引っ越先はファンタジーな島でした。

神谷 絵馬

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ハジマリ

家まで遠い...

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島に行くのはフェリーでかなーと思ってたら、一応エンジンはついてるみたいだけどもなんだか頼りないくらいに小さな釣り舟?が待ってたの。
で、陽気な感じの船長さんのご厚意に甘えて、重いだろうスーツケースとリュックを乗せてもらって乗り込んだら、直ぐに出発。
あまりの揺れに船酔いしながらもなんとか今日の内に辿り着いた!と喜んでいたら、申し訳なさそうな顔をした船長さん曰く島に降ろすのは手伝えないとかなんとか...荷物は持てるだけ持ち込めるって言ってたけど、ここからなの?!と驚愕したけども頑張るしかない。
えっちらおっちら頑張って降ろして、心配そうにしながらも手を振って帰っていく船長さんを見送りました。

すると、突然背後から声をかけられて、驚いて変な声を出しつつ振り向いたら面倒臭そうにした役人が立ってました。

「それ、本当に持てますか?
片方をここに置いていって、後で取りに来るのは出来ませんよ?」

「うわー、お役所勤めって、やっぱり心狭いんですねー。
うーん、そんなにも狭量なことを言われるとは思ってませんでしたからとても驚いてますけど、分かりました。
1人で頑張ります。」

はぁ??1度で運び終えないといけないわけ?
それは封書に書いてなかったし、電話でも説明されてないんだけど?
後出しでそういう事言うとか、ドン引く程に心狭いわぁー...どんだけあの家や土地が欲しいんだろうねぇ?
だからお役所は嫌われるのよ!

「これが家の鍵になります。」

「はい。」

ムカついたから文句を言ってみたけど、しれっと聞こえてないかのような顔して家の鍵を渡された。
この人、市民の方々からも無愛想とか対応がわるいとか色々と不満持たれてそうだよね。
さて、家の鍵...ん?ちょっと待ってくれる?
余裕で腕を通せるくらいに大きなキーリングなのに、たった3個の鍵が通されているだけって...え、もうちょっと小さいキーリングにすれば良いのに、なんか無駄じゃない?
ま、これが家の鍵なら仕方ないか...貰っておいて後で自分で変えよう。
お役所で管理されてたってことは、この鍵複製されてるかもしれないしね。

「家は、あちらの丘の上にある赤い屋根が目印です。
今日中に着いていただけなければその荷物は没収となりますので、今日中に頑張ってくださいね。」

「は?今、もうお昼過ぎて...午後3時ですよ?
それなのに、今日中にあそこまで着けと?」

「えぇ、そうなります。」

だったら、待ち合わせの時間を早めるとか小舟を高速船にするとか...もうちょっと配慮が出来たでしょ?
この人的には当たり前のことを言ってるつもりみたいだけど、頭おかしいよ?
家に着いたら、クレーマーかってくらいにお役所に抗議の電話をかけてやるわ!
改めて思うけど、本当にお役所って嫌いだわー。

「貴方、お役所に勤めている癖に、配慮も何も出来ないくらいに馬鹿なんだ...お気の毒に。
じゃ、急ぎますので失礼しますね。

ハァー、優しさの欠片もない慇懃無礼な男ってまだいるもんなんだねぇ...あ、無理難題を押し付けて楽しんでるのかも?
うわっ!そう考えると性格悪ー!
あぁ、あの家と土地が欲しいから酷いことしてるってことも考えられるか!
うわぁ...引くわぁー。」

「聞こえてますが?」

「そりゃあ、聞こえるように言ってますからね。
お役所って、暇でも暇じゃないって言う所じゃないですかー。
さっさと帰ったらどうですか?
どうせ、手伝うなんてことはあり得ないんでしょうし、出発の時間に関してはそちらが11:00を指定してきた癖に時間を伸ばすことなんて考えて無いんでしょ?
こういうのって横暴ですよねー...もう少し出発早めることは出来たと思うけど、わざわざ指定してきたのは嫌がらせ?
うわ、それが事実だったら気持ち悪っ!

......あの、どうしてついてくるんですか?
めっちゃ目障りだし邪魔だし、キモい。」

歩きながら文句を言っていたら、渋い顔をしながら後ろを着いてくるお役所勤め。
チラチラ見切れてきててかなり目障りなんだけど、ハァー...さっさと帰れば良いのに!

「こちらが11:00を指定してきたというのはどういうことですか?
失礼ですが、それは事実なのですか?
いえ、事実かはこちらが確認することですね...その電話で名乗った職員の名前を聞いてもよろしいでしょうか?」

「あぁ、たしか蓮見って名乗ってましたけど?
家や土地を手放さないって伝えた後、どんな家なのかとかこちらの気候とかを聞いても教えていただけませんでしたし、かなり感じ悪かったですね。」

「蓮見ですか......彼は、貴女の相続された家や土地の法廷相続人の1人です。
貴女へお送りしたお手紙と同様の物を貴女の伯母様へお送りさせていただいた時に、今相続することは難しい旨を記した役所宛てのお手紙を頂いていたのですが、それを隠していたのも蓮見でした。
現在、彼には謹慎を命じておりまして、この件に関わらせないようにと通達されていた筈なのですが...困りましたねぇ。
彼に味方する者がいるのかもしれません...早急に調べます。」





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