勘違い甚だしいですわね?

神谷 絵馬

文字の大きさ
7 / 15

7-

しおりを挟む
「...王太子殿下、どうしてお姉様と婚約を?」

4人乗りの馬車に乗ったのですけれど、私はお姉様と共に並んで座りましたわ。
本来ならばパートナーと隣に座るのですけれど、突然の王太子殿下との婚約に動揺しているお姉様が、今日は王太子殿下のお隣ではなく私のお隣が良いと仰いましたのよ。
いきなり王太子殿下のお隣では、緊張してしまうのですって。
やはり、お姉様は可愛らしいわ。

さて、今しか出来ないだろう質問をしておきましょう。
ウフフ、王太子殿下の返答次第ですけれど...王太子殿下と言えども許しませんわよ?
私の大切なお姉様なのですから。

「ん?マーガレット嬢を、初めてお会いしたときに見初めていたからですよ?

あれは、ミルフィーユ嬢が初めて参加した王妃主催の子供だけのお茶会での出会いでした。
実際は、私の婚約者探しの為のお茶会だったのですけれどね?
マーガレット嬢はミルフィーユ嬢と手を繋いで、髪は白いレースのリボンを用いて耳の上で2つに結い、柔らかい黄色のふんわりとしたドレスというお揃いの格好をしておりましたね...それが、とても可愛らしかったのですよ。
いつも2人で一緒に動いていて、とても愛らしい双子だなと...微笑ましくも感じました。
双子ではなく姉妹だと聞いたときには、本当に驚きました。
お2人はとてもそっくりでしたから。

そして、2人でご挨拶に来てくださったとき、伴侶はこの方しかいないと確信しました。
ですので、王妃様に頼んだ筈でした...
『私の婚約者には、マーガレット・シフォン伯爵令嬢を据えてください。
それ以外の方は候補にすらなりません。』
と。
それなのに、グリスフィルドの子息が...あいつもあのときのお茶会でマーガレット嬢に目を付けたようでしてね?
強引に、そして堂々と伯爵家へと脅しまでして、マーガレット嬢を手に入れてしまったのです。
まぁ...私に意見を聞いてからの王妃の動きが、殊の他遅かったのも原因です。
ですから、これまで沢山暴れ抵抗させていただきました。
王家の子供は私だけですので、廃嫡されるギリギリの所まで...ですけどね?」

「まぁ!そうでしたの??
グリスフィルド侯爵家に関しては、王家ならば如何様にも出来そうですけれど...王妃様は何もなさいませんでしたのね?
我が家が、取るに足らない程度の伯爵家だからかしら?
ウフフ、今頃、王妃様は慌てておられるかもしれませんわね。」

王太子殿下の語られることに、お姉様が驚いておられますわ。
ウフフ、王太子殿下の熱い目線から離れようとなさっておいでなのですけれど、お姉様?馬車は狭いのですから、無理なさらないでくださいませね?
とは言え、私ももう少し距離を欲しておりますわ。
だって、王太子殿下は私の目の前なのですもの...焦げてしまいそうですわね。

にこやかに...けれど目だけは剣呑に、あいつ・・・だなんて聞こえて参りましたけれど、そうね、私の心の安寧のためにも聞かなかったことにいたしましょう。
王太子殿下のご返答に、私はとても安心いたしましたわ。

「いえ?王妃様には、将来王妃としたいご令嬢がいたらしいのです。
是非に私に、その方を見初めさせようとあのときのお茶会は開かれたのだと......先週、王妃様を問い詰めたときに話してくださいました。
今は、大人しく謹慎なさっておられますよ。」

王妃様を問い詰めるだなんて、何がありましたの?
いいえ、やっぱり怖くて聞けないわ。
それに、王族のことに巻き込まれるのは面倒でしかありませんものね。

「フフフ、大丈夫ですよ?
私は、貴女達のお父上と共に動いておりましたから。

グリスフィルドの子息は、お茶会の際にマーガレット嬢を見初めた筈でしたが...婚約者の妹として接したミルフィーユ嬢に、突然懸想し始めました。
ミルフィーユ嬢には、仲睦まじい婚約者がいる身でしたのに...馬鹿ですよね。」

さらっと毒づかれる王太子殿下は、お姉様を見つめて幸せそうに微笑んでおられますのよ。
王太子殿下に微笑まれて、戸惑いつつも頬を染めて恥じらうお姉様が可愛らしいわ。

ハァ...それにしても、あのグリスフィルドのご子息様は相も変わらず気持ち悪いわね。
けれど、父様が今日決着を着けると仰いましたもの...もう少し我慢いたしますわ。





*
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

あんなにわかりやすく魅了にかかってる人初めて見た

しがついつか
恋愛
ミクシー・ラヴィ―が学園に入学してからたった一か月で、彼女の周囲には常に男子生徒が侍るようになっていた。 学年問わず、多くの男子生徒が彼女の虜となっていた。 彼女の周りを男子生徒が侍ることも、女子生徒達が冷ややかな目で遠巻きに見ていることも、最近では日常の風景となっていた。 そんな中、ナンシーの恋人であるレオナルドが、2か月の短期留学を終えて帰ってきた。

処理中です...