引っ越先はファンタジーな島でした。

神谷 絵馬

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ハジマリ

家まで遠い...2

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「うわぁ、それはあり得ませんね。
これって、職権乱用じゃないですか?」

「はい、そうなります。
彼の処罰は後できっちり精査してからいたしますが、今回も彼の邪魔が入ったことは事実のようですから...仕方ありません。
帰れなくなりますので日が暮れるまでとなりますが、私が助力いたしましょう。
その重そうなスーツケースをこちらにくださいますか?」

うわぁ、この人めっちゃ怒ってない?
私にじゃないんだろうけど、目が怖いわー...ま、私には関係ないから無視無視、
日が暮れるまではもってくれるって言ってるんだし、素直にお願いしよう。

「え...うーん、まぁいっか?
蓮見ってのを、ちゃんと処罰してくださいね?
こっちに嫌がらせとかしてこないようにもお願いします。」

「この島に入れるのは、私を除けば貴女だけですから、どうぞご安心ください。
さて、時間もありませんし、キビキビ歩いてくださいね。」

「はいはい、ちゃんと歩いてますって。」

言われずとも歩いてるわ!
まぁ、重い方を持ってくれてるから少しスピードアップするけども...それ、かなり重いと思うけど重くないの?
ん?許可証?私、そんなの持ってない...あ、私は家を相続したから大丈夫なのか。
そっかそっか...ん?そう言えば、家って他に無いの?
周囲を見回してもどこにも見えないんだけど、木々に隠れてるってこと?
謎だけど、ま、住んでたらいつか会うよね?

「お、あともう少し!」

「そのようですね。」

あれから、特に会話もなく歩くことどれくらい経ったんだろ?
前方に、やっとこさ大きな門が見えてきました。
疲れたー...もうひと踏ん張り、頑張りますかねー。

「この門から向こうが私の相続した家の敷地ですか?」

「えぇ、そうなります。
この門と柵が貴女の家の敷地を表す目印となりますので、ご注意ください。」

レトロなアイアン調の装飾が可愛らしい、金属製の焦げ茶色をした柵と門。
その奥に見える赤い屋根の1階建てで横に広い家は、見た目には痛んでるようには見えないけど実際はどうなんだろ?
雨漏りとかしてたら補修とか素人には難しそうだし、玄関までの小道?だけ避けてボーボーに生えた草とか木とか、綺麗にするの大変なんだろうなー。
虫もいっぱいいそうだし、コレを半年以内に補修って...辛すぎる。

「半年以内に補修かぁ...これは大変そうだな。」

「半年以内?」

「ん?半年以内に人が住めるまでに補修しなければ、ここは取り壊されるんでしょう?
で、この土地はお役所のものになるって聞いてますけど?」

期限を考えてげんなりしてたら怪訝そうな声で聞き返されたけど、そっちが言い出しっぺじゃん?
なんで知らないの?

「そもそも、この土地の持ち主が役所になることはありません。
ここには血による結界が施されておりますので、血族の方がご存命であれば法廷相続人でさえ立ち入れないのです。」

「ん?結界?血族?なんですか?それ...」

訳分からんくなってきたぞ?
そして、微妙にファンタジー臭がしてきた。

「何もご存知ないのですか?」

「...両親は勿論ですけど、伯母からも特には聞いてません。」

「まだ日暮れ前ですから、少し説明いたしましょう。
さ、足が疲れているでしょうしこのスーツケースにでも座ってください。」

怪訝そうにしつつも周囲を見渡してまだ時間があると判断したらしい男性は、私のスーツケースをハンカチで拭いてから横にして、座るようにと促してきました。
疲れてはいたのでありがたく座りますけど...なんか、優しくて不気味。





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