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重い足
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東京悪夢物語「重い足」
学校からの帰り道、
いつもの場所、いつもの角、
いつも、足が重くなる場所がある。
ズシリと鉛がついたように、
誰かに掴まれているような、
誰かに引っ張られているような、
何故だろう?
いつもの道の、いつも場所…
都市伝説「重い足」
「なんて、都市伝説知ってる?」
「知らないよ~」
朋美は都市伝説好きだ。
いつもネットで検索している。今日も、どこかで見つけてきた都市伝説を私たちに話してくれる。
「幽霊、出てこないね~」
「幽霊、出てこないと全然怖くないよ~」
「もう、あきた~」
「でも…」
「これは本当だよ、本当の話だよ」
「ウソ~、作り話でしょう」
「ほら、小学校の時に引越していった真里、知っているでしょう」
「うん」
「実はあの子、小学校の時『重い足』に行ったんだって」
「そして、まだ…」
「今でも、そこにいるんだって」
「うそ~」
「本当」
「怖い~……」
私たちは学校の帰り道、いつも怖い話をしている。都市伝説、呪い、祟り。
基本、怖い話が苦手な私は朋美の話に震えている。
今日も足が重い、妙な汗が出る、嫌な帰り道だ。
「作り話だよ~絶対」
「朋美はオカルト好きなんだから~」
「本当だよ、この町だよ」
「また~」
「ほら、この地図、この町にそっくりでしょう」
朋美がネットの地図を見せてくれた。
本当だ、似ている。
「ここが学校、ここが林、ここが帰り道」
確かに似ている。
そして、
「ここが、足が重くなる曲がり角」
「行ってみようよ」
「嫌だよ、」
「何で?」
「だって怖いじゃない」
「怖がりだな~」
「そんなのウソだよ」
「信じてないなら行こうよ、怖くないんでしょう」
「うん…」
つまらない約束をしてしまった。
あー、どうしよう。
……
「ここ、ここ」
「ほら、この地図そっくり」
朋美が走り出した。
なんの変哲もない曲がり角。
バンバン、
朋美がジャンプしている。
「おかしいなぁ~、まったく重くならないぞ」
私たちも、恐る恐る行ってみる。
「ほんとだ」
まったく重くない。
私はホッとした。今日は、ただの都市伝説だった。
「早く帰ろうよ、朋美~」
「もうちょっと、」
バンバン
「もうちょっと、試してから」
再びジャンプしてみる朋美。
「もう、帰ろ…う…よ…」
重い、
急に、身体がズシリと鉛がついたように重くなった。
どうしたんだろう?
「と、も…み…」
喋れない、口が動かない。
何とか、頑張って振り返ってみると、
朋美は、完全にうつ伏せ状態になっていた。
口をパクパクさせ、苦しい表情をしている。
弘子は?
弘子は、しゃがんだまま動かない。
「だ、大丈夫…弘子」
やはり、弘子も口をパクパクしている。
どうしよう、
少し向こうには、人が歩いていた。
「た、助けて」
なけなしの声で叫ぶが、私たちには気づかない。
何故なんだ、
この、この角のこの一角だけ重いんだ。
そして、誰にも見えない。
どうしよう、
私たちは、もうここから出られないの?
チリンチリン、
すぐ横を、自転車が通り過ぎた。
幼い少女が、自転車に乗っている。
「た、助けて」
私は、わずかな力で少女に声をかけた。
キキッ、
自転車が立ち止まる。
こっちを見ている。私たちが見えるんだ、
「助けて、」
少女は、不思議そうに私たちを見ていた。
何故、この少女は動けるの?
