明らかにおかしい。

神谷 絵馬

文字の大きさ
2 / 9

2

しおりを挟む
怒れる仕立て屋さん達の手によって、継ぎはぎだらけのボロいワンピースは、クローゼットから全て一掃されました。
これ程にボロい布では雑巾にすらならないからと、とっとと焼き捨てるようにと優しい執事に渡したのです。
嬉しそうに草臥れた布の袋に入れた優しい執事は、仕立て屋さん達のご指示通り、早急に焼き捨てるべく焚付場に行ってくるそうです。

そして、伯爵家の娘に相応しい程度に質の良い布地を使ったワンピースを、普段着用と余所行き用合わせて10着揃えることになりました。
これからきっと直ぐに成長するので、多少であれば大きくても構わないのに...私の採寸を隅から隅までキッチリとしてから、女性3人の手が凄い早さでどんどんと仕上げていくので、なんだか怖かったです。
今は、3人でレースはどうするだとかスカートは何段重ねるだとか...和気藹々とお喋りをしながら、明日のお茶会用の少し豪華なワンピースを制作し始めています。
男性はデザイナーだったらしく、自分が描いた基本のデザインを3人のお喋りに合わせて幾通りかのデザインに描き直していきます。
女性3人は、それを見てからまたあーでもないこーでもないと、手を動かしながらも議論しています。

あ、そうそう、バトルジャンキーラビットの名前は、さっき聞いた優しい執事の名前に似たものにしようと思います。
優しい執事は、名乗るのを忘れる程には私の扱われ方に衝撃を受けていたようで、私が仕立て屋さん達におののいて縋ろうとした際に優しい執事のことを優しい執事と呼んだことから、自分が名乗っていないことを思い出したらしいです。
以外とうっかりさんな優しい執事はバルト・ロメールというのだそうで、敬称は付けずにバルトと呼ぶようにと半ば脅し?を受けました。
優しく微笑んでいるのに、目が笑ってませんでした...フフフ。

バルト曰く、贈られたウサギはオスらしいので名前の参考にしようと決めたのです。
うーん、アルトとかはどうかな?
いや、ウサギだから...ウルトとかもいいんじゃない?
あ、どっちも嫌なのね?
嫌なんだっていうのは分かったから、バルトの腰を掴んでケリケリしないの。
そこまで力を込めてないのは分かるけど、バルトが痛いでしょ?
きっと、あまりにも安易過ぎるのが嫌なんだよね?
うー......あ!ロジャーは?
うんうん、バルトにケリケリしなくなったし、ロジャーという名前を気に入ってくれたみたいです。

「お嬢様、そちらのバトルジャンキーラビットがお茶会に参加するためには、首輪を着けている必要がありますわ。
こちらの首輪から選んで首に着けてくださいませね?
あら、ロジャーと名付けられましたの?
とても格好よい名前ですわね。」

ドレスのことはよく分からないので仕立て屋さん達にまるっとお任せして、ロジャーとバルトと戯れていたら、高速に手を動かし続けていた3人の内の1人が、ふと思い出したように可愛らしいものや厳ついものまで...多種多様な首輪を詰めた箱を持ってきてくれました。
名前を誉められたロジャーは嬉しかったらしく、キュウキュウ言いながらもっふりのお手々でお姉さんの頬を一度だけ撫でました。
撫でられたお姉さんは嬉しそうにロジャーにお礼を言って、首輪の詰められた箱を置いて作業に戻っていきました。
あれ?お茶会に、ロジャーを連れて行っても良いの?
後で、礼儀作法を教えてもらうときにでも優しい執事に聞いてみよう。

うーん、沢山あって悩むなぁー...。
ロジャーはオスらしいし、あまりにも可愛いものは嫌だろうから...これらは候補から外して、うーん、難しい。
ん?え、ロジャーはそれが良いの?
渋めの鶯色で材質は革っぽいけど、装飾は可愛らしいリボンだよ?
あー、さっきボロボロのワンピースたちが一掃されたときに、私の着ていたワンピースも共に一掃されてまして...お姉さん達が、取り急ぎ直ぐに着れるようにと、1着のワンピースを超特急で作ってくれたんですよ。
その服と同じような色で装飾も同じリボンだから、これが良いのね?
まぁ、ロジャーが気に入ったのならこれにしよっか!

「おぉ、実に可愛らしいな...うーむ、だが、そのワンピース以外だとお揃いにはならないな...そうだ!
ロジャー君、君の主にも同じ意匠のブレスレットを作るよ。
主従で同じものを付けるなんて、きっと可愛いに違いないからね。」

私の大きさではロジャーの首に届かないので、バルトが代わりに首輪を着けてくれました。
どこにも継ぎ目が無いのでどうやって着けるのかと興味津々に見つめていたら、バルトが首輪をロジャーに近付けると、勝手に大きさが変わっていつの間にか首に装着されていて、とっても驚きです。
ロジャーも、驚いてこちらを見つめながら恐々と首の辺りを触ってます。
首輪を着けたロジャーを眺めていた仕立て屋さんのおじさんが、懐から同じ色の革を出してきてなにやら加工し始めました。
ロジャーの首輪とお揃いのブレスレットを私に作ってくれるらしくって、とっても嬉しいから何も言いません。
勿論、お礼は後でちゃんと言いますよ?





*
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした

セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。 牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。 裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。

ある女性の願いごと

篠月珪霞
ファンタジー
祖父の家に遊びに来た琴音は、蔵にあった巻物によって異世界に飛ばされてしまう。 同じような境遇にあった女性に、ひとまず保護されるが…。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

使い捨て聖女の反乱

あんど もあ
ファンタジー
聖女のアネットは、王子の婚約者となり、瘴気の浄化に忙しい日々だ。 やっと浄化を終えると、案の定アネットは聖女の地位をはく奪されて王都から出ていくよう命じられるが…。 ※タイトルが大げさですがコメディです。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

予言姫は最後に微笑む

あんど もあ
ファンタジー
ラズロ伯爵家の娘リリアは、幼い頃に伯爵家の危機を次々と予言し『ラズロの予言姫』と呼ばれているが、実は一度殺されて死に戻りをしていた。 二度目の人生では無事に家の危機を避けて、リリアも16歳。今宵はデビュタントなのだが、そこには……。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

遊鷹太
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

聖女は聞いてしまった

夕景あき
ファンタジー
「道具に心は不要だ」 父である国王に、そう言われて育った聖女。 彼女の周囲には、彼女を心を持つ人間として扱う人は、ほとんどいなくなっていた。 聖女自身も、自分の心の動きを無視して、聖女という治癒道具になりきり何も考えず、言われた事をただやり、ただ生きているだけの日々を過ごしていた。 そんな日々が10年過ぎた後、勇者と賢者と魔法使いと共に聖女は魔王討伐の旅に出ることになる。 旅の中で心をとり戻し、勇者に恋をする聖女。 しかし、勇者の本音を聞いてしまった聖女は絶望するのだった·····。 ネガティブ思考系聖女の恋愛ストーリー! ※ハッピーエンドなので、安心してお読みください!

処理中です...