傷持つ姫と僕

ユウヒ シンジ

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第4章 旅立ち

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「シンジ、上手くいったみたいね」
「うん、これで死んだと思ってくれると思うけどね?」

レアイアとシンジが話し合っていると、ルアルが近づき険しい表情をシンジに向ける。

「そこ! 何終わった感出しているの! これをどうするかがまだ決まってないわよ!」

ルアルがこれと言って、指差した方に、女性と少女がほぼ全裸に近い格好で座り込んでいた。

「ああ、ごめん、ごめん。咄嗟の事だったから。はい、これ毛布」

シンジは何も悪びれるわけでもなく、自分の機能バックから2枚の毛布を取り出し、二人の女性に手渡した。

「うう、く、屈辱ですわ・・・」
「ひ、姫、申し訳ありません。私がついていながら・・・」

半泣きの状態の少女を庇いながら、シンジの方をキッ! と睨む女性。

「まあ、確かに同じ女として、ちょっと今回は、駄目かもね?」
「そうよ、だいたいシンジはデリカシーってもんが欠落しているのよ!」

レアイアもルアルも、今回はさすがにあんたが悪いわよ! と若干軽蔑に似た目をシンジに向けてきた。
それには、さすがのシンジも反省しなくてはいけない事なのか? と自問を始めた。

「だいたい、あの状況での咄嗟の判断でこうやって上手くいっているんだから問題ないでしょ?」

そう、確かにあの場は最善といえば最善なのだろう。

二人が乗った馬車と馬が、人の2~3倍はありそうな大きな岩に激突しそうになった瞬間、シンジが瞬間移動で馬車内部に入ると、何が起こったか分からずに固まってしまった少女を発見。直ぐに手を取り、魔法を発動。一瞬で細身の丸太木が少女と入れ替わった。ただ入れ替わっただけでなく、その丸太には今まで少女が着ていた服がちゃんと着せられていた。
そして次に御者台で今にも飛ばされそうになっていた、女性も同じように丸太と入れ替えさせてしまう。
そして荷物が置いてある場所に火薬が詰め込まれた小さな樽を無造作に置き、樽から少し出ていた導火線に魔法で着火する。それと同時に、シンジは入れ替わった木偶が、彼女達にみえる幻覚魔法を馬車の周囲に展開させた。
それから後は先程見た通りだ。まんまと二人が死んだと騙されて、兵士達は撤退していったのだ。

「やっぱり、どう考えてもこの方法が一番良い気がするんだけど?」

シンジは、少し怯えるような視線でレアイアに、駄目なの? と言いたそうにその母性本能方くすぐる可愛らしい顔で訴えかけてくるので、ついほだされてしまうようだ。

「ああ、もうそんな顔したら可愛いじゃない! 駄目じゃないけど相手は女の子なんだからちゃんと謝んなさい!」
「どうしても?」
「どうしても!!」
「う、うん、分かった」

毛布を抱え身構える彼女達に、シンジは向き直り、地べたに膝を付き正座になると、深々と頭を下げようたした時、シンジの視線の先に、背中が露わになった少女の姿があった。
シンジは絶句する。
その少女の背中にあるモノに、怒りを覚えた。
その背中には、無数の傷やミミズ腫れを起こした跡がくっきりと残っていた。

「!?」

少女は、シンジの視線が自分の背中に向いている事に気付く。

「見た?」

少女はシンジを下から見上げ睨む。

「・・・・う、う、ううん! 見てないよ!」
「・・・・嘘ね?」
「・・・・はい、嘘です。でも、でも、そんなに見てないよ?」
「良いわよ。一応、命の恩人なんだし、それにこれを見られたからって、どうこうするつもりもないから・・」

少女は、あまり表情も変わらず、自分の背中にある傷について、本当に気にしてはいないようだ。
ただ、シンジは、その隣に寄り添うように座る、女性は悲しそうな目をして少女の傷を見ている事に気づいた。
ただ、そこにはあまり他人の自分が踏み込んで良いところではない、という事くらいは分かるシンジだった。

「あ! そうだ!」
「な、何?」
「まだ、ちゃんと謝っていなかった! その、咄嗟の判断とはいえ、女の子を裸にしてしまった事は謝ります。ごめんなさい!」

そういえばと思い出したシンジは、殆ど膝に着くくらいまで大きく頭を下げほぼ裸にしてしまった少女達に改めて謝罪した。

「本当にもう良いわよ。それより何か着るもの貸してくださらないかしら?」

あまりに勢い良く頭を下げるシンジに、毒気を抜かれたのか、つい吹き出してしまった少女だった。

「ああ、ごめんよ。それじゃあそっちの大きい貴女には私の服を貸してあげるわ。そっちのお嬢さんには、ルアル、服貸してあげて?」
「まあ、良いわよ」

そう言って二人はそれぞれのマジックバックから、予備の服を一式二人に渡してあげた。

「シンジ! あんたはあっち行っていなさい!」

徐に、レアイアから明後日の方向に指差しされて、ここから移動するように言われ、シンジは困惑の表情を見せた。

「どうして?」
「ど、どうしてって、女の子の着替えをマジマジと見る男なんて最低だからね」
「え~、去年くらいまではレアイアだって僕の前で平気で下着になって着替えていたじゃない?」
「レアイアさん! 貴女小さいシンジにまさか変なことしてないでしょうね?」

シンジの言葉にあらぬ疑いを掛けるルアル。
それに、顔を真っ赤にするレアイア。

「ば、馬鹿! そんな事するわけないじゃない! ただ、さすがに10才になったシンジの前では恥ずかしくなっただけよ!」
「つまり、シンジを男として意識し始めたって事ですね?」
「!!・・・・・・うう」

顔を真っ赤にして俯いてしまったレアイアを、勝ち誇ったような目で見るルアルだった。
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