滅亡の畔

藤見暁良

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三章

◆成人式◆

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「よお! やっとかめ~!」
「おう~! 元気にしてっか~!」
「全然、成長しとらんな」
「ほっとけや! おめぇだって変わっとらんだろ」
「わぁ~! 詩織の着物、凄く綺麗だね!」
「綾乃の着物だって、めちゃんこ可愛いがね!」
「朝一で美容室だったで、眠くて仕方ね~んだで」
「同じく……。式典で寝てまうわ……」

 成人式当日――――『作戦決行日』。
一応、世間一般的に『成人』扱いとなる地域の対象者が、続々と式典会場に集って来ている。目立たないように遠目から様子を伺っているが、私の対象者が何処に居るかは、今時点で区別がつかない。
 作戦決行は成人式の後だ――――。式典が終わるまで、待たねばならない。
 待機している車の中で、ジッと息を潜める。車は会場から離れた駐車場に停めていた。あそこに居る連中には、まだこの車の存在すら知らないであろうけど、否応なしに襲ってくる緊張感は抑えられない。
「はぁ……上手くいくかな……」
 今日の日のために、事前に種蒔きはしておいて貰った――――。
 その種が、どれだけ上手く根付いたかで、今後の状況も変わってくる。出来るだけまとめて刈り取ってしまいたい。
 微かに震える指でペットボトルの蓋を開け、水を一口含む。緊張のせいか、今日はやたらと口の中が渇く。
 あまり飲むとトイレも近くなるし、少し湿らす程度しか飲めないからか渇きが消えない。
 口を少し開いて、唾液が湧き出てくるのを待つ。じんわり粘膜から染み出てくる液体を味わうように口の中に広げていく。
 普段当たり前のように口の中に湧き出る体液が、やたら甘く感じた。
 この任務が終わったら、また甘いカフェ・オレを飲もう。好きなだけ美味しいものを食べよう。
 そんな細やかな願いが、今の私にとっては何よりの希望だった――――。


 式典は、一時間半くらいで終わった。いよいよ『復讐計画』が開始される――――。
 支度を終えた私は、『計画』の案内係に扮して、対象者たちをおびき寄せねばならない。これが最初のミッションだ。
「本日ご宴会のご案内を受け取られている○○地域の成人の皆様ぁ~! 宴会場までの送迎バスはこちらになります! 案内状をお持ちの方、お友達にもお声かけしてこちらに集合して下さい!」
 バスツアーのガイドみたいな制服を着て、手旗を左右に振って対象者に合図する。
 『計画』の種蒔き――――案内状には集合場所を記載しておいた。対象者たちが、ちゃんと内容を確認していれば、ここに集まる筈なのだが――――。
 後々問題が起こらないように、一つ一つの段取りを速やかに実行していきたいのだが、岩鏡さん曰く、今回の計画は「百パーセントは有り得ない」とのことだ。
 それでも出来る限りの百パーセントに近付けることは、諦めてはいけない。

「あ、宴会の送迎バス来とるわ」
「弥生も行く?」
「勿論だよ~!」
「一成も行くがねな!」
「当り前だわ。一人三万くりゃーのコースを用意してくれとるんだろ? 行かな損だよな」
「てか、殆ど行くがね」
「俺ら結束力、強いでな」
 成人式の高揚感なのか――否。久々に会えた気心知れた『仲間』たちとのパーティーに、単純に浮かれているだけの連中が、これから用意されているご馳走の正体に想像を膨らませながら興奮気味で集まってきた。
 安易な罠かもしれないが、割と効果はあったようだ。これも信じさせるだけの本格的な案内状を用意してくれた岩鏡さんのお陰である。俄然やる気が沸き上がってきた。

 予想以上に効果は上々だった。
「山口様ですね。参加証をお預かりします」
 案内状の同封しておいた参加証を集めながら、リストと確認してバスに乗車させていく。これで誰が来ていないかも把握する。
 リストのチェック欄を赤ペンで印を付けていくと、ほぼ埋まったと言ってもいいくらいだにリストは真っ赤になっていた。
 後、四人――――。主犯格の西村巽たちだ。
 最後の方に並んでゲラゲラ大声で笑っている、三人組の男たちが参加証を差し出して、調子にのったふざけた声で名乗ってくる。
「林です」
「水野です~」
「林様……水野様ですね……」
 そして――――。
「西村でぇす!」
 ――――キタッ!!
 いよいよ一番の仇をしっかりと確認しようと顔の視線を向けた瞬間――――思考がフリーズしかかった。
「西……!?」
 ――――じゃない?
 資料で見た、西村と顔が違う気がする!?
 いくら成人したからと言っても、雰囲気が変わるというレベルではない。
 明らかに別人に近い――――。
「あの……」
 一瞬戸惑った私の様子に、先に受付した二人が大笑いして、自称『西村』の背中を叩いた。
「あ~はっはっ! 石川、バレとるがね!」
「すみません。こいつ西村の知り合いで、本人今日体調悪うて来れんでって、代わりに来てまったんですけどあきませんか?」
「え……」
 やっぱり、西村じゃない――――。
「すみませ~ん」
 偽物西村こと『イシカワ』は、悪びれた様子もなく、明らかにふざけていた。

 どうしよう――――。肝心な西村が居ない。来ていないだけじゃなく、対象者に入っていない人間が来てしまった。直ぐに岩鏡さんに、連絡して指示を仰がないと――――。
 でもそんなことしていたら、怪しまれるかもしれないし――――ここは一か八かだ。
「大丈夫ですよ。折角なので、西村様の分まで楽しんで行って下さい」
「やった。良いんですか!」
「石川、ラッキーだな」
「ありがとうございます!!」
「いえ……空いているお席にお座り下さい。間もなくバスを発車させますので」
「はぁ~い!」
 まさかの棚ぼたに、三人のテンションは益々高くなって、上機嫌でバスに乗り込んでいく。

「改めまして、本日はご成人を迎えられ心よりお祝い申し上げます。皆さんの門出にご出身校である竹内先生からのお祝いとして、高級ホテルでの美味しいディナーをご用意させて頂いております。今日は懐かしいご友人たちと一緒に、楽しい一夜をお過ごし下さい。今回の企画の案内役を務めさせていただきますのは、私……斎藤と申します」
「あの竹内が、こんなことしてくれるとは思わなんだよね~!」
「あいつも気が利くことあるんだな」
 ただの『案内役』のバスガイドの存在など意に介せず、対象者たちは能天気にお祭り騒ぎ状態になっていた。

 バスがゆっくりと走り出す――――。
「では現地まで、しばらくご歓談しながらお待ち下さいませ」
 これから何が起こるとも知らずに――――ね。

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感想 3

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みんなの感想(3件)

まい
2020.12.07 まい

絶妙なとこでお預けされた〜!
続き待ってますね♡

2020.12.07 藤見暁良

まいさん
感想ありがとうございます(*≧∀≦*)
読んで頂けて嬉しいです!
あちこち中途半端になっていて申し訳ないです。
続きを更新出来るように頑張ります(`・ω・´)ゞ

解除
さくら
2019.05.17 さくら

主人公の過去の話待っていました!
これからのストーリーは見るのが楽しいような怖いような...更新楽しみにしています!

2019.05.17 藤見暁良

さくら様
作品を読んで頂き、感想までありがとうございます。
引き続き楽しんで頂けたら幸いです。

解除
さくら
2019.05.16 さくら

主人公の過去が気になります!

解除

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