とあるオッドアイ魔術師と魔の紋章を持つ少女の、定められた運命

垣崎 奏

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5.番の魔術講師

9.チャールズとジョン 2

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「チャールズ」
「ジョンか」

(ルークの父親の話を聞いたとき以来か…)

 衛兵から訪問者と言われ、ジョンだと確認してから執務室に通した。ふたりのオッドアイ魔術師がエスト王国に入ってから、ジョンとは初めての対面だ。チャールズが何かと理由をつけて避けていたから、ジョンが強行手段に出たのだろう。

 ルークがミアを本当に大切にしているのは、ふたりの結婚式に立ち会ったときから感じていた。大笑いでもして誤魔化さなければ、その場に居られないほどに、ルークの過保護ぶりを見せられた。ミアは、番であることや任務で出会ったことを差し置いても、ルークに一生大切にされるだろう。

(私が、エリザベスを想うようにな…)

 ずっとひとりだったルークにも、やっと想える相手ができたのかと、安心したのも束の間だった。その時点ですでに、いくつかの場面は見えていた。

 そもそも、ルークとミアを結びつけたのは、チャールズの予知だ。最終的な過程がどのようなものか、今でも全容は掴めていない。それでも、あのふたりにはこの任務を受けてもらうしかなかった。セントレ王国国王としていくら強くそう思っても、友人としてのチャールズが邪魔をして、割り切ることができなかった。

 ルークには話していないと聞いているが、ジョンにも心の通う相手は存在する。心が通っても、魔力量の釣り合う番ではないため、交わりはしていないと、昔話していた。だからこそ、心の通った番であるルークとミアを、今回この任務に就かせてしまったことについて、ジョンにも思うところがあるはずなのだ。

 親などによって、子どもから大人に育っていく過程で与えられる感情が乏しいあのふたり、やっと心を通わせることを知ったふたりに、予知があったとはいえ、なんという任務に就かせてしまったのか。チャールズを射貫くジョンの目線で、その後悔が見抜かれているのが分かった。

「…ルークももう二十四だ。立派な青年で、番も見つけた。あのふたりなら、乗り越えてくるだろう」
「弟子を見放すというのか…!」

 チャールズには、そのジョンの言葉が、ルークとミアを突き放すように聞こえた。希望を見出しているようには感じられなかった。

 ジョンは何のために、チャールズに会いに来たのだろう。今までも、用があれば互いに先触れを出し、急な訪問は避けてきた。チャールズが、揺らいでしまっているからなのだろうか。先代国王ジョージと今でも対面するほどだ、若い国王の感情の揺れなど、手に取るように分かるのかもしれない。

「あんなにも魔力を有し、それを制御できるオッドアイを見たことがない」
「ルークが初めてだと?」
「ミアもだ。ルークの弟子だから当然だが」

(…それを、どう捉えろと?)

「ルークは、強い。それに、番のミアも。何をされても帰ってくる」
「それが、心を通わせない交わりを、何度も強要されるとしてもか?」

 チャールズには、エリザベスしかいない。エリザベス以外を抱ける気はしない。たとえエリザベス以外を抱くことが王家の義務と言われても、きっと他の手段を探す。だからこそ余計に、あのふたりはしっかり割り切っていると思おうとしても、抵抗したいチャールズが出てきてしまう。

「そのための策を、ふたりは残した。私たちは、信じることしかできない」

 ジョンの言うことは、まったくもって正しい。もうふたりはエスト王国に入っている。月に一度、魔術講師としての報告を手紙で送るように協定に盛り込んだが、果たして守られるだろうか。ある程度の自由が、ふたりに残っていればいいが。

「チャールズには、チャールズにしかできない準備がある。ふたりの未来のために」
「そうだな…」

 ジョンの言う準備は、周辺国との交渉のことだ。エスト王国との条約が切れたすぐあとには、国際会議がある。どう立ち振る舞うかで、エスト王国を追い詰めようとしている。正確には、エスト王国の王族が排除できればいい。あの国王の政治は、目に余る。


 幼いころ、まだ王子だったチャールズは、父親である国王ジョージの外遊について行き、エスト王国の王宮へ入ったことがある。その内部を、大人になってから夢で見るとは、思いもよらなかった。

 エスト王国の王宮が見えてからは、予知を見る回数が増えた。あの風景を実現させるためには、予知で見切れなかった部分も含め、手順を間違うことはできない。ひとつでも掛け違えば、ルークとミアの将来に関わる。

 あのふたりに、無事に帰って来れると伝えられなかったのは、不確定要素が多すぎたからだ。小瓶の魔力も、使わずに済むならそのほうがいいに決まっている。

 断片的に見えた未来を整理し繋ぎ合わせ、ルークとミアを引き合わせ、エリザベスの妊娠もジェームズの誕生も計り、やっとここまで来た。予知の完結まであと少し、ここで気を緩めるわけにはいかなかった。

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