上 下
1 / 5

1 婚約破棄しました。

しおりを挟む



「アラン様、お金のない貴方との結婚は考えられないの。婚約を破棄させてくださいませ」

緊張で、痛いほど握りしめた手が震える。



「イレーヌ、僕を愛してるって言ったのは、ウソだったのか? ずっと一緒に居たいって言ったじゃないか!」

アランは、信じられないことを聞いたという顔をしている。

驚いた顔をしても、アランは美しい。
銀にちかい金色の髪に少年ぽさを残した美しいかんばせ、琥珀の瞳は、戸惑った光を浮かべている。



「あのときの気持ちは本当よ。でも、没落する貴方と結婚する訳にはいかないじゃない。ドレスも首飾りも買えないわ。それにね、トレーニ伯爵のご子息が私と結婚して欲しいと、おっしゃるの。」



(だって、お金がないアランと結婚する訳にはいかないじゃない。)



 アランとイレーヌは、幼い頃に家同士が決めた婚約者だった。

このまま何事もなければ、来春に結婚式を挙げる予定だった。

しかし先日、アランの父オーガス子爵が、友人にだまされ多額の負債を負ったのだ。



「イレーヌ、女ったらしのフィリップか? それででいいのか?」

「ええ、トレーニ伯爵は、お金持ちだわ。フィリップ様も素敵な方よ。貴方との婚約破棄の賠償金も支払ってくださるって。」



「金の切れ目が縁の切れ目というのか! 君がそんな女とは思わなかった。女ったらしのフィリップが、君に似合いだな! 死ぬまで、君のことは許さない」

アランは、今まで見たことのないような憎しみのこもった目で、イレーヌをにらみつけた。



「ええ、貴方に許してもらおうとは思ってないわ。どうぞ、死ぬまで憎んでちょうだい」と、にっこりと笑った。



笑ったのが、気に触ったのか、

「君って、女は!!!」

激高したアランが、頬を打った。



「女に手をあげるって、最低だわ! 私の前に二度と現れないでちょうだい」











しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

愛しい人、妹が好きなら私は身を引きます。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:186,972pt お気に入り:4,190

妹に幸せになって欲しくて結婚相手を譲りました。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:610pt お気に入り:604

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:85pt お気に入り:2,922

届かない手紙

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:43

あの空の向こう側

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:4

お前を誰にも渡さない〜俺様御曹司の独占欲

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,155pt お気に入り:13

愛人が妊娠したようなので、離縁ですね

恋愛 / 完結 24h.ポイント:560pt お気に入り:832

処理中です...