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7-1.(……、オレは、例外)※
しおりを挟むその後も、毎週欠かさず週末には楓羽と食事に行き、ホテルへ入る。ベッドで一回、もしくは二回、浴室で二回目か三回目をするのがデフォルト、それ以上は楓羽の気分次第だ。
生理の日はオレの家で、洋画を観ることが増えた。楓羽の専攻が英文学だったらしく、時代背景や文化について解説を聞けるのが面白かった。
「ぜんくんの方が知ってるでしょ」
「そんなことないよ」
「覚えてるんだから、帰国子女なの」
「小学校に上がる前の話で、はっきり覚えてることの方が少ないよ。勉強したわけでもない」
日本に帰ってきたのは、義務教育に入る年齢だったからだ。父親の海外勤務はオレが生まれる前から続いていて、母親も同行を望んだ。両親とも日本育ちで、海外を見れば見るほど、現地の学校に通わせる気はなくなったらしい。
それで祖母に預けられ、近所に住んでいた楓羽と仲良くなった。
初めこそ母親は、父親のところと日本を往復していたけど、オレが日本の生活に慣れると頻度は落ち、今ではメッセージのやり取りくらいで、顔を合わせることは滅多になくなった。不自由もしなかったし、特別両親に会いたいとも思っていない。海外流に育って、幼い頃から自分の部屋があって、自律していたからかもしれない。
少し、期待してしまった。楓羽が専攻を選んだ理由に、オレが関わっているのではないかと。オレが帰国子女だったから、楓羽が英語に興味を持ったのではないかと。
やんわり尋ねてみれば、テストで一番楽に点数を取れるのが英語だったからという、なんとも現実的な理由だった。でも、なぜ英語が得意だったのかまでは、教えてもらえなかった。
楓羽の配属は北米案件を担当する班で、あの遊び人の谷先輩とは普段からよく話すらしい。欧州案件のオレとは、業務上の関わりはほぼない。
(先輩に手を出さなかったのは、リアルが初対面の人だから……、オレは、例外)
家でもホテルでも、ふたりで居る時は隣で密着するのが当たり前、オレの腕の中には常に楓羽がいた。
◇
少し、気合を入れていた。楓羽には、明日の朝、オレよりも先に起きられないように、疲れてもらう必要がある。
「今日さ、目一杯前戯したいんだけど」
「いいけど……、ぜんくん、我慢するの?」
「入れないわけじゃないよ、ふーちゃんの限界知りたいだけ」
内緒にしておいた、ネットで買った手枷と目隠しを包みから取り出した。これを持って出社して、いくらカモフラージュしているとはいえ、何かあったらと気が気ではなかった。
「したことあるって言ってたよね?」
「うん」
楓羽に寝転んでもらって、薄いピンク色でふわふわした目隠しを着けてあげる。おそろいで買った手枷も同じピンク色にファーがついていて、白くて細い手首によく映えた。自由を失った手を頭の上へ置くと、留まってくれる。
きゅっと一文字に引かれた唇を、割った。頭の溶ける深いキスをして、頬にもちゅっと触れた。それから耳や首筋を舐め上げると、楓羽がぶるっと震える。感じ始めている証拠だ。そもそも、楓羽によれば、ホテルに入った時点で期待して、普通サイズなら入るくらいに濡れているらしいけど。
◇
「ぜんくん……、ぜんくんっ」
「ん」
上半身を攻めていると、楓羽がやたらと呼んでくる。いつもなら、果てるタイミングで呼ぶことが多いのに。
薄いピンク色に染まる肌を見ながら、昂りを抑えて頭を回す。何度も身体を重ねているオレとの行為だし、目を瞑りがちな楓羽が、オレの姿を目視できないことを不安がっているのではないはずだ。
今、楓羽の瞼の裏に映るものは、何だろう。思い当たったのは、楓羽と関係を持った、オレの知らない過去の男たち。この前の電マも蘇る。
「……もしかして、目隠しで酷いことされた? それとも手の方?」
「ぜんくん……」
