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<5>僕の家にて
しおりを挟む神坂との温泉旅行から帰った翌日はいろいろと疲れているだろうと、バイトを休みにしておいた。神坂も同じだったらしく、当たり前に僕の家へ一緒に戻ってきた。
神坂の本気度に、胸が高鳴る。荷物を置きに神坂の家へ一度寄り、その後ドラッグストアに行っても、その態度は変わらなかった。
(ほんとに、真面目に調べたんだろうなあ……)
好奇心を隠さない神坂に、先にお風呂を使ってもらう。僕は久々使う後ろをゆっくり解す必要がある。神坂が準備を見たがったが、初回の今日は断った。
普通に身体や髪を洗った後、中を洗浄して、ローションを指にまとわせ奥へ入れていく。自慰ではないし、気持ちの良いしこりには触れない。ぐいぐいと押し広げるだけだ。
緊張はしているものの、神坂には身体を明け渡せる。繋がりたい気持ちが勝った。思ったよりも時間は掛からず、あっさり指が三本入るほどに緩んだ。
準備を終えて、浴室からリビングへ戻ると、きゅっと口を結んだ真剣な表情の神坂がベッドに腰掛けていた。神坂の家とは違って、僕が使っているのはシングルベッドだ。神坂が座ると小さく狭く見える。
(はあ、マジで画になる……)
本当に、スウェット姿まで様になる。これからこの身体に抱かれると思うと、また一段と血が集まる。お尻も切なくきゅんと締まった。
隣に座ると、一息吐く間もなく顎を取られ、唇にキスをされた。嫌なわけはなく、神坂の首に手を回す。
応えるように口を少し開くと、神坂は容赦なく舌を滑り込ませてきた。女子との経験は豊富そうな神坂だ、その見た目と性格通り、優しく、でも激しく蹂躙された。
神坂の手は頭を包み、段々と肩から背中に下りてくる。くすぐったさに身体を捻ると、神坂の太い腕に動きを制限される。
「ん……」
思わず声を漏らすと、神坂のトリガーに触れたのか、押し倒された。ぐっと、神坂の体重を感じるのが心地良い。
耳や首筋に、体温の高い神坂の吐息が当たる。容赦なくぺろり舐められ、腰が跳ねる。勃った自身はとっくに神坂にも当たって、むしろ押し付けられている。
「先輩、今更なんですけど、触れられて嫌なところあります?」
「ないよ、大丈夫」
目を覗き込んで安心したのか、神坂がまた、唇にキスを落としてくる。首筋から鎖骨を通って順に胸へ下り、くっきり上を向いているだろう頂点を舐めた。
「んっ」
「感じるんですね?」
「んん……」
当然だ。昔の相手には弄られていたし、自慰をする時にも触れていた。確かに慣れていなければ、男で感じる人は少ないかもしれない。神坂に引かれないためにも、声はほどほどに抑える方がいいだろうか。
いや、たぶん我慢できない。神坂は女性相手ならセックスの経験がある。前戯は、男相手でもあまり変わらないはずだ。
神坂は僕に見せつけるように指を舐って濡らし、乳首を弄び始めた。こりこりと硬さを楽しむように触れられ、乾いてくるとちゅっと吸われる。そのまま舌で、ちろちろと舐められたり甘噛みされたりするのも気持ち良い。
こうなると、いなすのがいよいよ難しくなる。乳首だけでも充分に快感を拾ってしまう。バキバキに勃っているのも自覚がある。直接触れられたらどうなるか、想像が付く。
「っんあ!」
「大丈夫です?」
「んっ」
(出てない。助かった、けどっ!)
