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結婚式に乗り込んで申し訳ないけれど、結婚する前に私との婚約を解消してくれませんか?
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「......この結婚に異議のある方はおられますか?」
政略によるものが多い貴族の結婚式なのですもの、基本的には異議などなく形式的な質問ですわ。
けれど、私は異議がございますのよね...正直に申し上げますと、とても面倒くさいのですけれども、このままにはしておけませんものね。
「はい、異議がございますわ。」
「は?!」
実を申しますと、この結婚式に私は招待されておりませんの。
この結婚式が催されるとお聞きして、我が家一同驚きましたわ。
これはどうにかしなければならないと焦りまして、何度もお手紙や使者を送ったのですけれどお話し合いの場を設けていただけませんでしたの。
それで、新郎に招待されたという兄のご友人のパートナーとして出席しておりますの。
新郎側の友人席の後方でスッと手を上げて発言いたしましたら、神父様がとても驚いたお顔をお見せになられまして、申し訳ありませんわ。
ウフフ、なんとも間抜けな声が漏れてしまわれましたわね。
「異議がございますと申しておりますわ。」
「へ?...えっと、貴女は誰ですか?」
え?新郎、まさかですけれどお忘れなのですか?
「貴方が学園に入られてから7年程お会いしておりませんけれど、貴族院にも届けられております...貴方の婚約者ですわ。」
婚約者の顔を忘れるなんて、常識的にありえませんわよ?
7年程お会いしておりませんし、私もお顔を初めて見た気分ですけれど。
「なんですって?!」
「私の生家であるドミーヌ伯爵家は、そちらの新郎の生家であるマフシス伯爵家の領地とは隣の領地ですの。
今後の領地運営を助け合おうとマフシス伯爵様が父に相談して来られまして、契約を結ぶこととなりましたの。
その契約を強固なものとするために、既に婚約者のいた跡取りではない者同士で結婚させようと、両家の両親同士が話し合って決めたことですわ。
そうそう、幼い頃から知っておりますので幼馴染みでもありますわね。」
真っ赤なお顔をして叫ばせてしまった新婦の方には、本当に申し訳ございませんわ。
新婦であるイリーヌ様も、イリーヌ様のご家族であるルシーク子爵家の皆様も、私との婚約を知らなかった...いえ、マフシス伯爵家の皆さまが、私とご子息が婚約していることを意図的に隠されていたのですもの。
「両親同士の決めた婚約者がいたのに、学園で出会った私に婚約を申し出てきたの?
今の状況って、婚約から1年経ってやっと結婚式って日に、本来の婚約者が乗り込んできたっていう状況よね?」
「はい、そうなりますわ。
詳しく申しますと、約5年前から婚約を解消していただきたくて...何度も何度もお手紙を出していたのですが、お返事が無く困っておりましたの。
元々、この婚約自体にあまり気乗りしていないご様子ではありましたわ。
こちらといたしましても、誕生日に贈り物をしてくださることもありませんし、交流の為に開いたお茶会にはなんの連絡もなく遅刻なさり、酷い時には連絡をせずに欠席なさいますの。
そちらから誘われたからとお伺いしたお茶会には、鍛錬をなさっていたからと泥だらけのお洋服でお出でになられまして、手にしていた木刀で私が座っていた椅子を叩かれたこともございますわ。
父を通して抗議いたしましたら、私の着ていたドレスが無駄にフリフリしていて気に食わなかったのだと、謝罪もなく言い訳をされましたわね。
この方と添い遂げるのは無理だと何度も訴えておりましたが、両親同士でお決めになられたことでしたので覆ることもなく、私も我慢しておりましたのよ?」
「それは!」
何かある度に慰謝料だと金貨2枚を送られてきましたけれど、そんな僅かばかりのお金でどうにかなるとでも?
平民が3日程で稼ぐらしいお金で、全ての行いを清算することなど出来ませんわよ?
