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<6>ホテルにて
しおりを挟む「んん……」
「声、出していいよ」
「ん、やだ」
「ふっ」
否定すると、神坂は笑った。反応を楽しんでくれるなら、それでいい。
恥ずかしいのもあるが、ここは家だ。近所迷惑にはなりたくない。
隣に住むのは同じ大学の後輩で、学部も違うし噂されても大きなダメージはないが、それは僕に限った話だ。神坂は、とにかく目立つ。
(まあ、知られても良さそうな感じではあるけど)
大学で待ち合わせると、神坂が女子を引き連れてくる時がある。どうやら、引き剥がすのに失敗しているようで、僕の存在を盾にしたいらしい。
きゃあきゃあと騒ぐ女子を、神坂は相手にしない。そのクールさがモテている原因でもあるだろうが、勤務中にバイト仲間からあの絡まれ方をされるなら、確かに鬱陶しい。
「俺、先輩の限界知りたいです」
「『限界』?」
ゆるゆると愛撫していた手を止めた神坂に、宣言された。快感に流されていないのを、感じ取られてしまった。
「もっと思いっきり抱いてみたい」
「っ、我慢、してるの」
「がっついて、嫌われたくないので」
「ないんじゃない、神坂ががっつくとか」
「分かってないですね、俺がどれくらい先輩のこと好きか」
(ほら、そうやって口に出せるとことかさ……、勘違いする女子多そう)
神坂の思いっきりがどの程度なのか、僕には分からない。想像したところで、完全に分かるわけがない。
確実に言えるのは、神坂は僕を抱くことに戸惑いがない。絶対に気持ち良くしてくれると信じられるからこそ、身体を預けられる。
大学生になってすぐの頃、僕にそういうことを教えてくれた年上のお兄さんが、「狙われやすそうだから気を付けてね」と注意してくれた。
玩具を使うくらいに僕を気に入って遊んでくれたその人は、元々付き合っていた人とパートナーシップ制度を使って幸せを掴んだ。僕と初めて会った時には恋人との関係が上手くいってなかったらしいが、僕と遊ぶことが良い息抜きになったらしい。
今ではもう、会うことはなくなったし、連絡も取っていない。
細身で可愛いと言われる僕の見た目は、確かにいろいろと狙われた。
繁華街から帰る時には後ろから視線を感じたし、実際に肩へ触れられたり腰を引き寄せられたりした。屋外でも構わず、下半身を押し付けられたことも少なくない。
そのたびにわざと大声で、かつ中国語で文句を言った。ややこしいと思われれば、勝手に離れてくれる。
話しかけられるのが面倒になった僕の行動範囲は家と大学、それからバイト先の塾とスーパーだけだ。どれも徒歩圏内、スーパーで買えない物はネットで買ってしまう。
だから、その中に神坂のバイト先の定食屋が入っただけでも、僕にとっては大きな変化だった。
◇
久々、ホテルに訪れた。
当然だが、身体を繋げるために部屋に入っている。のんびりする余裕はない。神坂がフルスロットルで触れてくる。
少しぬめりのある白い入浴剤の入った湯船で、弱い乳首を散々弄られる。すっかり好きな触れ方を覚えられ、あっという間に限界がやってくる。
「あ……、こう、さか……」
「気持ちいい? 腰揺れてる」
「んっ……」
神坂は僕の背中側にいる。お尻には大きくなった神坂が当たって、無意識に擦ってしまう。
乳首は勃つどころか腫れていそうだが、気持ち良くて止めてほしくはない。どんどんと昂まる快感に身体が逃げてしまうものの、神坂の腕に捕らえられる。
「先輩、上がりましょうか。のぼせますね」
促されるままにバスローブを着て、ベッドに座ると、嬉しそうな神坂が僕を咥えてくる。肩に手を置いて押してみるものの、びくともしない。
じゅるじゅると音を立てる、熱い口内からの刺激をいなせない。先端は分厚くて長い舌に可愛がられ、大きな手は全体を撫でてくる。射精させるような強い扱きではないのに、腰が跳ねるのを止められない。
「あ、だめ……、ん、っ……」
「ん」
「あっ、まっ……、っ」
射精の前に、神坂が顔を離してくれた。安心したのも束の間、キスを受け油断した隙にぎゅっと手で包まれ、あっけなく神坂の逞しい腹筋を汚した。
「はっ、はあ……」
「気持ちよかった?」
「ん……」
