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三度目の午前
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目を覚ます。
予想通りだ。
しかし、分かっていながらやはり死ぬかもしれないという可能性はあると思っていた。
怖かった。
汗でびっしょりになっている服と布団。
布団から出て汗を拭きながら着替える。
冷静にテレビやスマホ、冷蔵庫の中身などを見て「今日」が「今日」であると確認した。
確実に繰り返している。
安堵をした私は少し震えながらいつものルーチンを始めた。
身支度を整え、朝ごはんを食べ、外へ出る準備をして出かける。
いつも通りの時間のバスに乗る。
そういえばニュースとか見ていないと思ったが、流石に三度も見る必要は無いなと思った。
そう思うと講義も出る必要ないんじゃ無いかと思い始めた。
私の中途半端な真面目さは講義に出るだけ出ておこうと私に囁いている。
私は取り敢えずは講義に出ることにした。
バスに乗りながら不可解な前回の今日のことを考える。
なぜ、彼女は電車に突っ込んで行ったのか。
なぜ、前々回と違う行動をしたのか。
結果としては同じ結果、つまり私が死んで彼女は生き残って今日が繰り返している。
これは私の行動によって運命が変わることなのか、逆に少しずつは変えられても大元の流れが変えられないという事の暗示なのか。
私が彼女を助けると何らかの原因で私は死んでしまい繰り返してしまう、だから助けるなって事なのか。
それとも、まだ正しい助け方をしていないという事なのか。
そう言えば昼食のメニューを変える事で会話の内容が少しだけ変わった。
と言うことは多少なりとも意図的に私が変えることは出来ると言うことだ。
何が繰り返しの原因なのだろう。
最低でも私が死ぬことが関わっている気がする。
何となくだけどこのまま学校に行かない、もしくは行ったとしても彼女を助けない、その時間にその場所に居ない、そんな事をすればそのまま明日が来る気がする。
でも、彼女を助けた上で私も生き残る道もきっとある筈、そもそも止める方法はいくらでもある。
あそこで止めるだけじゃなくてもっと前で彼女に会って止める。
電車自体を止める。
少し思いつくだけでもこれだけ方法はある。
バスから降りて電車に乗り換える。
いつも通りお婆さんがもたついている。
いつも通り流れが止まってまた動き始める。
その流れに乗って電車へと乗り込む。
思えば、この繰り返しが始まる前の私はこの電車で鬱々とした気分だった気がする。
今は新しい問題が目の前にあるから何も感じていない。
ある意味落ち込むことも贅沢なのかもしれない。
物事を深く考えていられるような状況とは、裏を返せば深く考えても大丈夫である、と言う余裕の裏返しでもあるのだ。
別に落ち込んでいる人の事を貶してるわけではない、私がただそういう人というだけだ。
そう考えると私はその日の悩みの答えも出たと思った。
結局深く考えられない人は目の前の事で精一杯というだけなのだ、ただただそれだけ。
考えていないのでは無い、キャパシティの問題なだけなのだ。
私も前回の時、他人の足を踏み、人の流れを少し止めた事があった。
あの時は考え事をしていたからだ、他人に配慮が出来ない程度に焦っていたからだ。
出来ないの人はそれが常というだけだ。
そう思うと少しだけ納得をした。
五駅、四駅、三駅、二駅、前駅。
降りる駅に到着した。
今回は上手く流れに乗って乗り換え先に向かった。
同じ席に座りスマホを取り出す。
普通の日常と同じ様に指を滑らす。
ふとループ物の創作物に目を通す。
その作品ではループの先で主人公とヒロインが理想の結末を迎えるという、テンプレートな良い作品だった。
私もこんな風になれるのだろうか。
そんな事を思った。
