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第2章 始まりの出会い
Ⅰ
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アルディアス暦3049年。
ダイアファレス王国が滅亡してから3年が経った。
大陸中央に位置するロンデシア帝国は今やバレス大陸の中央より北の大地の殆どを手中に収め、大陸の覇者と言わんとばかりの態度を中央より南の諸国に威張り散らしていた。
ただ、北の大地を守護していた鬼人族の国、ダイアファレス王国が滅亡した頃から北の樹海や山脈から高クラスの魔獣が頻繁に現れる様になったとの噂が飛び交っていた。
その為、ロンデシアは、鬼人族の中の一団が故意に魔獸をけしかけ、人々襲わせていると噂を流し始めた。
それが少しずつ人々の間に浸透して行き、鬼人族=過激な種族と認識する人も現れ始めていた。
ただ、鬼人族をよく知る人からはロンデシアの陰謀と訴える者も少なくは無かった。
「若!何処におられる!」
年配で白髪の男の声がこの青の大森林の中を走り抜けていく。
男は暫くあても無いように歩き続けていたが、突然返事が帰ってきたので身体がピクッ!と強張らせる。
たが直ぐに平常心に戻り声の聞こえた方に向かう事にした。
「おーい、こっちだ!」
その声に釣られるように白髪の男は歩き、暫くして林が終わるその先で、岩と草原が作り出す空間に出て来てしまっった。
白髪の男の前に表れたのは、高さが10メートル位の大岩だった。
その上に、男の探していた者がいた。
「若!また修行ですか?」
「ああ、ようやく魔法の補助無しでこの岩のてっぺんに乗ることが出来たよ♪」
嬉しそうに白髪の男に向かって手を降るのは今年で9才になる可愛らしい少年だった。
黒髪に黒目とこの辺りの土地では珍しい色合が目を引き、将来は美少年間違いなしだろう。
若と呼ばれる少年は、いきなり岩から地面に向かって飛び降りた。
普通、建物の3階建てよりも少し高い場所から飛び降りたら骨折とかなりそうなのに、平気な顔をして着地していた。
「で、何か用だった? タイゾウ」
「あーそうでした。族長からで、怪しい商隊が青の大森林に入って来たそうです」
タイゾウと呼ばれる白髪の男から、族長の伝言を伝えられた少年は、小さく頷いて、良し!と気合いを入れる仕種をしていた。
「若の初陣ですね。緊張されてます?」
タイゾウの、のんびりとした口調で言われても今ひとつ嬉しくも無いが、少年にとっては一大イベントなのは変わらなかった。
「緊張とはちょっと違うかな? ドキドキしてるのは一緒だけどね」
そう言いながら肩を大きく揺らして深呼吸する少年。
「今からそんなでは身体がもちませんよ。獲物が襲撃用の地点に来るのは早くても明日の昼頃なんですからね」
「ああ、解ってるんだけどね」
頭を掻きながら照れ笑い気味に話す。
そんなふうに二人が話ながら向かっていたのがこの森深くに住む人々の集落だ。
女子供も多く居るので普通の村にしか見えないが、こんな森深くに住む者が普通の者であるはずがなかった。
そんな村の中心にある広場に、30人位の男や女達が集まっていた。
「お!若、お帰り。若も早く準備を済ませてしまいな!」
準備の催促をしてきたのは、この村の中でもかなりの拳闘術の達人で、村1、2を争う美女のラフラだった。
軽装の身なりに魔鉄製の膝あてや手甲で固めていた。
「で、今回僕の初陣の相手ってどんな感じなの?」
「なんでも、闇の奴隷商みたいだね。結構悪徳商らしいしよ。奴隷の子等も正当な取引では無い、闇市場に出す様な奴隷商らしいから手加減無しで良いわよ。」
ラフラの言葉に少年は新たに決意を固めるのだった。
「闇奴隷か、助けてあげないと」
「皆、集まったな」
周りを大きな大樹に囲まれた村、クルデ村。
ここは青の森を守護する者の集まり、クルデの本拠地であり家族が住む村である。
その村の入口、外界との移動に使う門は石造りの門柱に樫の木で出来た門扉で閉じられ、魔獣といえども容易く壊すことが出来ない堅牢な門で守られていた。
その門の前の前の広場に20人くらいの人が集まっていた。
その中でも一際がたいの大きい顎髭を蓄えた男が、門を背に皆を見渡している。
「これより、3刻程でロンデシア帝都に向かう中規模な商隊が青の湖周辺までやって来る事が偵察隊より報告があった」
顎髭の男が大きな声でしゃべり出すと、今まで雑談等していた人達が一斉に静まり返る。
「確認した結果だが、相手は商隊の旗を出していない、非正規の商隊の様だ」