すると、
「だって、私は死んでるんだもの」
と、少女は答えた。
「ここは、死後の世界と現世の世界の狭間だよ。生きてる人は、来ちゃダメだよ」
やっぱり、
来てはいけない場所だったんだ。
「助けて、お願い」
「うーん、」
少し考え込む少女。
「わかった、大人の人を呼んでくるね」
チリンチリン、
少女は、自転車に乗って走り去った。
その間も、身体の重さは、どんどん増してくる。
横には、たくさんの人々が通り過ぎて行く。
が、誰も私たちに気づかない。
私たちだけが、別の空間にいるんだ。
同じ場所で同じ道なのに、違う場所。
チリンチリン、
さっきの少女が戻って来た。
後ろには、黒いフードを着た男の人が一緒だった。
助かった、
男の人はゆっくりと近づくと、むんずと私たちの足を掴んだ。
ズルズルー
痛い、
もっと丁寧に引っ張って欲しい。
ズルズルー
制服が地面に擦れる。
男の人は一人で、私たち三人を引きずる。
凄い力の持ち主だ。
ズルズルー
一体どんな人なんだ、
男の人の顔を見てみる。
ああっ、
その顔は、眼は血走り、口は耳まで裂けていた。
人間じゃない、
私は直感した。
もしかして、
私たちは、出口と逆の方へと引きずられていた。
「そ、そっちじゃない、違う方向です」
私は、微かな声で言った。
「いいんだよ、こっちで」
男の人は低い声で言った。
「こっちが、地獄だからな」
やっぱり、
この男の人は地獄の人なんだ。
私たちを、地獄へと連れて行こうとしているんだ。
ズルズルー
ズルズルー
私たちは、どんどん奥の方へと引きずられていく。
もうダメだ、
「あれーっ?」
さっきの少女が言った。
「おじちゃん、何で、お姉ちゃんたちを地獄の方へ連れていくの?」
少女が男の人に尋ねた。
「地獄へ持っていって、食べるためさ」
ガサッ、
男のフードが外れた。中からはツノの生えた頭が現れた。
鬼だ、
赤い顔をした鬼だ。
よく見たら、私たちの足を掴んでいる手も赤かった。
「やめて、やめて、」
少女が、鬼を止めようとするが止まらない。
バン、弾き飛ばされる少女。
ズルズルー
ズルズルー
もうダメだ、
鬼は、私たちを地獄へと引きずって行く。
「助けて、」
その間も、人々が通り過ぎていくが誰も気づかない。
「助けて、」
手を伸ばすが届かない。
朋美たちも、必死に助けを求めているが届かない。
その時、
チリンチリン、
バーーン
さっき少女が、自転車で鬼に体当たりをした。
ギャア、
不意をつかれて、鬼の手が緩む。
「今だ、」
私は、朋美と弘子の手を掴み走り出した。
何故か、重い足はなくなっていた。
「急いで、」
少女が叫ぶ。
私たちは、慌てて走り出す。
「待て~」
鬼が追いかけて来る。
すると、
ズズン、
突然、また足が重くなった。
しまった、
まったく足が動かない。
そこには、黒い手が私たちの足を掴んていた。
ガシガシ、
ガシガシ、
黒い手は、長く、遥か遠くから伸びていた。
「こっちへ来い~」
「こっちへ来い~」
その手が、低い声で叫ぶ。
ズルズルー
ズルズルー
私たちは再び、引きずられていく。
「助けて、」
「助けて、」
その力は強い。
ズーン、ズーン
鬼がやって来た。
「これはー、俺の獲物だー!」
鬼は太い腕で、黒い手を掴んだ。
バリバリ、バリ、
私たちの足から、黒い手を剥がす鬼。
しかし、剥がしても剥がしても、黒い手は私たちの足を掴む。
ぐおおおおーー
怒りだす鬼、そして腰から斧を取り出した。
カチャ、
振りかぶり、その黒い手を切る!
ザク、
ギャーー
悲鳴をあげる黒い手、
ビシュ、黒い血が噴き出す。
ギャーー
今度は、黒い手が鬼に絡み出した。
グオッ、グオッ、
悲鳴を上げる鬼。身体中を締め付けられる。
グオッ、グオッ、
首を絞められ、苦しむ鬼。
グオッ、グオッ、
ビュンビュン、
鬼は、狂ったように斧を振り回す。
ザク、ザク、
切り刻まれる黒い手。
ギャーー
「今だ、」
私たちは走り出した。
「あっちだよ、」
少女が指をさす。
「ありがとう」
ザク、ザク、ザク、
グオッ、グオッ、グオッ、
ギャーー
地獄絵図のような、血まみれの鬼と黒い手。
私たちは、その光景を横目にしながら、出口へと走った。
「あと少しだ、」
ババッ、
ヒュッ、
その瞬間、私たちは狭間から飛び出した。
……
……
バタン、
そこは、元の曲がり角だった。
人々が歩いている。
「助かった」
私は、ホッとした。
「みんなは?」
朋美は放心状態。弘子は泣いていた。
よく見ると、
みんなの足には、黒い手の跡がついていた。
振り返る。
そこは、
何でもない、ただの曲がり角だった…
あれから、朋美の都市伝説好きも少なくなった。
私たちもひかえている。
学校からの帰り道、
いつもの場所、いつもの角、
いつも、足が重くなる場所がある。
ズシリと鉛がついたように、
誰かに掴まれているような、
誰かに引っ張られているような、
都市伝説、重い足。
学校からの帰り道、
いつもの場所、いつもの角、
いつも、足が重くなる場所がある。
ズシリと鉛がついたように、
誰かに掴まれているような、
誰かに引っ張られているような、
何故だろう?
