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第一章 もっこもこカフェへようこそ!
もこもこの眼
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お菓子の家みたいにほのぼのとした雰囲気のタン内に、異様な緊張が張り詰めている――――中。
「このクッキー旨いにゃ~!」
擬人化仕様のタルトが、ムカつくほど長い足を組みつつ、バウムさんが焼いた焼き菓子を呑気に堪能していた。
「ちょっとタルト! これから大事な話をするのに、自分だけお菓子を食べている場合じゃないでしょ」
「別にいいにゃ~。話すのはステラにゃんだから、吾輩は言いたいことがあった時だけ口挟むにゃ。折角バウムが持って来たにゃから食べにゃきゃお菓子に失礼にゃのにゃ」
ステラさんがいさめるもののタルトは全くもって意に介せず、自分の正論を主張してきた。
まぁタルトがお菓子食べてること自体は気にしないんだけど、さっきまで猫だったのが羨ましい程のイケメンになって踏ん反り返って、にゃ~にゃ~言っている方が気になりますけどね。
「もういいわよ。すみません、本題に入る前なのに」
「いえ、お気になさらないで下さい。却って気が解れました」
自分でそう言ったものの、本当に気が紛れたかもしれない。こういうところは流石『猫』様だ。そしてタルトも得意気になって、二枚目のクッキーに手を伸ばす。
「ほらにゃ~。吾輩は正しいのにゃ~」
「タルト!」
「にゃ~ん」
叱りつけてもタルトは物怖じせず、そっぽを向いてしまうものだから、ステラさんもいい加減諦めに入る。
「もういいわよ。話を進めますね」
「はい。お願いします」
ようやく、本題だ――――。
「話すにあたって改めて確認させて頂きますね。お客様は、この二人が最初『動物』の姿に見えたんですよね?」
「はい、猫とシロクマです」
「そして、その『忍びの眼鏡』を装着すると……」
「人の姿に見えます」
イケメンとは敢えて言わないでおく。
「ありがとうございます。……これからお話することは、直ぐには信じて頂けないかもしれませんが、嘘偽りなくお話させて頂きたいと思います」
「はい……」
ステラさんが言った通り、今だってまだ夢じゃないかと思う。ステラさんたちだって、誤魔化そうと思ったらいくらでも誤魔化せただろう。でもこうやってちゃんと話してくれようとしているのだから、俺も『真実』受け止めたい――――。
真剣な眼差しをステラさんに向けると、嬉しそうに微笑み返してくれた。
「お客様は人類で数億人に一人いるかいないかの特殊能力……『もこもこの眼』を持っている方なんです!」
――――『もこもこの眼』だって!? さっき何となく聞こえたのもあってか、然程驚いていない自分がいた。
「はぁ……」
「にゃんか反応が薄いにゃ~。面白くないにゃ」
「うむ」
俺の反応が気に入らなかったタルトが早速ちゃちゃを入れてきたが、バウムさんも納得いかなそうなのが引っ掛かるんですけど。一体俺に、何を求めているんだ?
「いや、今更もう色々驚くのもなって」
「これだから今時の人間は希薄にゃのにゃ~」
にゃんだって!? なんで反応一つでそこまで言われなきゃならないんだ!
「こらタルト! そうですよね。お気になさらないでくださいね」
「はい、大丈夫です」
俺の態度が生意気に見えたのか、またしてもタルトが嫌味を言うのを気まずそうにステラさんが話を戻していく。それが申し訳なく感じて、俺も余計なことを言わないように気を付けようと思った。
「続けますね……。その『もこもこの眼』本来の姿が見える能力なんです。人間は基本、世の中を動かしているのは人間だと思っていると思うんです」
うん、確かに。科学や発展していても、それを研究して開発していくのは、やはり『人間』だもんな。
「だけど人間だって、進化をしてきた生き物です。そしてこの二人のように姿は動物だけどちゃんと言葉を話せて意志も伝えられる生き物もいるんです」
なるほど――進化しているのは他の動物だっているっていうことか。
「だけど世の中、彼等みたいな生き物は珍種か化け物みたいな扱いをされてしまい、排除されるか見世物にされてしまいます」
人間だって、ちょっと変わっていたらそう言う扱いをされる。それはある意味、ごく一部の自身の正義や常識を正当化するエゴでしかないのかもしれないのに――――。
ステラさんの話を真剣に聞いていると、いつの間にかタルトもお菓子に手を伸ばさなくなっていた。
「なのでこの子たちは本来の動物の姿を隠して、人間の姿を幻覚化させて世の中を忍んでいきてきたんです……」
「へ? それって!?」
流石に今の話には、反応せざる得なかった。どう見たって忍んでいないし! めっちゃ目立つよね?