自身にそっと指が触れただけでも、身体を浮かせてしまう。この程度で射精していたら、最後までもたない気がする。神坂にしてみれば、セックスはまだ序盤のはずだ。
先走りが相当に出ているのだろう、神坂の手のひらがぬるぬると滑っている。射精させるような強い刺激ではないが、いつの間にか全裸の、神坂の熱と吐息に頭がくらくらする。
すりすりと撫でてきた手が、濡れたまま太腿からお尻へと回る。神坂は、本気だ。
「っ、そっちは、準備してきたから」
「俺は弄らない方がいいです?」
「流れちゃう」
「じゃあ、次はさせてくださいね」
本当に、いろいろ調べてくれたのだろう。神坂には準備を手伝いたい気持ちがある。男同士でも、抵抗がないのだ。
身体の力がふっと抜けていく。神坂には僕の声が届いているし、がむしゃらに搔き抱くような真似はしそうにない。
ただ、酔った振りをしてキスしてきた男だ。良い意味で少し疑うくらいがちょうどいいのかもしれない。
カサっと音がして神坂に目を向けると、身体を起こして避妊具を着けていた。いよいよ、その時がやってくる。
誰かを受け入れるのは、二年ほど空いている。気分が昂るだけでもきゅんきゅんと、お尻が動いてしまう。
僕の足の間に神坂が座り直し、顔が寄ってきてキスをくれる。抵抗せず受け入れている間に、ぴたっと這わされた。
「……入れますね」
「うん、ゆっくり」
「はい」
「ん……、んんっ……!」
ぐぐっと押し広げられ、神坂が中に入ってくる。目にした神坂のは確かに大きかった。指三本で広げたつもりだが、圧迫感は強い。
「痛くないです?」
「だいじょうぶ」
さすがというべきか、神坂は一気に奥まで入れはしなかった。指の届いていた辺りで止まり、安心させるようなキスをくれる。
無意識に閉じていた目を開けると神坂と合って、また唇が寄る。神坂は女性しか抱いたことがないのに、感じられる質量は全く萎える気配がない。
「……先輩、動いていいですか」
「ん、あっ!」
全て入り切ったとは思えない。まだ届いていない。それでも神坂は、浅いところで律動を始めた。
久々の挿入は若干、違和感がある。神坂の形に馴染んでいないからだろうか。
自慰でしこりに触れないのは、他人にされる方が圧倒的に気持ち良く、ひとりでは上手くイけないからだ。神坂なら、たぶん探ってくれる。
僕を気遣っているのが、ゆっくりとした動きから伝わってくる。
今までこういったシチュエーションを共にした女性も、きっと満足したのだろう。この男らしい筋肉質な身体に優しく乗り掛かられて、興奮しない方が難しい。
「っ!」
「余裕です?」
「っ、あっ!」
「ここですね、先輩」
余計なことを考えたのがバレたのか、ぐっと、神坂がより奥まで押し入ってきた。入ることをやっと確かめられたからか、神坂の腰が勢いを増す。
ぐちゅっとローションが鳴る。ゆっくり引き抜かれたと思えば、ぐんと最奥を突かれる。
見つけられたしこりをごりっと先端に抉られると、情けない声が上がる。場所を覚えられ、律動のたびにしっかりと狙われた。そんなピンポイントに攻められれば、もつものももたない。どんどん波が近くなる。
(え……)
ぱんぱんとテンポ良く突かれた後、まだ射精していないのに圧迫感が消えた。
お預けに目を開けると、神坂はふっと頬を緩めながら避妊具を外した。大きく反ったままの神坂を、重ねられる。
「一緒にイきましょ、先輩」
「ん……」
(あ、も、無理……)
足を支えられた正常位で重ね合わせたまま、神坂が行き来する。擦れ合っているだけだが、硬くて大きな神坂の裏筋が僕のと重なって、どうしても感じてしまう。
何せ、相手はずっと目を離せなかった神坂だ。神坂の息も荒く、限界も近い。
「……葉旺」
「っ、んんっ!」
不意に、余裕のない声で呼ばれた名前に驚いて、腰を反って吐き出してしまった。神坂の動きも止まり、重ねるようにびゅっと白濁が溢れた。
