何も知らない私たち。

中学生macaron

文字の大きさ
1 / 1

プロローグ

しおりを挟む
私は…、夢を見た。

「…びき、響」
「なぁに?」

ーいや、正確に言えば夢では無いのかもしれない。
2、3歳程だろうか、私は幼い容姿をしていて、無邪気に微笑んでいた。
これはー私の、記憶?

「今から大切なことを教えるからね。しっかり覚えておきなさい?」
「うん。大切なこと、なぁに?」

私は又同じことを言っている。
頭を撫でられて、幸せそうな表情だ。
この人はー、誰?

「いい?あなたは自分自身も周りも幸せにできるような、優しさを持った人間になりなさい。大切なのは考えること。そしてー」

優しげだった目が、すっと細くなる。相変わらず、頭を撫でる手は温かいままだ。
ーこの人を、私は知っている。私が知る中で誰よりも温かかった人。
私はその人を思い出そうと、必死に記憶の糸を手繰り寄せる。

「諦めないこと。どんな時も、最後まで諦めなければ大丈夫。やれることを全部やって、それでもどうにもならないことを非常事態っていうの。そんな時って、なかなか来ないものよ?」

微笑んで、又優しい目に戻る。
この子供っぽくて綺麗な微笑みを、私は知っている。
…そうだ、この人はー

「人を思いなさい。自分も思いなさい。全てを愛するの」
「あいする、のー?」
「そうよ、みんなを好きになるの」
「ふーん」
「今はまだわからないでしょう?大丈夫よ、きっと分かるようになるから。それまで絶対に忘れないって約束してくれる?」
「うん!ぜーったい忘れないよ、おばあちゃん!」

そこで、夢のような記憶は唐突に途切れた。

何故かー?
それはきっと、私の視界が毒々しい赤に染まったからだと思う。
それはきっと、その直後に私の意識が途切れたからだと思う。
ついでに、私の心臓の鼓動も途切れたからだと思う。
永遠に元に戻らなくなるなど、誰が想像できただろうー?

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

とある令嬢の断罪劇

古堂 素央
ファンタジー
本当に裁かれるべきだったのは誰? 時を超え、役どころを変え、それぞれの因果は巡りゆく。 とある令嬢の断罪にまつわる、嘘と真実の物語。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!

七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ? 俺はいったい、どうなっているんだ。 真実の愛を取り戻したいだけなのに。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

【1話完結】あなたの恋人は毎夜わたしのベッドで寝てますよ。

ariya
ファンタジー
ソフィア・ラテットは、婚約者アレックスから疎まれていた。 彼の傍らには、いつも愛らしい恋人リリアンヌ。 婚約者の立場として注意しても、アレックスは聞く耳を持たない。 そして迎えた学園卒業パーティー。 ソフィアは公衆の面前で婚約破棄を言い渡される。 ガッツポーズを決めるリリアンヌ。 そのままアレックスに飛び込むかと思いきや―― 彼女が抱きついた先は、ソフィアだった。

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

処理中です...