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第20編「……私は、頼りないですから」
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「小日向さん、紹介します」
「はじめまして、星川八重子です」
40代後半だと思われるその女性は、開花したての花に似た柔らかい笑みを浮かべ恋幸に対して深々と頭を下げる。
それを見て恋幸も慌てて両手の指先を畳につき、額を擦りつけそうな勢いでお辞儀を返した。
「こっ、こちらこそはじめまして! 小日向恋幸と申します……!!」
「小日向さん、顔を上げてください。……八重子さんは、私が個人的に雇っている家事手伝いの方です」
「ふふ、よろしくお願いしますね」
「はははいっ!! こちらこそ……!!」
先程の光景を見られた気恥ずかしさから挙動不審な恋幸に対して、星川はくすりと笑い首を少し傾ける。
「小日向様、少し……お時間を頂いても大丈夫ですか?」
「え? あっ、はい! 大丈夫です!」
「……裕一郎様。彼女と二人きりでお話して来てもよろしいでしょうか?」
「ええ、勿論。どうぞ」
「ありがとうございます。それでは少しの間、小日向様をお借りしますね」
◇
少女漫画脳の恋幸は、もしかしてこのまま裏庭へ連れて行かれた後に「あんた、まさか裕一郎様の彼女? 自分の顔、鏡で見たことないの? 立場を弁えな! あんたがいるとこの家の空気が不味くなるんだよ……っ! さっさと出て行ってちょうだい、このおブスなメロンソーダ小娘っ!!」と、壁ドンと共に罵声を浴びせられ敷地内から追い出されてしまうのだろうかと思い、小さく震えながら星川の後ろをついて歩いていたのだが、辿り着いた場所は畳が良い香りを漂わせる床の間だった。
ガラス越しに見えるのは、庭の大きな池。部屋の中心には座卓と座布団が置かれ、襖を開けたすぐ向こう側にキッチンがあることから、普段は裕一郎がここで食事を済ませているのではないだろうかと恋幸は考える。
ぼけっとその場で立ち尽くす恋幸に対し、星川は慣れた手つきでキッチンから急須と人数分の湯呑・茶葉や茶菓子を運び、座卓の上に置き終えるなりちょいと手招きをした。
「小日向様。どうぞ、座ってくださいな。緑茶は嫌いじゃない? おまんじゅうは食べられる?」
「緑茶……っ! お、おまんじゅうも! 大好きです!!」
「そう、よかったー! あ……突然あんなことを言ってしまい、申し訳ありませんでした。どうしても、小日向様にお話しておきたいことがあって……」
「話しておきたいこと……?」
用意された座布団に腰を下ろし首を傾げる恋幸を見て、星川はどこか悲しげな笑みを浮かべてコクリと頷く。
「裕一郎様についてのお話です」
「……!!」
思わず恋幸が生唾を飲み込むと、星川は「これから語ることは、裕一郎様には他言しないで頂けると幸いです」と穏やかな口調で念を押し、恋幸が頷いたのを確認して言葉を続けた。
「……裕一郎様は、今でこそ感情表現の乏しい方ですが、昔……裕一郎様が小学校に入り、高校・大学を卒業して新社会人になったばかりの頃は、もっと表情がコロコロと変わる明るい方でした」
「そ、そうなんですか……?!」
「ええ。ふふ、意外でしょう?」
――……星川の語った内容はこうだ。
彼女は19歳になったばかりの頃に裕一郎の父に雇われたが、家事手伝いとしてはまだ未熟だったため、当時2歳だった裕一郎の世話係を主に担当していた。
裕一郎は成長するにつれ魅力溢れる社交的な好青年になり、その顔の良さも相まって小中高大と彼に言い寄る女性は数多く存在した。そして裕一郎も、初めに就いた仕事を23歳で辞職するまではただの一度も交際の申込みを断らなかったそうだ。
星川は、それはまるで何かを忘れるため必死になっているかのようだったと言う。
しかし、裕一郎の交際はいつも短期間で終わりを迎えてしまう。
中には「ウサギ? えー……イメージと全然違った……」「男のくせにウサギ飼ってんの!? 気持ち悪い!」と吐き捨てて屋敷から出ていく女性もいたそうだ。