「あぁえっとですね。動物の姿で話している所を見られると、世間の人は驚いてしまいますので」
「現におぬしもそれで吾輩の後を付いてきたにゃろ」
「そうだけど……幻覚、化? それって簡単に出来るものなの? だって最初から俺はタルトとバウムさんが動物に見えたし!」
瞬間――――タルトが俺に向かって、アイスブルーの瞳を鋭く光らせる。
「なんで吾輩には『さん』を付けないにゃ!」
「今そこ突っ込むところじゃないから!」
「ぶっ!」
「あら! ふふふ」
タルトの余計なちゃちゃについ本気で突っ込み返してしまったら、余り表情を変えないバウムさんが吹き出し、ステラさんも釣られて笑った。
そんな二人の笑顔が見れたのが凄く嬉しくて、俺も自然と笑顔になれた。
「それはさて置きだ! 俺には最初から動物に見えたんだけど」
改めて問題に戻ると、三人はまた顔を見合わせてから小さく頷き、今度はタルトが話し出した。
「それが『もこもこの眼』の能力にゃ。吾輩たちの忍びの姿ではなく、本来のもこもこの姿が見える力にゃのにゃ」
「本来の……もこもこの姿が見える力……」
「そうにゃぁぁぁ~。感動したかにゃ?」
「それって……」
ネーミングが、安直過ぎるだろぉぉぉぉぉ――――!!
俺はきっと誰にも言えない突っ込みを心の中で激しく叫んだ。
そしてまだまだ『もこもこ』の謎は続く――――。
「このクッキー旨いにゃ~!」
擬人化仕様のタルトが、ムカつくほど長い足を組みつつ、バウムさんが焼いた焼き菓子を呑気に堪能していた。
「ちょっとタルト! これから大事な話をするのに、自分だけお菓子を食べている場合じゃないでしょ」
「別にいいにゃ~。話すのはステラにゃんだから、吾輩は言いたいことがあった時だけ口挟むにゃ。折角バウムが持って来たにゃから食べにゃきゃお菓子に失礼にゃのにゃ」
ステラさんがいさめるもののタルトは全くもって意に介せず、自分の正論を主張してきた。
まぁタルトがお菓子食べてること自体は気にしないんだけど、さっきまで猫だったのが羨ましい程のイケメンになって踏ん反り返って、にゃ~にゃ~言っている方が気になりますけどね。
「もういいわよ。すみません、本題に入る前なのに」
「いえ、お気になさらないで下さい。却って気が解れました」
自分でそう言ったものの、本当に気が紛れたかもしれない。こういうところは流石『猫』様だ。そしてタルトも得意気になって、二枚目のクッキーに手を伸ばす。
「ほらにゃ~。吾輩は正しいのにゃ~」
「タルト!」
「にゃ~ん」
叱りつけてもタルトは物怖じせず、そっぽを向いてしまうものだから、ステラさんもいい加減諦めに入る。
「もういいわよ。話を進めますね」
「はい。お願いします」
ようやく、本題だ――――。
「話すにあたって改めて確認させて頂きますね。お客様は、この二人が最初『動物』の姿に見えたんですよね?」
「はい、猫とシロクマです」
「そして、その『忍びの眼鏡』を装着すると……」
「人の姿に見えます」
イケメンとは敢えて言わないでおく。
「ありがとうございます。……これからお話することは、直ぐには信じて頂けないかもしれませんが、嘘偽りなくお話させて頂きたいと思います」
「はい……」
ステラさんが言った通り、今だってまだ夢じゃないかと思う。ステラさんたちだって、誤魔化そうと思ったらいくらでも誤魔化せただろう。でもこうやってちゃんと話してくれようとしているのだから、俺も『真実』受け止めたい――――。
真剣な眼差しをステラさんに向けると、嬉しそうに微笑み返してくれた。
「お客様は人類で数億人に一人いるかいないかの特殊能力……『もこもこの眼』を持っている方なんです!」
――――『もこもこの眼』だって!? さっき何となく聞こえたのもあってか、然程驚いていない自分がいた。
「はぁ……」
「にゃんか反応が薄いにゃ~。面白くないにゃ」
「うむ」
俺の反応が気に入らなかったタルトが早速ちゃちゃを入れてきたが、バウムさんも納得いかなそうなのが引っ掛かるんですけど。一体俺に、何を求めているんだ?
