目指せ邪神討伐

チタン製折り紙

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第1章

第五話

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 横に一匹、前に囮が一匹

 両方息を潜めているが、威圧を囮と思わしき方にだけ掛ける横の奴は気付いてない風を装う。
 前方だけに威圧しながら先へと進と、もう少しで横の一匹の間合いだと思っていた矢先、前に居た囮であろう片割れが声を上げる

「あ、あのー、魔族さんですかー?」

 ちっ、もう少しで焦れた横の一匹が突っ込んできただろうに。
 だが話し掛けられたら争わない。魔族の誇りと名誉に傷を付ける。魔族は戦い以外は紳士であれ。
 威圧を止め、頭以外はプレートアーマーを着こんだオークジェネラルに見せていた幻影を解いた。
 そこにはガチガチの鎧ではなく、街で見掛けても違和感のない軽装な服を着た人間と変わらぬ姿の青年の男性がいた。
 いや、肌の色が灰色な所が魔族である証拠とも言える。
 

 「そうですよ。前方にだけ声を出すのも憚られるキツめの威圧を掛けていたのですが、よく声を出せましたね」

 霧散した戦闘の雰囲気に横の茂みに居た奴も出てくる

 「やっぱりかー。オークジェネラルにしちゃ半端ない威圧だと思った!声掛けるだけなのに声出したら死ぬかと思ったぜ」

 「アタシの居た側はスキだらけでもうちょっとで斬りかかってたんだけど」

 「それが狙いですから」

 「魔族さんマジでコエー」

 「魔族は基本的に戦うのが趣味みたいなものですから。勿論戦った後は回復しますので、魔族に会ったらいい訓練だと思って諦めるものですよ?」

 「いやいや、俺達じゃ魔族さんの暇潰しにもならないから」

 「おや?この辺りまで来れる方々は腕に自信がなければ命がいくつあっても足りないはずですが?」

 「アタシ達は隠密行動が得意なんでここまでこれたんだ。採集だけなら大丈夫だと思って来たら魔族さんに鉢合わせって訳さ」

 「なるほど。しかし気付いていたのは私一人ではないですよ。そちらの男性の貴方、その皮鎧の背中に付いている葉っぱはどうされました?」

 「背中?ただゴミが付いただけじゃ・・・シンディー取ってくれ」

 「ディア葉っぱくらいなら振れば落ちるだろうに・・・あれ?取れないよ?」

 「それは二日酔いや眠気目覚ましにも使われる気付けの一種の葉ですね。気付けに使われる位ですから摘むと一日位は特殊な匂いが出るんですよ。森の奥深くにしか生えていない草なので知っている人はかなり限られますが」

 「どうしてそれが俺の背中に?」

 「えぇ、簡単な事です。知っている人は少なくとも、モンスターは匂いに敏感なモノが多い。その草を付けて歩けばいい修行、いえこの場合はいい餌になるからですね。他の寄ってきたモンスターに襲わせ、弱った所で出てきてパクっと」

 みるみる青年と女性の顔色が悪くなっていく

 「その葉がくっ付いているのは深緑の蜘蛛による粘着糸ですね。名前こそ平和そうな蜘蛛ですがお二人と同じように獲物に気付かれない為の保護色と考えれば森の中では狩人と言った所ですか」

 「俺達はもう狙われてるって事か?」

 「はい、実は私もその匂いに釣られてここへ来た一人なのですから。モンスター相手に修行する方と手合わせ願いたかったのですが、ただの被害者ならば災難でしたね」

 「魔族さんアタシらこの森を無事に出れるかね?」

 「戦うのが不得意ならばその皮鎧を脱いでおかねば無理でしょうし、脱いだ所で今度は服に葉を付けられるだけでしょうから難しいですね。既に他のお客様の視線をいくつか感じますし」

 そう、既に遠巻きにいくつもの瞳がこちらを伺っている。

 「シンディー、すまねぇなこんな事に付き合わせて…魔族さん、初対面でこんな事言うのは申し訳ないが、森を抜けるのを助けてはくれないだろうか」

 「ディア、一人で頭下げんなよ。アタシも頭下げる位しかできないけどお願いします」

 「お二人とも頭を上げて下さい。戦う相手が人からモンスターになっただけの事です。それに言ったでしょう。魔族は戦うのが趣味みたいなものですお二人の行く方向に付いて行けば沢山戦えるではないですか。依頼とやらをこなしつつ時間を掛けて帰ってくれればより私は満足ですよ?」

 「俺が女ならマジで惚れそうだゎー」

 「アタシも惚れそうだね」

 「あ、スミマセン、私男は当然として同族以外の女性はちょっと」

 そんな即答により二人が笑い、私も笑顔になる。

 「さて、移動すれば隙が生まれ確実にモンスターが襲って来るとして、特に頭上には原因を作った蜘蛛が来るはずですから気は抜かないで下さいね」

 そして二人には決死の、俺にはいつもの散歩が始まった。
 本当は今すぐでも強めの魔法を打ち込めば蹴散らせるが、神妙な空気だったので言い出せなかった!
 俺、紳士なのでちゃんと空気読むし!
 紳士の嗜みってやつだな
 そういや、蜘蛛は俺がコイツらに接触した時点で諦めて帰って行った。
 引き際を心得てるモンスターながら頭の回る奴だ
 この森ではあの蜘蛛みたいな頭の回るモンスターの方がただ強いだけのモンスターより厄介だろう