「はあ……」
(っ、反則だろ……)
びくっと数度震え息を整えた後、神坂は枕元に置いていたティッシュを数枚引き抜いた。お腹に溜まった白濁を、優しく拭き取っていく。
後処理をタチの神坂がやってくれる。神坂にとっては当たり前かもしれないが、僕には少し新鮮だ。男同士、あの人とは良い意味で対等だった。
「先輩、違和感とかないです?」
「ないよ、大丈夫」
横に寝転んできた神坂が、唇に触れるだけのキスをくれる。その瞳は少し、揺れているようにも見えた。
「ちょっと、センシティブなことを聞きますけど」
「うん」
(ほんと、良くできたイケメンだよ)
引き寄せられてはいるものの、少し高めの体温を感じられる程度で、力が入っているわけではない。
神坂の家にあるセミダブルとは違って、僕の家はシングルベッドだ。絡み合っていなければ壁側にいない神坂は落ちてしまうのではと思うが、神坂はそのまま口を開いた。
「なんでそんな慣れてるんですか。付き合ったことないって……」
「身体だけの関係の人はいたから。付き合ったことないのは本当」
「ああ、なるほど?」
神坂が、嫌悪がないことを示すように、僕をぐっと引き寄せ頬に触れてくる。目を閉じると唇を奪われ、舌を絡めたと思えば離れ、頭も抱え込まれた。
どうやら神坂は、引かないでいてくれるらしい。交際相手はいなかったのに経験はあるとなれば、導ける予想もほぼひとつのはずだ。
「聞きたい?」
「聞いていいなら」
(そりゃ、気になるよね)
遠慮しているようにも見える神坂に、僕からひとつ、ちゅっとキスをした。一瞬、切れ目をまん丸にした神坂は、すぐ柔らかい目元に戻る。
「自分がそうかもって思ってもオープンにしにくいから、確かめる方法として、みたいな。手解き受けたらできちゃって、本当にこっちなんだって実感するというか」
「その人とは?」
「もうしばらく会ってない」
「他の人とは?」
「ひとりだけだよ」
「でも、何回かしたんですね?」
「まあ……」
「自分で準備ができるくらいに?」
「神坂?」
普段の神坂なら、こんな質問攻めはしてこない。裸を見て勃起してしまった時には逃げようと思ったが、神坂とも無事繋がれたことで開き直っているのが問題だろうか。
眉間に皺を寄せる神坂が、絞り出すように言う。
「……俺にさせてください。入れるのは俺なんで」
「ん、分かった」
「あと、いろいろ教えてください。男同士は初めてなんで。答え合わせ、付き合ってください」
「大きくは変わんないと思うよ、お互いの気持ち良さを探るだけ」
(次を、考えてくれるんだ)
期待して高揚したのは、バレていないはずだ。
神坂の女性関係を尋ねる気にはなれなくて、抱き締められたり頭を撫でられたり、好きにさせた。立派な身体と密着しているのに、痛くも苦しくもない。圧迫感も体温も、少し汗ばんだ肌と匂いすら、何もかもが心地良い。
「……元々こっちなんです? 気付いたきっかけは?」
「中学くらいからかな、筋肉質な男性ばっか追ってた。リアルで会う人には誰にも言ってない」
「じゃあ、大学でもそれなりの距離がいいですね」
「突き放したいわけじゃないよ」
「分かってます。でも約束しないと、どこでも手が出そうなので」
誰にも渡さないとでも言いたげな腕に、身体を委ねる。男同士でも人目のあるところでいちゃいちゃする人はいるだろうが、珍しいのは間違いない。
それに神坂は、その容姿で女子からモテる。男子の中にいても頭ひとつ出ていて目立つのだ。僕のように狙う人が、いないとは限らない。
(人たらしな自覚、ないんだろうなあ……)
僕の細い身体に、神坂のずっしり重たい足が絡む。頭を大きな手で包まれ、されるがままに唇を明け渡す。
「もう一回、してもいいですか」
「うん」
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