隠密王子の侍女

垣崎 奏

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<番外2>※

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「ノア……、僕に、何を隠している?」

 いつも通りふたりで入った湯浴み終わりで、裸のままベッドの縁に腰掛け、ノアは抱かれるのを待っていた。セオドアにそう問われ、どきっと肩を震わせてしまった。

「……何も」
「本当に?」
「うん」

 ノアには、その抵抗が無駄なことも分かっていた。同じ私室で夜を共に過ごすこの王子の仕事は隠密で、情報を集めるのに長けている。ノアの仕草から違和感を読み取るのも簡単だろう。

 でも、これは言えない。明日がセオドアの誕生日で、祝いたいがためにそわそわしているなんて。王宮にいた頃とは違い、私邸の使用人とは話すことも増えた。その中で、セオドアの誕生日を教えてもらい、ケーキ作りにノアも混ぜて欲しいと頼んだのだ。

 明日も昼間、セオドアは屋敷にいない。ノアは専属使用人としての仕事をいつも通りこなせばいい日で、厨房に顔を出す時間を作るのも難しくない。他の仕事をさっさと片付けてしまえばいい。

「……仕方ない。教えてくれないのなら、教えてくれるまで苛めるだけだ」
「え?」

 悲しそうな顔をしたセオドアに、軽く触れるだけのキスをされた。

「大丈夫、痛いことも怖がることもしないから」

 セオドアに促されるまま、ノアはベッドに備え付けられた手枷を嵌められた。セオドアが頬に触れ、親指を口に入れてくる。開かれた口に、タオルが押し込まれる。

「苦しくない?」
「ん」
「話す気になったら、取ってあげるから」

 タオルは、何か染み込ませてあったのだろう、少し甘く、徐々に力が抜けるのが分かった。身体が熱くなってはこないし、下半身も反応しない。媚薬の類ではなく、痺れや麻痺など、動けなくさせる薬なのだろう。

 怖くはなかった。セオドアは普段から攻めるのが好きだし、証拠品を実験する時も加減してくれる。今日、セオドアに対して隠し事をしているのはノアで、セオドアがしたいことに従うのが当然だ。

 脇腹に、セオドアの指が這う。触れるか触れないかの軽いタッチで、上半身を撫で回される。

「んっ……」
「くすぐったいね」

 突起に触れられなくてもノアの息は上がり、熱が集まってしまう。薬の作用か、身体を捻ることはできない。

「これは、知ってるよね、ノア」

 セオドアが取り出したのは、身体に当てて振動で筋肉を解すマッサージ機だ。もちろん、それを疲れたセオドアの肩に当てるのはノアだから、マッサージ機としての使い方は知っていた。

「……この振動を、ここに当てたら、どうなると思う?」

 目の前に見せられた機械で、胸の突起をちょんちょんと触れられる。

「ちょっと怖い? 大丈夫だよ、僕がいるからね」

 カチっと電源を入れた音がして、とっくに勃っていた左側から快感が走ってくる。

「んっ、んんっ」
「うん、気持ちいいね」
「んっ、んあ……」
「こっちが、寂しそうだ」
「んんっ!」

 セオドアが、もう片方に吸い付いた。

「果てないでね、今夜はまだ長いよ」

 いつもより強い快感が、ノアの身体を走る。背中を反って逃したくても、身体はノアの言うことを聞かない。身動きの取れないまま、ひたすら感じることしかできない。

「なあに、ノア。言ってごらん?」
「ん、んん!」
「ごめんね、上手く聞き取れないや」

 首を振ってアピールしようとしても、ゆったりとした動きになって必死さが伝わらない。セオドアの舌と機械は左右を入れ替えながら、ノアをひたすら高めていく。

「ん、んっ、んんっ!」
「いっぱい出たね、まだ下には触ってないのに」

 セオドアがノアの足の間に陣取り、機械を徐々に一番敏感な場所へと近づけていく。目で休憩が欲しいと訴えてみても、届かない。当然だろう、セオドアが嫌がることを先にしたのはノアだ。今までも、主導権はセオドアにあった。

「嫌じゃないよね、また勃ってきてるし」
「んっ、んんっ!」

 セオドアの指がそっと触れて、ノアの身体に快感が走る。扱かれたわけでもないのに、勃ち上がっているのが分かる。痛いことや極端に辛いことはされない。その安心感があるからこそ、隠し事の理由は言いたくない。