せめてこんな風で無いにしても悪く無い結末を迎えたい、彼女を死なせずに明日を迎えたい。
これが希望なのかと思った。
迎えられるかもしれない理想への夢想が希望なのだと。
降りる駅に着く。
学校へ向かう。
三度目となると流石に同じ風景にも慣れてしまう。
目の前を歩いてる男の人、鳥、自販機の売り切れ。
寸分違わず今日が今日である事の証明をしてくれている。
教室に着く、席に着く、友達と他愛ない会話を交わす。
流石に塩対応過ぎたのか前よりも会話が弾まなかったがまぁいいだろう。
講義は最早聞いてはいなかった。
出るだけでも割と偉いと思う、しかしそんな事は他人には分からないのだ。
だから私はノートを取るフリだけは一応している。
もしも繰り返しがいつでも出来るんだったら勉強も楽なのにと思う。
まぁ、繰り返す為に一々死ななきゃいけないのは嫌ではあるが。
そんなくだらない事を考えながらスマホでゲームをする。
真面目に講義を受けるのと受けないのとでは大分体感時間に差が有った。
いつもより短く感じた講義を終えて食堂へ向かう。
メニューは前回とまた変える。
私はいつも同じ物を食べていた、だからこそ前回驚かれたのだ。
今回も同じ様に驚かれたが軽く適当に流した。
いつもと違うものを食べるのも良いものだ、繰り返される今日のお陰で財布にダメージもない。
考えると私の体験はどういうものなのだろう。
もし前回と前々回が無かったとするなら、私は前回食べた物を食べた事がない人生を送ってるという事になる筈だ、だが記憶にはしっかりと残っている。
これは恐らく本を読んだりネットで調べたり、単純に人と会ったりしても同じ事になるだろう。
つまり、仮に今日誰か新しい知り合いが出来てある程度個人情報とかを得ても、繰り返してしまえば相手に悟られる事なく情報だけを得られる様になってしまうのだろう。
もちろんだからといって悪用するつもりはさらさらないが色々な事ができる気がした。
現実に時間ループが起きると意外といろんな事ができて、且つそんなにいろんな事はしないものだと思った。
予想通りだ。
しかし、分かっていながらやはり死ぬかもしれないという可能性はあると思っていた。
怖かった。
汗でびっしょりになっている服と布団。
布団から出て汗を拭きながら着替える。
冷静にテレビやスマホ、冷蔵庫の中身などを見て「今日」が「今日」であると確認した。
確実に繰り返している。
安堵をした私は少し震えながらいつものルーチンを始めた。
身支度を整え、朝ごはんを食べ、外へ出る準備をして出かける。
いつも通りの時間のバスに乗る。
そういえばニュースとか見ていないと思ったが、流石に三度も見る必要は無いなと思った。
そう思うと講義も出る必要ないんじゃ無いかと思い始めた。
私の中途半端な真面目さは講義に出るだけ出ておこうと私に囁いている。
私は取り敢えずは講義に出ることにした。
バスに乗りながら不可解な前回の今日のことを考える。
なぜ、彼女は電車に突っ込んで行ったのか。
なぜ、前々回と違う行動をしたのか。
結果としては同じ結果、つまり私が死んで彼女は生き残って今日が繰り返している。
これは私の行動によって運命が変わることなのか、逆に少しずつは変えられても大元の流れが変えられないという事の暗示なのか。
私が彼女を助けると何らかの原因で私は死んでしまい繰り返してしまう、だから助けるなって事なのか。
それとも、まだ正しい助け方をしていないという事なのか。
そう言えば昼食のメニューを変える事で会話の内容が少しだけ変わった。
と言うことは多少なりとも意図的に私が変えることは出来ると言うことだ。
何が繰り返しの原因なのだろう。
最低でも私が死ぬことが関わっている気がする。
何となくだけどこのまま学校に行かない、もしくは行ったとしても彼女を助けない、その時間にその場所に居ない、そんな事をすればそのまま明日が来る気がする。
でも、彼女を助けた上で私も生き残る道もきっとある筈、そもそも止める方法はいくらでもある。