特に謝罪もしていただいておりませんもの。
「両家での話し合いにより、婚姻いたしましたら我が家の商会にて働く事になりましたので、学生の頃より商会にてお手伝いをしてくださるとのお申し出が、マフシス伯爵様からございましたの。
それならば、商会に通いやすいようにと、我が家の領地にある学院に入るというお約束でしたのに、7年程前に王都の学園に入るとお聞きしましたので、契約の不履行を理由に婚約の解消を申し出たのですけれど、マフシス伯爵様に駄々をこねられてしまいまして...婚約の解消はしていただけませんでしたわ。
私からは折に触れお手紙をお出しして、お誕生日や祝いの際にはその都度贈り物もいたしておりましたけれど、私のお誕生日には贈り物はおろかお手紙の1枚も来ませんでしたわ。
そして、学園を卒業なさる年になりましたけれど、卒業式典や卒業記念のパーティーへの招待もなく、何度も婚約をどうするのかの連絡をいたしましても無視されている状態で...半年程前でしょうか?
兄のご友人から、私の婚約者が結婚式を執り行うようだとお聞きしましたの。
兄のご友人は私とも面識がございまして、マフシス伯爵家との婚約を結んだ後にご自身の弟君との婚約を結ばないかと打診してくださいましたので、私には婚約者がいるのだとご説明いたしておりましたの。」
「なんということなの!」
驚きますわよね...貴族ですのに、話し合って決めた筈の契約を守っていないのですもの。
契約を守れないなんて、信用問題になりますわよ。
「こうして婚約契約書を交わしておりますので、私との婚約を解消してからでなければ新しい婚約など出来ませんわよね?
どのようにして婚約なさったのかしら?
私との婚約契約書がここにある限り、お2人の婚約も、この結婚式も無効ですわよ?」
「え、お前とは解消したんじゃなかったのか?」
「いいえ、まだ解消いたしておりません。
もしも私と貴方との婚約を解消しているのであれば、この婚約契約書は燃え尽きておりますわ。」
婚約を解消したと思っていたにしても、お手紙や使者を無視したのはどうしてなのかしら?
私や我が家が、解消したことを忘れて連絡してきているとでも思っていたの?
いえ、もしもそうだとしても、普通の貴族家であれば婚約は解消しているとの連絡くらいいたしますわよね?
一度も返信はありませんでしたし、使者は当主不在の為後ほどこちらから連絡するとのことで、半日程待たされてから返されましたわ。
*
政略によるものが多い貴族の結婚式なのですもの、基本的には異議などなく形式的な質問ですわ。
けれど、私は異議がございますのよね...正直に申し上げますと、とても面倒くさいのですけれども、このままにはしておけませんものね。
「はい、異議がございますわ。」
「は?!」
実を申しますと、この結婚式に私は招待されておりませんの。
この結婚式が催されるとお聞きして、我が家一同驚きましたわ。
これはどうにかしなければならないと焦りまして、何度もお手紙や使者を送ったのですけれどお話し合いの場を設けていただけませんでしたの。
それで、新郎に招待されたという兄のご友人のパートナーとして出席しておりますの。
新郎側の友人席の後方でスッと手を上げて発言いたしましたら、神父様がとても驚いたお顔をお見せになられまして、申し訳ありませんわ。
ウフフ、なんとも間抜けな声が漏れてしまわれましたわね。
「異議がございますと申しておりますわ。」
「へ?...えっと、貴女は誰ですか?」
え?新郎、まさかですけれどお忘れなのですか?
「貴方が学園に入られてから7年程お会いしておりませんけれど、貴族院にも届けられております...貴方の婚約者ですわ。」
婚約者の顔を忘れるなんて、常識的にありえませんわよ?
7年程お会いしておりませんし、私もお顔を初めて見た気分ですけれど。
「なんですって?!」
「私の生家であるドミーヌ伯爵家は、そちらの新郎の生家であるマフシス伯爵家の領地とは隣の領地ですの。
今後の領地運営を助け合おうとマフシス伯爵様が父に相談して来られまして、契約を結ぶこととなりましたの。
その契約を強固なものとするために、既に婚約者のいた跡取りではない者同士で結婚させようと、両家の両親同士が話し合って決めたことですわ。
そうそう、幼い頃から知っておりますので幼馴染みでもありますわね。」
真っ赤なお顔をして叫ばせてしまった新婦の方には、本当に申し訳ございませんわ。
新婦であるイリーヌ様も、イリーヌ様のご家族であるルシーク子爵家の皆様も、私との婚約を知らなかった...いえ、マフシス伯爵家の皆さまが、私とご子息が婚約していることを意図的に隠されていたのですもの。
「両親同士の決めた婚約者がいたのに、学園で出会った私に婚約を申し出てきたの?
