とあるオッドアイ魔術師と魔の紋章を持つ少女の、定められた運命

垣崎 奏

文字の大きさ
94 / 103
後日譚:エピローグにかえて

13.オッドアイの会合 中

しおりを挟む

「ミアの父親である領地主は、旧エスト王国と繋がり、セントレ王国に東の脅威を差し向けていた張本人でした。公表されたはずです。僕が制裁し、その褒賞としてミアと婚約しました」

 ルークが記録魔術で、エスト王国の魔術師に囲まれたときのことを見せる、全員が、同郷の魔術師の証明である模様の入ったマントを着ていた。

 オルディスを見ると、何かに驚いているようだった。王家の一員だったオルディスだ、この魔術師の中に、知り合いがいたのかもしれない。

「魔の紋章は、オッドアイが生まれるときに、その子自身が自分を呪ってできる模様で、魔の紋章を持つ子どもは三歳まで生きられないとされています。その理由は不明と、セントレ王国に遺る書物には記載があります」

 皆が皆、ルークの次の言葉を待っている。話がどう進むのか、知っているミアは微笑んでいる。

(ああ……、本当によかった)

「『紋章持ちが成長できないのは、子ども自身の魔力と紋章の魔力が干渉し、中和できないから』とすれば、いかかでしょう。僕が出会ったときのミアはすでに十六歳でした」

 ルークが言葉を切ると、またざわざわと声が聞こえてくる。魔の紋章は伝説級の話で、かろうじて頭の片隅にあるような知識だ。珍しいことを話すと、こうして皆で情報交換をしながら会合は進んでいくものらしい。

「実際、ミアに会ってすぐのころは、僕がミアの魔力を感じることはできませんでしたが、ミアは魔術を扱えました。積極的に使ってもらうようになってからは、紋章が徐々に薄まっていきました」

 屋敷の場所が分からないように加工しつつ、ミアが初めて魔術を使った場面を見せる。ここにいるのはオッドアイ魔術師だけだから、魔力の使い始めとしては、皆に共通するような場面だろう。オルディスだけが、驚いてのけぞっていた。

「匂いでミアが番だと分かっていたため婚約し、結婚しました。もちろん、その先には交わりがあります。心の距離を縮めることは問題ありませんでしたが、肝心のミアの魔力は全く感じられないまま、初夜を迎えました」

 その危うさが分からないような、この話題を笑う人はいない。皆オッドアイ魔術師で、交わりの相手がいるのであれば、その行為には細心の注意を払っている人しか居ない。心が通っていても、相手を思って交わらないペアも多いだろう。

「結果的に、初夜の最中に中和が起き、ミアの魔力を感じることができました。紋章が消え、ミアの瞳の色が漆黒からピンクに代わりました。その後は常に、ミアの魔力を感じられています。『紋章の魔力をミアが使えるようになり、ミアの魔力に置き換わった』とすれば、今ミアが紋章なしでここにいることも説明がつきます」

 驚きと戸惑いの交じったような声が、そこかしこから聞こえる。魔の紋章持ちに出会うことがそもそもないが、オッドアイの番になれる魔術師が存在するかもしれない。魔術師としての魔力増強に希望のある話だ。確認もしたくなるだろう。

「つまり、もし魔の紋章を持って生まれた子どもから魔力を感じられるなら、それはその子自身の魔力であると考えられます。それを封印し、魔の紋章だけを持った状態を作り出せば、成長することができるかもしれません。さらに、番を見つけ初夜を迎えることができれば、紋章を解放しオッドアイとして生きられると言えるのではないでしょうか」

 ミアを使って、そんな仮説を検証したかったわけではない。本当に、ミアを失いたくなかった。それだけで動いていた。あの時の緊張を共有できる人はいないだろう。

 報告すべき話題を、ひとつ終えられた。少し、肩の荷が下りた。ミアを見ると、頷いてくれた。ゆっくりと息を吸って、吐いて、また吸った。

 このあとの、エスト王国で何をされていたのかを話すほうが気が重い。新聞での報道は間違いなく皆が目を通しているが、裏があったことも分かっているだろう。

 ミアが監獄にルークを助けに来てくれたとき、ジョンの他にも強い魔力を感じた。あの場にいたのも、オッドアイだ。エスト王国の内部事情に関しては、オルディスに丸投げするが、魔術講師としてどう過ごしたのかは、ルークが話す必要がある。精神的な負担が大きいため、記録魔術は使わないし、ミアに代わってもらうことも選択肢になかった。

 セントレ王国に来てから、実年齢以上に幼く見え、何かとルークを挑発してきたオルディスも、元王子、元第一王位継承者だ。人の前に立つと引き締まって見えた。さっきまでルークが立って話していた辺りまで進んで、エスト王国が何をやろうとしていたのか、しっかりと報告を終え、戻ってきた。


 ☆


 人工的にオッドアイ魔術師を増やしそうとし、国力増強を図ったが、当然無理だったこと。
 オッドアイについては、魔術師であり国王だった父親が知っていて、そこからオッドアイへの憧れが広がったこと。
 人工オッドアイの手術とその経過。そして、魔術講師として来たルークとミアに、何をしたのか。

 オルディスも、記録魔術を出すことはしない。セントレ王国に来て、ふたりと話せば話すほど、自分の記憶を改変したくなる。

 あんな国王、もっと早くに消しておけばよかった。タイミングなんて図らずに、無理にでも反抗しておけばよかった。

 でも、今セントレ王国で暮らしているのは、オルディスにとって苦痛ではない。エスト王国が国際会議の主催となる年まで待って、ルークとミアに出会えてよかったと思えるほどに、セントレ王国での暮らしは満足できるものだ。

 そのふたりは、オルディスの後ろで、ルークがミアの腰に手を回し支えている。魔力を使わずに、人体のあたたかさだけでミアの震えを止めてしまうルークは、やはりミアに相当想われているし、逆もそうなのだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています

紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、 ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。 「もう君は、僕の管理下だよ」 退院と同時に退職手続きは完了。 住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。 外出制限、健康管理、過保護な独占欲。 甘くて危険な“保護生活”の中で、 私は少しずつ彼に心を奪われていく――。 元社畜OL×執着気味の溺愛社長 囲い込み同棲ラブストーリー。

幼馴染の勇者に「魔王を倒して帰ってきたら何でもしてあげる」と言った結果

景華
恋愛
平和な村で毎日を過ごす村娘ステラ。 ある日ステラの長年の想い人である幼馴染であるリードが勇者として選ばれ、聖女、女剣士、女魔術師と共に魔王討伐に向かうことになる。 「俺……ステラと離れたくない」 そんなリードに、ステラは思わずこう告げる。 「そうだ‼ リードが帰ってきたら、私がリードのお願い、一つだけなんでも叶えてあげる‼」 そんなとっさにステラから飛び出た約束を胸に、リードは村を旅立つ。 それから半年、毎日リードの無事を祈り続けるステラのもとに、リードの史上最速での魔王城攻略の知らせが届く。 勇者一行はこれからたくさんの祝勝パーティに参加した後、故郷に凱旋するというが、それと同時に、パーティメンバーである聖女と女剣士、そして女魔術師の話も耳にすることになる。 戦いの昂りを鎮める役割も担うという三人は、戦いの後全員が重婚の認められた勇者の嫁になるということを知ったステラは思いを諦めようとするが、突然現れたリードは彼女に『ステラの身体《約束のお願い》』を迫って来て──? 誰がどう見ても両片思いな二人がお願いをきっかけに結ばれるまで──。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

処理中です...