絶対にされる確認の後、神坂が力の抜けた僕の準備を始める。
背中をベッドにつけ足を支えられながら、ローションをまとった神坂の指を後ろで感じる。すでに快感に溺れている身体には、少し焦ったくもあった。
とっくに飽きるほど舐めただろうに、さらにしつこい愛撫を受ける。神坂は見た目に反してずっと優しいが、執着は強く、目もより鋭くなる。そして毎回、僕をどろどろに溶かしてくる。
「先輩、今日なんでホテル来たか覚えてますか」
「ん、限界が知りたいってやつ?」
「ちょっと激しくしたいです」
「うん」
自分で玩具を買う気にはなれなかったが、極端に酷いものでなければ経験はある。
男同士に関しては、神坂の方が経験が少ない。やってみたいなら、試してみてほしい。
(っ……、相変わらず、でかいっ)
避妊具を着けた神坂が、ゆっくりと入ってきた。正常位で奥に当ててから、僕の股関節を支えながら膝で立った。
僕にできるのは、足の裏をしっかりとマットレスに付け、他の接地面が肩と腕しかない身体を支えることだ。
「んんっ!」
「平気?」
「あっ? ああっ! これっ、やばあっ!」
今までの比でないほど、神坂が最奥にぐっと入る。様子を見るような動きから、段々と激しさが増す。
腰を持たれ浮いているからか、神坂の先端が奥ばかりをぐちゅぐちゅ穿ってくる。引き抜かれても再度、勢いよくしこりを通りながら最奥に打ち付けられる。さっき一度射精したところなのに、波がすぐに押し寄せ耐えられそうにない。
神坂の大きな凶器で掻き回されれば当然良いところに当たるし、そのたびにビリビリと快感が走って身体は暴れる。必死に耐えようと、僕にできるのはシーツを握ることだけだ。
手加減してゆっくり動いてくれる間は余裕があるものの、一度スイッチが入ると逃してもらえない。
「あ、あっ、やっ、まって、まって!」
「気持ちい?」
「あ、だめっ、こう、んん!」
膝を震わせ背中を反ったのを、神坂が支え、マットレスに下りた腰を撫でてくれる。
目をやると、僕自身は質量を持ったままで、お腹は汚れていなかった。筋肉質な腹筋や胸筋を上っていくと、にっこり笑いかける神坂がいる。
「先輩、女の子みたい……」
「はあ、はあ……」
「俺ので中イキしたの初めてだよね? 今までこっちも触ってはあったけど」
「ん……」
(これが、『中イキ』……)
休憩時間をくれている神坂の整った顔を、ぼんやりと眺めた。
身体の奥で何かが爆ぜて、神坂の動きは止まっているのに、ずっとイってる感じがする。とんでもなく疲れた。乱れた息が落ち着かない。
「……すごい。きゅんきゅん締まるね」
「っ……」
神坂が、軽く指を這わせてくる。後ろからの刺激にいっぱいいっぱいで、前に触れられるともう、訳が分からない。
「あー、ヤバ。先輩の中、マジで気持ちいい」
「ん……」
不自然にゆっくり動く神坂が、僕の頬にキスをする。
「先輩、中イキは嫌?」
「ん……?」
「泣いてる」
神坂は器用だ。ゆるゆると腰を振りながら首筋に舌が這ったと思えば、どんどんと下がってじゅっと乳首を吸われる。
「んあっ」
「締めてこないで。可愛いけど」
後ろを埋められた状態で、舌と指で器用に乳首を攻められれば、とっくに砕けた腰も跳ねる。涙はあまりの気持ち良さに溢れるだけで、むしろ神坂の好きに動いてほしい。
何と言っても、相手はあの神坂だ。理想的な身体を持つ神坂が、バキバキに勃起したまま萎えることなく突き立て動いている事実に、興奮しないわけがない。
「ゆっくりがいい? 手前と奥はどっちがいい?」
「んん……」
「先輩、答えてよ」
「やだ……」
「ふふ」
多少無理にされる方が大きな身体を実感できて好みだが、これが神坂の優しさだ。
神坂が奥をノックするように、小さく動いてくる。リズムを変え大きく動くたび先端が当たって、漏れ出る声を抑えられなくなる。
「先輩、ここホテルだし、俺にしか聞こえないよ」
「んっ」
「ねえ、もっと啼かせてい?」
「んあっ!」
さっきの動きだ。腰からお尻にかけてを大きな手で支えられ、神坂の先端がしこりを通って最奥の一転を激しく突いてくる。射精とは違う、もっと大きな快感が昇ってくる。
「あ、それだめっ」
「『いい』の間違いでしょ?」
「あ……、あ、んんっ」
「声、聞かせてほしい、葉旺」
(だから……っ!)