両親と共に過ごす時間が短く寂しげに見えた幼い頃の裕一郎に「ウサギを飼うのはいかがでしょうか?」と提案したのは星川で、「裕一郎様の交際が上手くいかないのは自分のせいなのではないか?」とひどく罪悪感を抱いていたらしい。
そして……裕一郎は初めの仕事を辞めた23歳の頃から、突然声を出して笑うことも怒ることもしなくなり、本当に信頼している人間以外は周囲から遠ざけ、他人に対して簡単に心を開かなくなった。
女性からのアプローチも全て拒絶し、父親が用意した許嫁との婚約も解消。以来、今年の2月までひたすら仕事に没頭しているような人間だったらしい。
いったい何がきっかけだったのか。いつ、裕一郎の身に何が起きたのか。それとなく自分に相談するよう促してみても、裕一郎は「大丈夫です。八重子さん、心配かけてごめんね」としか答えなかったそうだ。
星川には愛する夫がいるが彼女は子供ができない体質だったため、裕一郎のことを我が子同然に大切に思っている。だからこそ、彼のことが心配でたまらなかったのだと言う。
「小日向様のことは、一度だけ裕一郎様から話を聞きました。先月、花様を撫でながら『この子に似た女性と出会った』と。その時、久しぶりに裕一郎様が微笑んでいるのを見たんです」
(そ、そうなんだ……なんか照れちゃうな……)
湯呑を両手に持ちふーふーと息を吹きかける恋幸を見て、星川は口元の笑みを深くする。
「今日こうして小日向様にお会いできて嬉しいです」
「わっ、私も!! 星川さんに会えて嬉しいです!!」
「ふふ、ありがとうございます。……私は雇われている立場上、悩みがあるのではないか? と裕一郎様を問い詰めるわけにはいきませんし、小日向様に代わりに詮索してほしいわけでもありません。ただ……裕一郎様を、どうかよろしくお願いします。きっと貴女なら、裕一郎様の心に寄り添ってくれる……なぜか、そんな気がするんです」
星川の言葉に「寄り添えるよう精進します」と返しつつ、恋幸は心の中で(今世では……今度こそ、彼とずっと一緒にいる)と誓うのだった。
「はじめまして、星川八重子です」
40代後半だと思われるその女性は、開花したての花に似た柔らかい笑みを浮かべ恋幸に対して深々と頭を下げる。
それを見て恋幸も慌てて両手の指先を畳につき、額を擦りつけそうな勢いでお辞儀を返した。
「こっ、こちらこそはじめまして! 小日向恋幸と申します……!!」
「小日向さん、顔を上げてください。……八重子さんは、私が個人的に雇っている家事手伝いの方です」
「ふふ、よろしくお願いしますね」
「はははいっ!! こちらこそ……!!」
先程の光景を見られた気恥ずかしさから挙動不審な恋幸に対して、星川はくすりと笑い首を少し傾ける。
「小日向様、少し……お時間を頂いても大丈夫ですか?」
「え? あっ、はい! 大丈夫です!」
「……裕一郎様。彼女と二人きりでお話して来てもよろしいでしょうか?」
「ええ、勿論。どうぞ」
「ありがとうございます。それでは少しの間、小日向様をお借りしますね」
◇
少女漫画脳の恋幸は、もしかしてこのまま裏庭へ連れて行かれた後に「あんた、まさか裕一郎様の彼女? 自分の顔、鏡で見たことないの? 立場を弁えな! あんたがいるとこの家の空気が不味くなるんだよ……っ! さっさと出て行ってちょうだい、このおブスなメロンソーダ小娘っ!!」と、壁ドンと共に罵声を浴びせられ敷地内から追い出されてしまうのだろうかと思い、小さく震えながら星川の後ろをついて歩いていたのだが、辿り着いた場所は畳が良い香りを漂わせる床の間だった。
ガラス越しに見えるのは、庭の大きな池。部屋の中心には座卓と座布団が置かれ、襖を開けたすぐ向こう側にキッチンがあることから、普段は裕一郎がここで食事を済ませているのではないだろうかと恋幸は考える。
ぼけっとその場で立ち尽くす恋幸に対し、星川は慣れた手つきでキッチンから急須と人数分の湯呑・茶葉や茶菓子を運び、座卓の上に置き終えるなりちょいと手招きをした。