あそこで止めるだけじゃなくてもっと前で彼女に会って止める。
電車自体を止める。
少し思いつくだけでもこれだけ方法はある。
バスから降りて電車に乗り換える。
いつも通りお婆さんがもたついている。
いつも通り流れが止まってまた動き始める。
その流れに乗って電車へと乗り込む。
思えば、この繰り返しが始まる前の私はこの電車で鬱々とした気分だった気がする。
今は新しい問題が目の前にあるから何も感じていない。
ある意味落ち込むことも贅沢なのかもしれない。
物事を深く考えていられるような状況とは、裏を返せば深く考えても大丈夫である、と言う余裕の裏返しでもあるのだ。
別に落ち込んでいる人の事を貶してるわけではない、私がただそういう人というだけだ。
そう考えると私はその日の悩みの答えも出たと思った。
結局深く考えられない人は目の前の事で精一杯というだけなのだ、ただただそれだけ。
考えていないのでは無い、キャパシティの問題なだけなのだ。
私も前回の時、他人の足を踏み、人の流れを少し止めた事があった。
あの時は考え事をしていたからだ、他人に配慮が出来ない程度に焦っていたからだ。
出来ないの人はそれが常というだけだ。
そう思うと少しだけ納得をした。
五駅、四駅、三駅、二駅、前駅。
降りる駅に到着した。
今回は上手く流れに乗って乗り換え先に向かった。
同じ席に座りスマホを取り出す。
普通の日常と同じ様に指を滑らす。
ふとループ物の創作物に目を通す。
その作品ではループの先で主人公とヒロインが理想の結末を迎えるという、テンプレートな良い作品だった。
私もこんな風になれるのだろうか。
そんな事を思った。
せめてこんな風で無いにしても悪く無い結末を迎えたい、彼女を死なせずに明日を迎えたい。
これが希望なのかと思った。
迎えられるかもしれない理想への夢想が希望なのだと。
降りる駅に着く。
学校へ向かう。
三度目となると流石に同じ風景にも慣れてしまう。
目の前を歩いてる男の人、鳥、自販機の売り切れ。
寸分違わず今日が今日である事の証明をしてくれている。
教室に着く、席に着く、友達と他愛ない会話を交わす。
流石に塩対応過ぎたのか前よりも会話が弾まなかったがまぁいいだろう。
講義は最早聞いてはいなかった。
出るだけでも割と偉いと思う、しかしそんな事は他人には分からないのだ。
だから私はノートを取るフリだけは一応している。
もしも繰り返しがいつでも出来るんだったら勉強も楽なのにと思う。
まぁ、繰り返す為に一々死ななきゃいけないのは嫌ではあるが。
そんなくだらない事を考えながらスマホでゲームをする。
真面目に講義を受けるのと受けないのとでは大分体感時間に差が有った。
いつもより短く感じた講義を終えて食堂へ向かう。
メニューは前回とまた変える。
私はいつも同じ物を食べていた、だからこそ前回驚かれたのだ。
今回も同じ様に驚かれたが軽く適当に流した。
いつもと違うものを食べるのも良いものだ、繰り返される今日のお陰で財布にダメージもない。
考えると私の体験はどういうものなのだろう。
もし前回と前々回が無かったとするなら、私は前回食べた物を食べた事がない人生を送ってるという事になる筈だ、だが記憶にはしっかりと残っている。
これは恐らく本を読んだりネットで調べたり、単純に人と会ったりしても同じ事になるだろう。
つまり、仮に今日誰か新しい知り合いが出来てある程度個人情報とかを得ても、繰り返してしまえば相手に悟られる事なく情報だけを得られる様になってしまうのだろう。
もちろんだからといって悪用するつもりはさらさらないが色々な事ができる気がした。
現実に時間ループが起きると意外といろんな事ができて、且つそんなにいろんな事はしないものだと思った。
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