急な名前呼びは反則だ。勝手に締まって、より神坂を感じてしまう。
「あ、あっ……、まって、まって!」
「近い?」
「はっ、ううっ、あっ、きょうやっ、んんっ!」
背中を反り、震えが足先から全身へと伝播する。神坂が抱き留めてくれ、ご褒美とばかりにキスをくれる。
「はあ……、またイったね、葉旺」
「う……、これ、やだ」
「どうして?」
「……気持ち、よすぎて」
「うん」
切れ目が、柔らかく笑いかけてくる。限界を知りたいと言われた。おそらく今日は、まだまだ掘られ続けるのだ。
◇
僕が射精しても、放置されることはない。休憩のつもりなのだろうか、今日は神坂の指や手のひら、唇と舌に乳首も責められ続けている。
「……神坂」
「はい」
「…………」
呼びはしたものの、言葉は続かなかった。名前を呼んでみようと思ったが、出てこなかったのだ。
また避妊具を着け終えた神坂が微笑みながら、ローションを手に取る。足を持ち上げられても、抵抗する気は起きない。
「もっと、欲しいです? 真っ赤でヒクついてます」
「神坂は、しんどくないの」
「先輩が悦がってるの、かなり好きなので問題ないです。キスでも乳首でもアナルでも構わないというか。自分が動くといなす方に意識が向くんで、愛撫してる方が先輩のことよく見れるんですけど、でも先輩が欲しいなら……」
反転させられ、腰を持ち上げられる。ぴとっと当てられたと思えば、ぐくっと神坂が入ってくる。
「入れたまま、好きにします」
「っ、ああっ!」
神坂が奥に当たると、無条件に背中を反ってしまう。その勢いで膝が逃げぺたんと潰れると、シーツに自身が擦れてしまう。
神坂は揺れ続けていて、いつもより刺激が強い。もう何度イッているか分からないほどだが、また波はせり上がってきて、精子ではない何かが出てもおかしくない。
「もっと欲しい?」
「だめ、だめっ……、ん、んんっ、う、あっ、ああっ!」
「葉旺?」
「はあ、はあ……」
神坂が離れ、ごろんと転がされる。しっかりとシーツにできた染みが、確認できるはずだ。
「あ……、気持ちよかった?」
「ん……」
「潮吹くの、抵抗ない?」
「だい、じょうぶ」
神坂にどこまでの知識があるのか、考えるのは止めた。僕を感じさせたいがためにホテルに来て、きっとまだまだ快楽に溺れさせられるのだ。
◇ ◇ ◇
「先輩、卒業おめでとうございます」
「ありがとう」
「俺のこと、待っててくださいね」
「うん」
恭弥も卒業して社会人になったら、同棲しようと誘った。
今までも恭弥はほぼ僕の家にいて、半同棲だった。恭弥はプライベートで僕から離れたくないと、あっさり同意してくれた。
幸いというか、神坂恭弥という男は怖い奴で、僕と同じ企業に就職を決めた。ゼミ推薦で、内定が出るのも早かった。
大学の専攻が異なるため、別部署になるのは間違いない。恭弥は人事部を希望していて、家族が引き裂かれるような無理な異動を阻止したいと意気込んでいる。また、海外赴任に付き合う子のためのサポートにも関わりたいそうだ。
この先きっと、僕を精神的にも肉体的にも満たせる男は現れない。神坂恭弥が、好みすぎて。
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