「んんっ……」

 根元に、機械の振動が届く。顔も満足に動かせないため、ノアが直視することはできない。段々と先端に向けて、その振動が上がってくる。

「ん、んあ……」
「出口に当てたら、どうなるかな?」

 セオドアのその声に、目を瞑った。酷い快感が身体を駆け巡るに違いない。耐えられはしない。そのノアの姿を、セオドアは望んでいる。

 果てたばかりで敏感な先端に、機械の振動が到達する。出口からその隙間を通って中へと振動が入り込んでくるような感覚さえする。感じたことのない、怖いくらいの快感でも、未だに薬が効いていて、セオドアに伝える手段がない。口に嵌められた布からはもう味はしない。どこかのタイミングでは、首を振れるようになるはずだが、今ではない。

「ん、ん、あ、んあああっ!」

 普段の放出と違って、もっと粘度の薄い液体が大量に身体へ掛かる。血の気が引いたノアに、セオドアの優しい声が届く。

「大丈夫、気持ちいい証拠だよ、粗相じゃない」
「あっ……」

 セオドアの指が、ノアの出した精ではない何かを確かめるように、腹部を撫でる。

「ノア、初めて吹いたね。でも冷静になって、ここは果ててても精神的に我慢したよね? 媚薬もないし、恥ずかしかった?」

 上手く返事を返せないでいると、ノア自身にセオドアが優しく触れてくる。その刺激に、またどうしようもなく熱を持つ。機械が当てられ、裏筋から先端に向けて滑らされ、そして出口を攻められる。

「あ、ああっ!」
「今回はどう? 頭の中、気持ちいいの突き抜けてるよね」

 ノアはセオドアの言葉に何の反応も返せず、ただ放心していた。チカチカと視界が飛び、セオドアを捉えるのにも時間が掛かった。セオドアがやっと、口の布を取ってくれた。

「ここまでしても、言いたくないんだ?」
「……ごめんなさい」
「そうか……」

 セオドアが、解放されたノアの口にキスをする。

「……明日に関係するなら、このまま苛めようかな。もうすぐ日付も変わるし、誕生日プレゼントに」

 ノアは、当然無抵抗だ。セオドアを、ノアが欺けることなどない。後で聞けるなら、いつから気付いていたかくらいだろう。

「後ろを解すのもいつもと同じだと飽きるだろうし、違うの試してもいいかな」
「ん……」
「足を上げて、僕によく見せて」

 セオドアはいつもの小瓶と、いくつもの球体のついた棒のような物を取り出した。ノアの孔に潤滑油を馴染ませながら、棒にも塗っていく。

「これ、アナルビーズっていうんだ。ここ専用の玩具だよ」
「んんっ」
「うん、ゆっくり飲み込んで」

 いつもなら挿入前の慣らしはセオドアの指が入ってくるが、今日は違った。球体と球体の間は細くなっていて、ひとつ身体に入ってくるたびに異物感がする。

「そのまま、しばらく咥えて。ノアが機械で果てるの、なんか嫌なんだ。僕がそうさせてるのにね」
「え?」
「僕の前戯と機械の前戯、どっちが好き?」
「セオに決まってる」
「そう」

 セオドアがノアの口元まで戻ってきて、裸の上半身を重ねた。体温が感じられるだけでも、快感への怖さが和らぐ。今日はもう何度も果てている。この先も果てさせられるのは間違いないが、機械を使わずにセオドアが攻めてくれる番なのだろう。

 ノアは、完全に壊されると思った。セオドアは丁寧に、本当に丁寧にノアの身体のパーツひとつひとつを舐めた。耳から首筋、鎖骨はもちろんのこと、脇や臍も散々しゃぶられ、ノア自身の近くまで下りたと思えば、上半身へ戻り、胸の突起をなぶり始める。初めはくるくると、中央には触れず、油断したところを急に吸われ、甘噛みされる。

「んんっ」
「出そうだった? でもちょっと時間も空いたし、擦らないと出ないよね」
「あ、あっ、セオ……」
「気持ちいい?」
「うん……」
「一応、僕に隠し事してるお仕置きだから、ただ気持ちいいだけなのはね……」
「あっ、んん」