「いや、今更もう色々驚くのもなって」
「これだから今時の人間は希薄にゃのにゃ~」
にゃんだって!? なんで反応一つでそこまで言われなきゃならないんだ!
「こらタルト! そうですよね。お気になさらないでくださいね」
「はい、大丈夫です」
俺の態度が生意気に見えたのか、またしてもタルトが嫌味を言うのを気まずそうにステラさんが話を戻していく。それが申し訳なく感じて、俺も余計なことを言わないように気を付けようと思った。
「続けますね……。その『もこもこの眼』本来の姿が見える能力なんです。人間は基本、世の中を動かしているのは人間だと思っていると思うんです」
うん、確かに。科学や発展していても、それを研究して開発していくのは、やはり『人間』だもんな。
「だけど人間だって、進化をしてきた生き物です。そしてこの二人のように姿は動物だけどちゃんと言葉を話せて意志も伝えられる生き物もいるんです」
なるほど――進化しているのは他の動物だっているっていうことか。
「だけど世の中、彼等みたいな生き物は珍種か化け物みたいな扱いをされてしまい、排除されるか見世物にされてしまいます」
人間だって、ちょっと変わっていたらそう言う扱いをされる。それはある意味、ごく一部の自身の正義や常識を正当化するエゴでしかないのかもしれないのに――――。
ステラさんの話を真剣に聞いていると、いつの間にかタルトもお菓子に手を伸ばさなくなっていた。
「なのでこの子たちは本来の動物の姿を隠して、人間の姿を幻覚化させて世の中を忍んでいきてきたんです……」
「へ? それって!?」
流石に今の話には、反応せざる得なかった。どう見たって忍んでいないし! めっちゃ目立つよね?
「あぁえっとですね。動物の姿で話している所を見られると、世間の人は驚いてしまいますので」
「現におぬしもそれで吾輩の後を付いてきたにゃろ」
「そうだけど……幻覚、化? それって簡単に出来るものなの? だって最初から俺はタルトとバウムさんが動物に見えたし!」
瞬間――――タルトが俺に向かって、アイスブルーの瞳を鋭く光らせる。
「なんで吾輩には『さん』を付けないにゃ!」
「今そこ突っ込むところじゃないから!」
「ぶっ!」
「あら! ふふふ」
タルトの余計なちゃちゃについ本気で突っ込み返してしまったら、余り表情を変えないバウムさんが吹き出し、ステラさんも釣られて笑った。
そんな二人の笑顔が見れたのが凄く嬉しくて、俺も自然と笑顔になれた。
「それはさて置きだ! 俺には最初から動物に見えたんだけど」
改めて問題に戻ると、三人はまた顔を見合わせてから小さく頷き、今度はタルトが話し出した。
「それが『もこもこの眼』の能力にゃ。吾輩たちの忍びの姿ではなく、本来のもこもこの姿が見える力にゃのにゃ」
「本来の……もこもこの姿が見える力……」
「そうにゃぁぁぁ~。感動したかにゃ?」
「それって……」
ネーミングが、安直過ぎるだろぉぉぉぉぉ――――!!
俺はきっと誰にも言えない突っ込みを心の中で激しく叫んだ。
そしてまだまだ『もこもこ』の謎は続く――――。
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