いつもの道の、いつも場所…
都市伝説「重い足」
「なんて、都市伝説知ってる?」
「知らないよ~」
朋美は都市伝説好きだ。
いつもネットで検索している。今日も、どこかで見つけてきた都市伝説を私たちに話してくれる。
「幽霊、出てこないね~」
「幽霊、出てこないと全然怖くないよ~」
「もう、あきた~」
「でも…」
「これは本当だよ、本当の話だよ」
「ウソ~、作り話でしょう」
「ほら、小学校の時に引越していった真里、知っているでしょう」
「うん」
「実はあの子、小学校の時『重い足』に行ったんだって」
「そして、まだ…」
「今でも、そこにいるんだって」
「うそ~」
「本当」
「怖い~……」
私たちは学校の帰り道、いつも怖い話をしている。都市伝説、呪い、祟り。
基本、怖い話が苦手な私は朋美の話に震えている。
今日も足が重い、妙な汗が出る、嫌な帰り道だ。
「作り話だよ~絶対」
「朋美はオカルト好きなんだから~」
「本当だよ、この町だよ」
「また~」
「ほら、この地図、この町にそっくりでしょう」
朋美がネットの地図を見せてくれた。
本当だ、似ている。
「ここが学校、ここが林、ここが帰り道」
確かに似ている。
そして、
「ここが、足が重くなる曲がり角」
「行ってみようよ」
「嫌だよ、」
「何で?」
「だって怖いじゃない」
「怖がりだな~」
「そんなのウソだよ」
「信じてないなら行こうよ、怖くないんでしょう」
「うん…」
つまらない約束をしてしまった。
あー、どうしよう。
……
「ここ、ここ」
「ほら、この地図そっくり」
朋美が走り出した。
なんの変哲もない曲がり角。
バンバン、
朋美がジャンプしている。
「おかしいなぁ~、まったく重くならないぞ」
私たちも、恐る恐る行ってみる。
「ほんとだ」
まったく重くない。
私はホッとした。今日は、ただの都市伝説だった。
「早く帰ろうよ、朋美~」
「もうちょっと、」
バンバン
「もうちょっと、試してから」
再びジャンプしてみる朋美。
「もう、帰ろ…う…よ…」
重い、
急に、身体がズシリと鉛がついたように重くなった。
どうしたんだろう?
「と、も…み…」
喋れない、口が動かない。
何とか、頑張って振り返ってみると、
朋美は、完全にうつ伏せ状態になっていた。
口をパクパクさせ、苦しい表情をしている。
弘子は?
弘子は、しゃがんだまま動かない。
「だ、大丈夫…弘子」
やはり、弘子も口をパクパクしている。
どうしよう、
少し向こうには、人が歩いていた。
「た、助けて」
なけなしの声で叫ぶが、私たちには気づかない。
何故なんだ、
この、この角のこの一角だけ重いんだ。
そして、誰にも見えない。
どうしよう、
私たちは、もうここから出られないの?
チリンチリン、
すぐ横を、自転車が通り過ぎた。
幼い少女が、自転車に乗っている。
「た、助けて」
私は、わずかな力で少女に声をかけた。
キキッ、
自転車が立ち止まる。
こっちを見ている。私たちが見えるんだ、
「助けて、」
少女は、不思議そうに私たちを見ていた。
何故、この少女は動けるの?
