホと睨めっこをしていた。ひろ君は未だ仕事から帰って来ていない。気にせずスマホを見ていられるから、好都合と言えば好都合だった。

「うー……」

 仕方なく、暇つぶしにゲームをする。私は育成か経営で、NPCとの交流のあるコミュニケーション系のゲームが好きなのに、最近は面白いものが無い。昔あったアプリはいつのまにかサポートを終え、ストアから消えてしまった。もっぱら電車に乗っている人たちがよくやっている、パズルゲームをライフの許す限りプレイしている。

 ヴーヴヴ――ヴーヴヴ――。

「わっ」

 突然手のなかで振動したスマホに驚き、思わず手を放してしまった。

「いたっ!」

 落ちたスマホがそのまま私の鼻を直撃した。

「いったぁ……何度目よコレ」

 鼻を擦りながら、再度スマホを手に取り、振動の原因を突き止める。

「あ、kiccaか。えーっと……綾ちゃん!」

 待ち侘びていた相手からの連絡。百パーセント来るとは思っていなかったが、それでも高確率で来るとは思っていた。読みが当たったようで嬉しい。が、複雑な気持ちもあった。

「やっぱり、誘ったのかな……まだだと良いな……でも可能性あるよね」

 心の声をダダ洩れにしながら、私は内容を確認した。

『お疲れさまです。今日、桐谷さんと会社帰りにカフェへ行ってきました』
「お疲れさま。そうなんだ。どこのカフェだろう? 美味しいデザートあった?」

 私はあくまでも、今日見かけたことも、航河君に話しかけたこともなかったていで返信した。送ったと同時に既読が付き、綾ちゃんがkiccaを開いたままであることがわかる。もしかしたら、このままリアルタイムでやり取りができるかもしれない。そう思っていると、すぐに返事が来た。

『クレープが美味しかったです! あと、抹茶のオレがあったんですが、ほろ苦くて味が濃い目で、千景さんの好きそうな感じでした。今度一緒に行きましょう!』
「わー! 良いね! 行きたい!」
『クレープのほかにワッフルもあって、トッピングが結構豊富でした。デザートも良かったんですけど、ほかのテーブルに運ばれてきた、パスタとサラダボウルも美味しそうでしたね。途中で頼もうかどうしようか悩んじゃうくらいに。是非! 行きましょう!』
「うん! 今から楽しみ!」
『ディナーもランチも、コースがあるみたいですよ! コースって言うのも、オシャレで良いですよね』
「コースって、普段は居酒屋くらいでしか食べないからなぁ。そういうのも楽しそう!」
『そう仰ってくれると思いまして! 私、メニュー写真に撮ってきたんです! 店員さんも、どうぞどうぞって感じで。送りますね!』

 添付ファイルで何枚か写真が届いた。

「ほうほう、これはなかなか」

 綾ちゃんは、しっかりと私のツボを心得ている。私の好きそうなメニューに料理の写真、コースは飲み放題が付き、デザートも選べる。

「私こういうの大好き!」
『千景さん、絶対好きだと思いました! あ、夜はメニューが一部変わるので、ドリンクじゃ変わり種も多いみたいですけど、どれも華やかで美味しそうでした!』
「頼まなきゃもったいない気がしちゃうね」
『そうなんですよ! それも飲み放題で選べるらしいので、頼むべきですよね』
「ひとつずつ試したくなっちゃう!」
『わかります! 飲めるだけ飲みたいなって思ってて』
「だよね。珍しいものから頼もうかなって思ってる、すでに」
『私もです!』

 指を動かしながら思う。これではただの女性同士会話であると。私が知りたい内容は今のところいっさい書かれていない。

「……今日はなにもなかったか?」

 首を傾げ、それならそれで……と思い始めたときだった。

『それで、今日、頑張って桐谷さんをお誘いしたんです。日付はまだ決めていませんが、映画へ行くことになりました』

 その文字を読んで、胸が締め付けられる思いだった。そうか。そうなのか。ついに綾ちゃんは航河君をデートに誘ったのか。
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