非正規と聞いた途端集まる人々の顔から笑顔が消えた。
「多分だが、商隊を率いている奴が、ゴルゴン商会で見た事のあると報告があったので間違いないと思う。奴らは、ロンデシア帝国内でもかなりの大きな商会であるのだが、闇商会としての一面も持っている悪徳商会だ! 思う存分暴れて構わないからな!」
「うおおおおお!!」
集まる皆が一斉に雄叫びを上げる。
そんな雄叫びがうるさいのか両手で耳を塞いで苦笑いしている少年に、顎髭の男がこちらに来いと手招きする。
「そ、それと、今回から息子のシンジが同行するからな。宜しく頼む」
族長がシンジを紹介すると拍手や声援が巻き起こる。
「みんな、今日は宜しくお願いします。解らない事があれば色々と聞くけど、鬱陶しがらず教えて下さい。」
ぺこりと丁寧にお辞儀をするシンジ。
「キャー可愛い!!」
「お、礼儀正しいな。
「ドアルド、こりゃ次期族長はきまりだな?」
「任せとけ!ちゃんとホローしてやるからな!」
周囲からは色んな言葉がシンジとドアルドに浴びせかけられた。
「皆、そんな事言ってるけど、多分お前らよりシンジの方が強いわよ?」
そう言い出したのは、軽装の短パン、ジャケットに革鎧をメインにした装備に細身の長剣を携えた女剣士のレアイアだ。
「この私が直接指導したんだぞ。それに稀代の魔女エレノアール様の息子に、お前らが勝てる自信があるか?」
「「そんなの決まってるじゃないですか! 無いです!!」」
皆が口を揃えて言い切る。
まだ12才の子供であるのに、それほどシンジの実力は確かだと皆が思っているようだ。
「でも、族長とは全然似てないよな?」
一人の青年が疑問すると、ドアルドがその青年に向かって答えはじめる。
「ロンタだったかな?」
「まだこのクルデに入って間もないお前は知らんだろうが、この子は俺の奥さんエレノアールの連れ子でな、実の息子じゃないんだ。」
「今は、この青の大森林の護神木に祈りを捧げているからここには居ないがな」
「え!?本当に?あの超が付く程の美人のエレノアールさんが族長の嫁さんなの?」
何故か、前からドアルドと一緒にいる仲間からも疑いの声があがった。
「お、お前ら、今まで嘘だと思ってたのか?」
「えー、だってねえー、あんな綺麗な人が族長と結婚するなんてね、もしかして脅したの?」
「そんな事あるか! それにそんな事したら俺はもう死んでるよ」
みんなが一斉に「確かに」と頷いていた。
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大陸中央に位置するロンデシア帝国は今やバレス大陸の中央より北の大地の殆どを手中に収め、大陸の覇者と言わんとばかりの態度を中央より南の諸国に威張り散らしていた。
ただ、北の大地を守護していた鬼人族の国、ダイアファレス王国が滅亡した頃から北の樹海や山脈から高クラスの魔獣が頻繁に現れる様になったとの噂が飛び交っていた。
その為、ロンデシアは、鬼人族の中の一団が故意に魔獸をけしかけ、人々襲わせていると噂を流し始めた。
それが少しずつ人々の間に浸透して行き、鬼人族=過激な種族と認識する人も現れ始めていた。
ただ、鬼人族をよく知る人からはロンデシアの陰謀と訴える者も少なくは無かった。
「若!何処におられる!」
年配で白髪の男の声がこの青の大森林の中を走り抜けていく。
男は暫くあても無いように歩き続けていたが、突然返事が帰ってきたので身体がピクッ!と強張らせる。
たが直ぐに平常心に戻り声の聞こえた方に向かう事にした。
「おーい、こっちだ!」
その声に釣られるように白髪の男は歩き、暫くして林が終わるその先で、岩と草原が作り出す空間に出て来てしまっった。
白髪の男の前に表れたのは、高さが10メートル位の大岩だった。
その上に、男の探していた者がいた。
「若!また修行ですか?」
「ああ、ようやく魔法の補助無しでこの岩のてっぺんに乗ることが出来たよ♪」
嬉しそうに白髪の男に向かって手を降るのは今年で9才になる可愛らしい少年だった。
黒髪に黒目とこの辺りの土地では珍しい色合が目を引き、将来は美少年間違いなしだろう。
若と呼ばれる少年は、いきなり岩から地面に向かって飛び降りた。
普通、建物の3階建てよりも少し高い場所から飛び降りたら骨折とかなりそうなのに、平気な顔をして着地していた。
「で、何か用だった? タイゾウ」
「あーそうでした。族長からで、怪しい商隊が青の大森林に入って来たそうです」
タイゾウと呼ばれる白髪の男から、族長の伝言を伝えられた少年は、小さく頷いて、良し!と気合いを入れる仕種をしていた。