「無理しなくていい。オレは今までの男とは違うよ」
目隠しも拘束も解く。まだほとんど何もしていないのに涙目で、指を絡めた手は震えていた。
「怖かったね、ごめんね」
「ぜんくん……?」
詳しいことは、聞かない。決めつけかもしれないけど、他の男にされた酷いことなんて、忘れてしまえばいい。これから先の、オレとの行為は全て、気持ちいいものだと覚えていてほしい。
「する気分、残ってる?」
「うん」
「ん」
止めたいなら、また気分が乗る時にすればいいだけだ。オレの欲の発散とサプライズなんて、別にいつでもいいと言えばいつでもいい。
涙目が期待に染まっているのを確認して、ちゅっちゅっと頬と唇を啄んでから、攻める深いキスをする。離れると、楓羽は枕の上の方を掴んでいた。
「んんっ」
白い肌に吸い込まれるように、楓羽の匂いを強く感じながら、脇から二の腕を舐めた。腕に守られがちな脇腹を舐めても、楓羽は手で枕を握ったまま、抵抗してこない。吐息を漏らして震えているだけだ。
オレの希望に楓羽が応えようとしてくれていると、自惚れてもいいのだろうか。そんな風にされて、興奮しない男はいないだろう。大きく勃ち上がった凶器を楓羽の身体に当てながら、ゆっくりと前戯を進めた。
◇
「ん、ぜんくん?」
「すぐ戻るよ」
ホテルに来ると先に頼んでしまうのが、翌朝のモーニングと、無料のドリンクだ。行為の最中にインターホンの音は聞きたくない。楓羽のシャワー中にフロントへ連絡して、モーニングの予約とドリンクを届けてもらうように頼んでおく。
今回のホテルでは、アイスボックスにロックアイスが入っていて、グラスとペットボトルも一緒に運ばれてきた。普段と違うと、つい悪戯心に火がついてしまう。
ピックで割って、手頃なサイズの氷をひとつ、口に入れる。歯で氷を支え半分ほど出た状態で、目を逸らして待っていた楓羽のへそに寄った。
「ひあっ!」
「ふっ」
聞いたことのない種類の高い声で、思わず笑ってしまった。そのまま周りをくるくると氷で撫でてあげると、窪みに水が溜まっていく。
「あっ、ぜんくん、つめたいっ」
「んん」
当然、狙ってやっている。へそから離れ、ゆっくり寄り道をしながら膨らみを目指す。オレが何をしたいのか、身体を震わせる楓羽には分かっているだろう。きっと触れてもらいたくて仕方のない、綺麗に勃ったピンク色の頂点が見える。
でも今日は、すぐに触ってあげるつもりはない。突起の周りをくるくると回って、楓羽がオレを呼ぶ甘い声を聞き続ける。咥えているのが辛くなって、氷を指で摘む。楓羽の表情は溶け、直接的な刺激を待っていた。
「……欲しい?」
「ほしい。なめて、ぜんくん」
照れる素振りもなく即答したということは、相当に焦れている証拠だ。オレが乗っているにも関わらず、楓羽の足は擦り合わされているし、刺激を求めているのは分かっている。「どうしようかな」と言いつつ、持っていた氷を、先端に当てた。
「んっ! あっ、つめたっ」
「そうだろうね」
コリコリと動かすと、氷から水が滴り、膨らみを辿って肌を流れていく。
(エロいな……)
流れる水を追うように舐めとり、期待で膨れ上がった突起に吸いつくと、楓羽の身体が浮いた。
「んんんっ!」
「軽くイっちゃったかな。気持ちいいね、ふーちゃん」
「あ……、はあっ、はっ」
チロチロと舌先で先端を転がし、じゅっと吸って、全体を押しつぶす。その間、もう片方は手のひらで揉みほぐしつつ、頂点には氷を当てて冷やした。顔を移動して、小さくなった氷を咥えて、舌で苛めていた突起に押し当てる。
「あっ、んんっ!」
きゅっと指で摘んだり、くるくると先端だけを回したり、指での刺激もたっぷりあげた。いつもの舌と指に加え、氷の冷たさに楓羽は、上半身だけでも数回果てただろう。反応が可愛すぎて、途中で数えるのを止めた。
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