滅亡の畔

藤見暁良

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三章

◆狂気◆

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 ギィィィ――――バッタン。
 長いこと使われていなかった鉄扉は、重たく軋んだ音を立てる。
 人気がない建物。時間は昼間なのに、ここだけ刻が止まったかのように、薄暗い。
 一月の寒さが、より一層冷たく肌を刺してくるように感じた――――。

「ふぅ……やっと到着した……」
 『復讐計画』に使用する、廃墟にやって来た。
 廃墟なんてそう簡単に、見付からないかと思っていた。それも計画に使うための廃墟だ、場所も限られるのに、案外簡単に見付けて貰えた。
 それがあの組織の力なんだろうけど――――ますます謎が深まっていく。
 組織の正体について考えても、きっと私には永遠に分からないだろうし、教えても貰えないだろう。だからって敢えて詮索しようとは思わない。私は私に出来ることをすればいいのだから――――。

「さてと……どこを利用しようかな」
 作戦が無事に結構出来るように、入念に下見をしておかないといけない。
 チャンスは一度きり、失敗は許されない――――。
 建物の構造を確認しながら、自分の立てた計画をイメージしていく。
「ここにメインを並べて……こっちには、あれを繋げて……ふ、ふふふ」
 計画通りになった構図を想像するだけで、興奮してきて身体が震える。
 ただ――――問題もある。復讐する対象者が多いのだ。メインで『W』を虐めていたメンバーだけでも、十数人はいる。今回の計画だけで全員、仕留められたらいいけど、もし出来なかったら――――。
「その時は、また……チャンスを貰えるのかな……」
 途端、不安が一気に噴き出してきて、さっきまでの興奮を覆い隠していく。

 計画を提案した時、岩鏡さんは褒めてくれた。この作戦なら、効率よく大勢に報復出来ると思っていた。万が一、作戦が失敗した時のことなど、敢えて言われてもいない。
「何でだろ……」
 頭がいっぱいいっぱいで、そこまで考えが至っていないことに今更気付く。
 もし今回の計画が思った以上の成果を上げられなかったら、私はどうなるのだろう?
 噴き出した不安は私の中を百パーセントに満たし、次第に濃度を深めだす――――。
 小刻みに震える手をスマホに伸ばし掛ける。
「岩鏡さんに……確認……」
 ――――今更!? 
 制止されるかのように頭に過った声に、スマホを取ろうとした手を引っ込めた。
 そうだ今更だ――――こんなこと今の時点で聞いたところで、計画が変更は出来ない。もうこの『ミッション』は始まっているのだから。それに岩鏡さんに然り、あれだけの組織が、何も想定していない訳がない筈だ。
 何より――――岩鏡さんに失望されたくない――――。
「大丈夫……大丈夫……大丈夫だから……」
 暗がりの中で身を縮め、不安の呪縛を払うように、気持ちが落ち着くまで何度も何度も繰り返した。


 時間にして、どれくらい経っただろう――――長かったような、短かったような。
 変わらない暗がりが、感覚を鈍らせる。
 ただ今一つハッキリしていることは、もう後戻りは出来ないっていうことだ――――。
 背中を丸めて縮こまらせていた身体をゆっくりと元に戻していく。顔を上げ、辺りを見渡す。廃墟の窓の微かな隙間から、淡い光が零れていた。
「前に、進もう……」
 失敗を恐れるな――――。
 何も悔いるな――――。
 私に残された生きるための希望は、今この方法しかないのだから――――。

 それでもまた、あの闇に落ちるというのならば――――。
「アイツら、全員……一緒に落としてやる……」
 廃墟の中で一人、薄気味悪い笑みを口元に浮かべる。

 さぁ始めよう、『絶望のパーティー』を――――。

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