すると、
「だって、私は死んでるんだもの」
と、少女は答えた。
「ここは、死後の世界と現世の世界の狭間だよ。生きてる人は、来ちゃダメだよ」
やっぱり、
来てはいけない場所だったんだ。
「助けて、お願い」
「うーん、」
少し考え込む少女。
「わかった、大人の人を呼んでくるね」
チリンチリン、
少女は、自転車に乗って走り去った。
その間も、身体の重さは、どんどん増してくる。
横には、たくさんの人々が通り過ぎて行く。
が、誰も私たちに気づかない。
私たちだけが、別の空間にいるんだ。
同じ場所で同じ道なのに、違う場所。
チリンチリン、
さっきの少女が戻って来た。
後ろには、黒いフードを着た男の人が一緒だった。
助かった、
男の人はゆっくりと近づくと、むんずと私たちの足を掴んだ。
ズルズルー
痛い、
もっと丁寧に引っ張って欲しい。
ズルズルー
制服が地面に擦れる。
男の人は一人で、私たち三人を引きずる。
凄い力の持ち主だ。
ズルズルー
一体どんな人なんだ、
男の人の顔を見てみる。
ああっ、
その顔は、眼は血走り、口は耳まで裂けていた。
人間じゃない、
私は直感した。
もしかして、
私たちは、出口と逆の方へと引きずられていた。
「そ、そっちじゃない、違う方向です」
私は、微かな声で言った。
「いいんだよ、こっちで」
男の人は低い声で言った。
「こっちが、地獄だからな」
やっぱり、
この男の人は地獄の人なんだ。
私たちを、地獄へと連れて行こうとしているんだ。
ズルズルー
ズルズルー
私たちは、どんどん奥の方へと引きずられていく。
もうダメだ、
「あれーっ?」
さっきの少女が言った。
「おじちゃん、何で、お姉ちゃんたちを地獄の方へ連れていくの?」
少女が男の人に尋ねた。
「地獄へ持っていって、食べるためさ」
ガサッ、
男のフードが外れた。中からはツノの生えた頭が現れた。
鬼だ、
赤い顔をした鬼だ。
よく見たら、私たちの足を掴んでいる手も赤かった。
「やめて、やめて、」
少女が、鬼を止めようとするが止まらない。
バン、弾き飛ばされる少女。
ズルズルー
ズルズルー
もうダメだ、
鬼は、私たちを地獄へと引きずって行く。
「助けて、」
その間も、人々が通り過ぎていくが誰も気づかない。
「助けて、」
手を伸ばすが届かない。
朋美たちも、必死に助けを求めているが届かない。
その時、
チリンチリン、
バーーン
さっき少女が、自転車で鬼に体当たりをした。
ギャア、
不意をつかれて、鬼の手が緩む。
「今だ、」
私は、朋美と弘子の手を掴み走り出した。
何故か、重い足はなくなっていた。
「急いで、」
少女が叫ぶ。
私たちは、慌てて走り出す。
「待て~」
鬼が追いかけて来る。
すると、
ズズン、
突然、また足が重くなった。
しまった、
まったく足が動かない。
そこには、黒い手が私たちの足を掴んていた。
ガシガシ、
ガシガシ、
黒い手は、長く、遥か遠くから伸びていた。
「こっちへ来い~」
「こっちへ来い~」
その手が、低い声で叫ぶ。
ズルズルー
ズルズルー
私たちは再び、引きずられていく。
「助けて、」
「助けて、」
その力は強い。
ズーン、ズーン
鬼がやって来た。
「これはー、俺の獲物だー!」
鬼は太い腕で、黒い手を掴んだ。
バリバリ、バリ、
私たちの足から、黒い手を剥がす鬼。
しかし、剥がしても剥がしても、黒い手は私たちの足を掴む。
ぐおおおおーー
怒りだす鬼、そして腰から斧を取り出した。
カチャ、
振りかぶり、その黒い手を切る!
ザク、
ギャーー
悲鳴をあげる黒い手、
ビシュ、黒い血が噴き出す。
ギャーー
今度は、黒い手が鬼に絡み出した。
グオッ、グオッ、
悲鳴を上げる鬼。身体中を締め付けられる。
グオッ、グオッ、
首を絞められ、苦しむ鬼。
グオッ、グオッ、
ビュンビュン、
鬼は、狂ったように斧を振り回す。
ザク、ザク、
切り刻まれる黒い手。
ギャーー
「今だ、」
私たちは走り出した。
「あっちだよ、」
少女が指をさす。
「ありがとう」
ザク、ザク、ザク、
グオッ、グオッ、グオッ、
ギャーー
地獄絵図のような、血まみれの鬼と黒い手。
私たちは、その光景を横目にしながら、出口へと走った。
「あと少しだ、」
ババッ、
ヒュッ、
その瞬間、私たちは狭間から飛び出した。
……
……
バタン、
そこは、元の曲がり角だった。
人々が歩いている。
「助かった」
私は、ホッとした。
「みんなは?」
朋美は放心状態。弘子は泣いていた。
よく見ると、
みんなの足には、黒い手の跡がついていた。
振り返る。
そこは、
何でもない、ただの曲がり角だった…
あれから、朋美の都市伝説好きも少なくなった。
私たちもひかえている。
学校からの帰り道、
いつもの場所、いつもの角、
いつも、足が重くなる場所がある。
ズシリと鉛がついたように、
誰かに掴まれているような、
誰かに引っ張られているような、
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