 まぁ、これがいい経験になって一歩でも二歩でも成長すれば、いつか手合わせできるかもしれないし。脅して命懸けだと思わせた方がコイツらの訓練にもなるだろう。


 お、あれはコカトリスじゃないか。
殴り飛ばして気絶させたら1メートルはある卵をそこらの植物の蔓で背中に背負い回収
 卵は人間領や獣人領などでは食べられるが、魔族領では滅多に食べれないから結構貴重だ。
 鶏とやらを飼えばいいのは分かるが、誰も面倒を見ないからな。
 こうしてコカトリスがいれば取れるんだからたぶん問題ない

 おっと卵を回収している間に二人が蛇型の魔物に襲われている。二人とも警戒をしていた為か、初撃の噛み付きはディアが気を引き、シンディが横から牙を剣で振り払い防いでいた。が、即座にもう一度噛み付こうとしたのは反応しきれなそうなので口の中に炎をぶち込み調理してみた

 黒焦げと言うか炭になしまったが牙以外にも体内に毒を持つ蛇なので別にいいだろう。
 決して料理が苦手なのではない
 5回中1回位は上手く焼けるのだ。


 「いい反応と防御でしたね、牙を折るのは最善ですし、下手に体に傷を付けると体内の毒が飛び散りますからね」

 「今の蛇は毒もあるのか、一発目から首を狙いに行かなくて良かったよ」

 「こんな森の深くで毒まみれになったら死ぬからな、シンディ慎重に頼むぞ」

 「最初の時もそうでしたが、ディアさんが盾役で、シンディさんが攻撃役ですか?」

 「アタシはガサツで考えるのとか面倒だからね、ディアが考えて行動して、アタシはそれを横から剣でザクっとする位しかできないからね!」

 なるほど脳筋でしたか。
 ディアは苦笑いしている、既に何度か危ない場面もあったのだろう。

 「ならば、ディアさんは足元の花を一つ枯れないように持っているといいですよ」

 「この花を?」

 「人間領ではまだあまり広まってないですか?鑑定を弾く不思議な花があると。二年位前に昆虫族の方々から知らない花があるのでと、各地で情報提供を呼び掛けているのですが」

 「あー、確かに鑑定できねぇや、そういやギルドの依頼板の隅に絵付きで張ってあるの見たな」

 「まだまだ噂の域を出ませんが、どうやら大怪我などすれば回復の魔法のような効果があるとか」

 「うお、そりゃすげぇ!俺だけじゃなくてシンディも持っとけ!」

 「その事を教えて貰った昆虫族の方も、私達魔族もあまりそれ程の怪我がないので検証できず、噂の域を出ないのでお守り代りですが。ただ、そんな効果が実際にあれば昆虫族に情報提供してあげて下さいね」

 「「勿論」」

 そんな会話をしながら戦闘も繰り返し、依頼の品だった森の濃厚な魔力をたっぷり吸いこんでいる鉄鉱石はいい場所まで案内し、質の良さそうなものを採取した。

こうして森の入り口付近までで短い同行も終わりを告げた。

 依頼品より俺が倒したモンスターの素材の山の方が持ち帰るのが大変だろうが、そこは冒険者。モンスターの装備にも金にもなる素材を捨てては行かないようだ。
 最早根性で担いでいた。立ち止まると足元がプルプルしているのは見ないフリだ。魔族は空気が読めるのだ。
 彼らならこの先はもう安全だろうが、ミニウルフがこちらを見つけ、彼らの背後から走ってくるのが見えたので挨拶も途中で切り上げ先に失礼させて貰う。
 あの荷物ではまともに走れないだろうが、俺が近辺から離脱するまで位は頑張って逃げて欲しい

 唯一持ち帰るコカトリスの卵をどう料理するかを考えながら素早くその場を離れる。勿論後ろなど振り向かない。彼らの健闘を祈るばかりだ。




~説明書~


魔族
様々魔法やスキルを使いこなす好戦的な種族
会話している分には紳士淑女であるが、幻影や変化を使いモンスターに擬態し、わざわざ誤解を招き戦闘を繰り返す。
回復魔法や、ポーション等をなぜか必ず持ち歩いており、傷付けた相手はきちんと癒して去る為、本当にただ戦いたいだけなのが伺える。
他の種族はいい迷惑と同時に実践訓練にもなる為文句も言いづらい。


コカトリス
森の深層で王者として君臨している
猛毒と石化のブレスを使い。戦う物に恐怖と死を与える
最近魔族に殴られ、蹴り飛ばされ、卵は取られるが命は取られない、寿命はそれなりにあるので数が減ることはないが、王者のプライドはガンガン減るばかりである。群れが散り散りに逃げても魔族に気絶させられ、また一ヶ所に集められる事があるとかないとか。
頑張れと言いたい所だが、モンスターを応援しても仕方ないだろう。

 
緑の魔鉄(鉄鉱石)(依頼品)
魔素の濃い森で取れる鉄鉱石から作られる。
木、風の魔法と相性がよく、普通の鉄より魔力を蓄えている為か、劣化もしにくくなる
特にエルフが好んで使う武具に使用されている事が多い。
色が濃いほど魔力を備えている。
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