「小日向様。どうぞ、座ってくださいな。緑茶は嫌いじゃない? おまんじゅうは食べられる?」
「緑茶……っ! お、おまんじゅうも! 大好きです!!」
「そう、よかったー! あ……突然あんなことを言ってしまい、申し訳ありませんでした。どうしても、小日向様にお話しておきたいことがあって……」
「話しておきたいこと……?」
用意された座布団に腰を下ろし首を傾げる恋幸を見て、星川はどこか悲しげな笑みを浮かべてコクリと頷く。
「裕一郎様についてのお話です」
「……!!」
思わず恋幸が生唾を飲み込むと、星川は「これから語ることは、裕一郎様には他言しないで頂けると幸いです」と穏やかな口調で念を押し、恋幸が頷いたのを確認して言葉を続けた。
「……裕一郎様は、今でこそ感情表現の乏しい方ですが、昔……裕一郎様が小学校に入り、高校・大学を卒業して新社会人になったばかりの頃は、もっと表情がコロコロと変わる明るい方でした」
「そ、そうなんですか……?!」
「ええ。ふふ、意外でしょう?」
――……星川の語った内容はこうだ。
彼女は19歳になったばかりの頃に裕一郎の父に雇われたが、家事手伝いとしてはまだ未熟だったため、当時2歳だった裕一郎の世話係を主に担当していた。
裕一郎は成長するにつれ魅力溢れる社交的な好青年になり、その顔の良さも相まって小中高大と彼に言い寄る女性は数多く存在した。そして裕一郎も、初めに就いた仕事を23歳で辞職するまではただの一度も交際の申込みを断らなかったそうだ。
星川は、それはまるで何かを忘れるため必死になっているかのようだったと言う。
しかし、裕一郎の交際はいつも短期間で終わりを迎えてしまう。
中には「ウサギ? えー……イメージと全然違った……」「男のくせにウサギ飼ってんの!? 気持ち悪い!」と吐き捨てて屋敷から出ていく女性もいたそうだ。
両親と共に過ごす時間が短く寂しげに見えた幼い頃の裕一郎に「ウサギを飼うのはいかがでしょうか?」と提案したのは星川で、「裕一郎様の交際が上手くいかないのは自分のせいなのではないか?」とひどく罪悪感を抱いていたらしい。
そして……裕一郎は初めの仕事を辞めた23歳の頃から、突然声を出して笑うことも怒ることもしなくなり、本当に信頼している人間以外は周囲から遠ざけ、他人に対して簡単に心を開かなくなった。
女性からのアプローチも全て拒絶し、父親が用意した許嫁との婚約も解消。以来、今年の2月までひたすら仕事に没頭しているような人間だったらしい。
いったい何がきっかけだったのか。いつ、裕一郎の身に何が起きたのか。それとなく自分に相談するよう促してみても、裕一郎は「大丈夫です。八重子さん、心配かけてごめんね」としか答えなかったそうだ。
星川には愛する夫がいるが彼女は子供ができない体質だったため、裕一郎のことを我が子同然に大切に思っている。だからこそ、彼のことが心配でたまらなかったのだと言う。
「小日向様のことは、一度だけ裕一郎様から話を聞きました。先月、花様を撫でながら『この子に似た女性と出会った』と。その時、久しぶりに裕一郎様が微笑んでいるのを見たんです」
(そ、そうなんだ……なんか照れちゃうな……)
湯呑を両手に持ちふーふーと息を吹きかける恋幸を見て、星川は口元の笑みを深くする。
「今日こうして小日向様にお会いできて嬉しいです」
「わっ、私も!! 星川さんに会えて嬉しいです!!」
「ふふ、ありがとうございます。……私は雇われている立場上、悩みがあるのではないか? と裕一郎様を問い詰めるわけにはいきませんし、小日向様に代わりに詮索してほしいわけでもありません。ただ……裕一郎様を、どうかよろしくお願いします。きっと貴女なら、裕一郎様の心に寄り添ってくれる……なぜか、そんな気がするんです」
星川の言葉に「寄り添えるよう精進します」と返しつつ、恋幸は心の中で(今世では……今度こそ、彼とずっと一緒にいる)と誓うのだった。
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