今の状況って、婚約から1年経ってやっと結婚式って日に、本来の婚約者が乗り込んできたっていう状況よね?」
「はい、そうなりますわ。
詳しく申しますと、約5年前から婚約を解消していただきたくて...何度も何度もお手紙を出していたのですが、お返事が無く困っておりましたの。
元々、この婚約自体にあまり気乗りしていないご様子ではありましたわ。
こちらといたしましても、誕生日に贈り物をしてくださることもありませんし、交流の為に開いたお茶会にはなんの連絡もなく遅刻なさり、酷い時には連絡をせずに欠席なさいますの。
そちらから誘われたからとお伺いしたお茶会には、鍛錬をなさっていたからと泥だらけのお洋服でお出でになられまして、手にしていた木刀で私が座っていた椅子を叩かれたこともございますわ。
父を通して抗議いたしましたら、私の着ていたドレスが無駄にフリフリしていて気に食わなかったのだと、謝罪もなく言い訳をされましたわね。
この方と添い遂げるのは無理だと何度も訴えておりましたが、両親同士でお決めになられたことでしたので覆ることもなく、私も我慢しておりましたのよ?」
「それは!」
何かある度に慰謝料だと金貨2枚を送られてきましたけれど、そんな僅かばかりのお金でどうにかなるとでも?
平民が3日程で稼ぐらしいお金で、全ての行いを清算することなど出来ませんわよ?
特に謝罪もしていただいておりませんもの。
「両家での話し合いにより、婚姻いたしましたら我が家の商会にて働く事になりましたので、学生の頃より商会にてお手伝いをしてくださるとのお申し出が、マフシス伯爵様からございましたの。
それならば、商会に通いやすいようにと、我が家の領地にある学院に入るというお約束でしたのに、7年程前に王都の学園に入るとお聞きしましたので、契約の不履行を理由に婚約の解消を申し出たのですけれど、マフシス伯爵様に駄々をこねられてしまいまして...婚約の解消はしていただけませんでしたわ。
私からは折に触れお手紙をお出しして、お誕生日や祝いの際にはその都度贈り物もいたしておりましたけれど、私のお誕生日には贈り物はおろかお手紙の1枚も来ませんでしたわ。
そして、学園を卒業なさる年になりましたけれど、卒業式典や卒業記念のパーティーへの招待もなく、何度も婚約をどうするのかの連絡をいたしましても無視されている状態で...半年程前でしょうか?
兄のご友人から、私の婚約者が結婚式を執り行うようだとお聞きしましたの。
兄のご友人は私とも面識がございまして、マフシス伯爵家との婚約を結んだ後にご自身の弟君との婚約を結ばないかと打診してくださいましたので、私には婚約者がいるのだとご説明いたしておりましたの。」
「なんということなの!」
驚きますわよね...貴族ですのに、話し合って決めた筈の契約を守っていないのですもの。
契約を守れないなんて、信用問題になりますわよ。
「こうして婚約契約書を交わしておりますので、私との婚約を解消してからでなければ新しい婚約など出来ませんわよね?
どのようにして婚約なさったのかしら?
私との婚約契約書がここにある限り、お2人の婚約も、この結婚式も無効ですわよ?」
「え、お前とは解消したんじゃなかったのか?」
「いいえ、まだ解消いたしておりません。
もしも私と貴方との婚約を解消しているのであれば、この婚約契約書は燃え尽きておりますわ。」
婚約を解消したと思っていたにしても、お手紙や使者を無視したのはどうしてなのかしら?
私や我が家が、解消したことを忘れて連絡してきているとでも思っていたの?
いえ、もしもそうだとしても、普通の貴族家であれば婚約は解消しているとの連絡くらいいたしますわよね?
一度も返信はありませんでしたし、使者は当主不在の為後ほどこちらから連絡するとのことで、半日程待たされてから返されましたわ。
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