明らかにおかしい。

神谷 絵馬

文字の大きさ
4 / 9

4

しおりを挟む
「あらあら、私は別に今直ぐにでも構わなくってよ?
大変になるのは貴方ですけれど...貴方ならきっと大丈夫よね?
(やるのなら、きちんと時期をみなさいね?
王位を継ぐのは貴方なのだから。)」

あー、聞こえてくる会話からもこの場からも逃げたい...です。
切実に、可及的速やかに、安全に...誰にも気付かれることなく逃げたいですー。
けど、王太子殿下の、このがっしりと私のお腹を抱く腕からは逃れられそうもありません!
私、見た目通りの3歳の幼女ですから!
そんなに力はこもってなさそうなのに、抜け出せそうもないのは何故なのか?

「第1王妃!!
勝手に私の嫁を連れていくのはおかしいですわ!
まだ息子との顔合わせを終えておりませんのよ?
さっさと返してくださいませ!」

ん?...いやいや、私、決して貴女の嫁ではないですよ?
そりゃあ、一応、貴女の息子の婚約者になるとかって父親っぽい人に聞かされたけど、まだ正式に婚姻してないから嫁じゃあないですよね?
そもそも、成人した男が3歳の幼女を婚約者にするとか聞いたこともないですけど?
婚約者に内定って形で、もう少し大きくなってから婚約しましょう!とかなら、まぁ、分かる気もするけど...もう嫁呼びするんですか?

あ、そう言えばこの人、息子の婚約者といえども幼女を立たせたまま放置してた筈だよね?
本当に顔合わせをさせる気があるのなら、席にすら座らせずに1時間も立たせておくのかな?
ただ、誰かしらをイビりたいだけなのでは?

あ、王太子殿下?どんどん腕の力が強くなってますです。
あの、もう少し緩めてくださいませんか?
中身が出そう...あの美味しかったケーキが、出てしまうかもしれませーん!

「嫁?...おや?兄上はもうご結婚なさっておられたのですか?
(婚約者に対して横柄な態度ばかりをとるものだから、何度となく婚約者に逃げられていた筈だが、奇特な女性がいたものだな...。)
それは、知りませんでした...おや?結婚式はいつされたのですか?
(勝手に結婚式をしたとか言ってくれたら、潰しやすいんだがな?)
まさか、家族である我々も知らぬ間に結婚をしていたとは...おめでとうございます。
で、兄上のお相手はどこにいらっしゃるのですか?
我々は家族なのですから、紹介していただけるんですよね?
(紹介される嫁がどんな相手なのか...楽しみですね。)」

王太子殿下ににこやかに微笑みかけられた側妃様は、キィー!と歯軋りする音が聞こえるような表情を一瞬だけしてからにんまりと笑いました。
よからぬことを企んでいるような、厭らしい...気持ちの悪い顔です。
あー、なんか、イヤーな感じというか、寒気がします。
ほら、素直にお肌にも表れてて、めちゃくちゃトリハダが立ってるんですよ!

腕の力を緩めてくださった王太子殿下が、私のお腹を優しく...まるで寝かし付けるようにポンポンと叩いてくださって、なんだか少し安心してしまいました。
硬直が解けた気がします。
あ、お腹をポンポンされたからと言っても、私は寝ませんよ?
今寝ちゃったら、この後の展開がすっごく気になるのに見られないじゃないですか!
きっと、物凄く後悔することになります!
だから、今は寝れません!
でも、お腹をポンポンされるのはなんだか安心するので、出来ればそのままがいいです。
はい、そのままでお話しをお続けくださいませ。

「第2王妃殿下!
私の娘を、そんなにも気に入っていただけるとは...恐悦至極に存じます!」

ん?気に入った?......いやいや、この人第2王妃殿下普通に3歳の幼女をイビってましたよね?
どこをどう見たら、この人が私を気に入ったように見えたんでしょう?
どうやら、私の父親っぽい人は頭が沸きまくりのようですね...怖い。
感動したように頬を上気させて現れて、地団駄踏む一歩前状態の側妃様の足元に跪いた父親の様子に、なんだか寒気がしました。
だって、まるで恋する乙女かのような表情をしているんですよ?キモい。
見た目が草臥れたハゲのおじさんなので、とてもとても違和感がありまくりまして...ウォェッ!
あぁ、吐きそう......無理無理...気持ち悪過ぎます。
あ、そう言えば、前頭部と頭頂部には無いけど後頭部にはまだ髪の毛が残っていたみたいで、意外とフサフサしてますね。
今は関係ない話しだけど、どの程度のハゲなのかが昨日から気になってたのでこれ幸いとガッツリ見ちゃいました。
普段は会うことすらなくて見られないと思うので、この機会はちょっとだけ面白かったです。
まぁ、かなり不快ですけどね。





*
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした

セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。 牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。 裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。

ある女性の願いごと

篠月珪霞
ファンタジー
祖父の家に遊びに来た琴音は、蔵にあった巻物によって異世界に飛ばされてしまう。 同じような境遇にあった女性に、ひとまず保護されるが…。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

使い捨て聖女の反乱

あんど もあ
ファンタジー
聖女のアネットは、王子の婚約者となり、瘴気の浄化に忙しい日々だ。 やっと浄化を終えると、案の定アネットは聖女の地位をはく奪されて王都から出ていくよう命じられるが…。 ※タイトルが大げさですがコメディです。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

予言姫は最後に微笑む

あんど もあ
ファンタジー
ラズロ伯爵家の娘リリアは、幼い頃に伯爵家の危機を次々と予言し『ラズロの予言姫』と呼ばれているが、実は一度殺されて死に戻りをしていた。 二度目の人生では無事に家の危機を避けて、リリアも16歳。今宵はデビュタントなのだが、そこには……。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

遊鷹太
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

聖女は聞いてしまった

夕景あき
ファンタジー
「道具に心は不要だ」 父である国王に、そう言われて育った聖女。 彼女の周囲には、彼女を心を持つ人間として扱う人は、ほとんどいなくなっていた。 聖女自身も、自分の心の動きを無視して、聖女という治癒道具になりきり何も考えず、言われた事をただやり、ただ生きているだけの日々を過ごしていた。 そんな日々が10年過ぎた後、勇者と賢者と魔法使いと共に聖女は魔王討伐の旅に出ることになる。 旅の中で心をとり戻し、勇者に恋をする聖女。 しかし、勇者の本音を聞いてしまった聖女は絶望するのだった·····。 ネガティブ思考系聖女の恋愛ストーリー! ※ハッピーエンドなので、安心してお読みください!

処理中です...