 セオドアの舌と指先が、勃ちに勃ったノアの突起をちろちろこりこりと弄ってくる。ノアの好きな攻め方であることは、当然セオドアも知っている。

「ん、んっ」
「ねえ、ノア。飲み込んでる玩具はどんな感じ? 胸で感じて、締め付けてるよね?」
「ああっ」

 セオドアが手を回し、孔に入った棒を少し引き抜いた。球体がひとつだけ、体外に出ただろうか。

「ノア、これ、ゆっくり外に押し出してみて」
「え……」
「難しいかな、でも隠し事教えてくれないし」

 教えてしまってもいいかもしれない。この玩具を外に出そうとするのは、排泄するように力を入れることで、とても王子の前ですることではない。セオドアとの行為の準備のために、毎日の湯浴みで腸内洗浄を行っているが、それとは違う恥ずかしさがある。

「ねえ、ノア。どうする?」
「…………」
「あ、でももう十二時を回ってるんだね。僕の誕生日だ。やっぱり、頑張って出してみて。全部見ててあげるから」

 王子の要望を、ノアは断れない。そう考えることもセオドアは分かっている。ノアが足を広げた間にセオドアはいる。少し、腹部に力を入れた。

「うう……」
「お、一個出てきた。もう一個出せる?」
「んん」
「いい子だ、ノア。そろそろ僕が限界だよ」
「んあああ!」

 角度をつけて一気に引き抜かれ、球体が快感を拾いやすい部分を通り、ノアは腰を反った。ベッドに戻り息を整えている間に、その広がった孔にはぴったりと、熱くて硬いものが当たる。

 セオドアはいつも、ノアに快感を与えている間、我慢している。それが最高の快感を得られる方法だからと言っていたが、実際のところ、あんなにバキバキに勃たせていたら痛くて苦しいのではないかと思ってしまう。それが、一気に奥まで到達した。

「セオっ!」
「ふう……、痛くはないね?」
「んっ……」
「すごい締め付けだ……、さっきの玩具、そんなによかった?」

 辛うじて首を横に振る。機械や玩具より何より、セオドア自身に貫かれるのが一番気持ちいい。

「どう? 僕の感じられる? この辺りまで入ってるよね」
「あっ……、あっ」

 ノアの下腹部を、セオドアがぐっと押す。玩具が入っていたこともあり、いつもよりもセオドアの大きさと熱さが身体に響く。

「あ、あっ、セオっ」
「うん、気持ちいいね」
「ん、んっ、あっ」
「ノア……、もう少し、頑張れそう?」
「ん、なに……? あっ」

 セオドアがノアの足を肩に担ぐ。セオドアの先端が、ノアの最奥に当たっているのが分かる。

「まだ、先があるんだ」

 セオドアがノアの下腹部を撫でつつ固定しながら、セオドア自身をすっかり受け入れたノアの中を、さらに進んでくる。セオドアが、入ってはいけないところへ、入ろうとしている。

「え、えっ、あああっ、セオっ!」
「ここが、ノアの一番奥。ここが欲しかったんだ」
「あっ、まっ、ああっ」
「届いてよかった……、ノア、ここ突くたびに軽く果ててるね。癖になる?」
「セオ……、これらめ、おかしくなるっ」
「うん、それでいいんだよ。ノアは僕のだから。ここにその快感を植え付けるのは僕だ。今日は媚薬も入ってないし、しっかり覚えて」
「あっ、セオ、セオっ!」

 ゆっくりとした最奥だけを突く動きを繰り返すセオドアの刺激に、ノアは焦れてきた。今日はずっと攻め続けられ、ほぼ毎夜抱かれている分それに耐えられる体力もつき、やっとセオドア自身から体内に与えられる快感を、もっと刻んで欲しかった。

「やっと薬が切れてきたかな。腰が揺れてる。ノア、どうされたい?」
「……セオと、果てたい」
「ん」

 セオドアも限界は近かったのだろう、パンパンとリズムよく腰を打ち鳴らすと、すぐに高みがやってきた。

「あっ、んあ、セオっ!」
「っ…………」

 セオドアの律動が止まり、身体がノアの方へ倒れてくる。キスを受け入れ安心したノアは、そのまま目を閉じた。

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