「若の初陣ですね。緊張されてます?」
タイゾウの、のんびりとした口調で言われても今ひとつ嬉しくも無いが、少年にとっては一大イベントなのは変わらなかった。
「緊張とはちょっと違うかな? ドキドキしてるのは一緒だけどね」
そう言いながら肩を大きく揺らして深呼吸する少年。
「今からそんなでは身体がもちませんよ。獲物が襲撃用の地点に来るのは早くても明日の昼頃なんですからね」
「ああ、解ってるんだけどね」
頭を掻きながら照れ笑い気味に話す。
そんなふうに二人が話ながら向かっていたのがこの森深くに住む人々の集落だ。
女子供も多く居るので普通の村にしか見えないが、こんな森深くに住む者が普通の者であるはずがなかった。
そんな村の中心にある広場に、30人位の男や女達が集まっていた。
「お!若、お帰り。若も早く準備を済ませてしまいな!」
準備の催促をしてきたのは、この村の中でもかなりの拳闘術の達人で、村1、2を争う美女のラフラだった。
軽装の身なりに魔鉄製の膝あてや手甲で固めていた。
「で、今回僕の初陣の相手ってどんな感じなの?」
「なんでも、闇の奴隷商みたいだね。結構悪徳商らしいしよ。奴隷の子等も正当な取引では無い、闇市場に出す様な奴隷商らしいから手加減無しで良いわよ。」
ラフラの言葉に少年は新たに決意を固めるのだった。
「闇奴隷か、助けてあげないと」
「皆、集まったな」
周りを大きな大樹に囲まれた村、クルデ村。
ここは青の森を守護する者の集まり、クルデの本拠地であり家族が住む村である。
その村の入口、外界との移動に使う門は石造りの門柱に樫の木で出来た門扉で閉じられ、魔獣といえども容易く壊すことが出来ない堅牢な門で守られていた。
その門の前の前の広場に20人くらいの人が集まっていた。
その中でも一際がたいの大きい顎髭を蓄えた男が、門を背に皆を見渡している。
「これより、3刻程でロンデシア帝都に向かう中規模な商隊が青の湖周辺までやって来る事が偵察隊より報告があった」
顎髭の男が大きな声でしゃべり出すと、今まで雑談等していた人達が一斉に静まり返る。
「確認した結果だが、相手は商隊の旗を出していない、非正規の商隊の様だ」
非正規と聞いた途端集まる人々の顔から笑顔が消えた。
「多分だが、商隊を率いている奴が、ゴルゴン商会で見た事のあると報告があったので間違いないと思う。奴らは、ロンデシア帝国内でもかなりの大きな商会であるのだが、闇商会としての一面も持っている悪徳商会だ! 思う存分暴れて構わないからな!」
「うおおおおお!!」
集まる皆が一斉に雄叫びを上げる。
そんな雄叫びがうるさいのか両手で耳を塞いで苦笑いしている少年に、顎髭の男がこちらに来いと手招きする。
「そ、それと、今回から息子のシンジが同行するからな。宜しく頼む」
族長がシンジを紹介すると拍手や声援が巻き起こる。
「みんな、今日は宜しくお願いします。解らない事があれば色々と聞くけど、鬱陶しがらず教えて下さい。」
ぺこりと丁寧にお辞儀をするシンジ。
「キャー可愛い!!」
「お、礼儀正しいな。
「ドアルド、こりゃ次期族長はきまりだな?」
「任せとけ!ちゃんとホローしてやるからな!」
周囲からは色んな言葉がシンジとドアルドに浴びせかけられた。
「皆、そんな事言ってるけど、多分お前らよりシンジの方が強いわよ?」
そう言い出したのは、軽装の短パン、ジャケットに革鎧をメインにした装備に細身の長剣を携えた女剣士のレアイアだ。
「この私が直接指導したんだぞ。それに稀代の魔女エレノアール様の息子に、お前らが勝てる自信があるか?」
「「そんなの決まってるじゃないですか! 無いです!!」」
皆が口を揃えて言い切る。
まだ12才の子供であるのに、それほどシンジの実力は確かだと皆が思っているようだ。
「でも、族長とは全然似てないよな?」
一人の青年が疑問すると、ドアルドがその青年に向かって答えはじめる。
「ロンタだったかな?」
「まだこのクルデに入って間もないお前は知らんだろうが、この子は俺の奥さんエレノアールの連れ子でな、実の息子じゃないんだ。」
「今は、この青の大森林の護神木に祈りを捧げているからここには居ないがな」
「え!?本当に?あの超が付く程の美人のエレノアールさんが族長の嫁さんなの?」
何故か、前からドアルドと一緒にいる仲間からも疑いの声があがった。
「お、お前ら、今まで嘘だと思ってたのか?」
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