思い付き短編集

神谷 絵馬

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生産職はのんびりのほのほ。1

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んぅ?..........あれ?ここは、私の所属するクランのお部屋?......ん?!コントローラーは?!あれ?!

「お、起きたかー?取り敢えず、身支度整えて食堂に集合な?」

「え?!あ、はーい!」

今の状況に困惑していたら、クランマスターが扉の外から声をかけてくれました。扉を開けないところなんて、やっぱり紳士な人ですね。私一応女だもんね。
あ、痛い...。え?痛い?これは私の身体なの??あ、でも鏡に写っているのは私が設定したアバターじゃないかね?いつも寝る前(ログアウト前)に着ていたパジャマだったからバタバタと慌てて身支度をしようとしたら転けました。痛いって感じるんだったら、痛覚があるんだよね?

「お!にゃんこもこっちに来てたのか!相変わらずちっせぇーな...ここ座れよ!」

「ハルクさん、おはようございます。えっと、皆さんは?」

「知らね。俺は昨日からここにいるけど、ギルドマスターとシュルツしかまだ見てないな。にゃんこも入れて4人だな。」

「へぇー。え?4人しかいないんですか?!」

「今のところな?他のやつの部屋を確認したけど、にゃんこの所以外は鍵が開いてて中は空だったぞ?今クランマスターが確認に行ってる。」

「おーい、ご飯出来たよぉー?取りに来てぇー。」

「はぁーい!」

青っぽい黒髪の前髪だけを、私がプレゼントした可愛い苺ちゃんゴムでちょん髷にしている副クランマスターのハルクさんが、いつも通り私の頭をワシャワシャと両手で撫でて鳥の巣状態にしてきます。そして、ハルクさんに肩を押されて誘導された椅子に座ると、流れるように鏡を設置して櫛を器用に使って髪を結ってくれました。今日は何故かツインのお団子でした。ハルクさんがキラキラした蒼い瞳を細めて満足そうにしているのを鏡越しに見ていたら、ギルド専属の料理人でもある魔法師シュルツさんの声が聞こえてきました。ご飯でーす!

「あららー?子猫ちゃん、やっと起きたのぉー?もぅ!寝坊助さんなんだからぁー!」

「シュルツさん、おはようございます。起きたばかりで、何がどうなっているのやら分かりません。」

いつも通りの眠そうな顔をしたシュルツさんは、キューティクルが素晴らしくて天使の輪が現れている長い白髪を、ハルクさんに1本の3つ編みにされてました。うん、これはハルクさんにしか出来ません。ハルクさん以外は、髪を結ぶなんて出来ませんからね!だって、ゴムは固いし...リボンとか絡むし...何度も挑戦するけど無理でした。

「昨日色々と見て回ったが、他のクランの奴等も数人いたぞ。皆困惑していたから、今日はギルドに行ってみようかと3人で話していたんだが、子猫も行くか?」

「あ、小熊おぐまさん!おはようございます。ギルド行ってみたいです。」

「じゃ、飯食べてから行くか。」

「そうだねぇー、ご飯からだよぉー?」

「はぁーい!」

突然背後に現れたクランマスターは、髪型を崩さないようにポフポフと撫でてくれました。前、特に気にせずに普通に撫でたら、ハルクさんに怒られたんだよねぇ...私はリアリティ設定を無しにしてるから大丈夫だったんだけど、うん、誰でも怒られたくはないですよね。
それにしても、皆さんいつまで私を猫扱いするのでしょう?呼び方まで猫で統一して...まぁ、別クランの人だけど古戸流志巣こどるしすさんよりはマシかな?古戸流志巣さんからは、いつも愛しのタマちゃんって呼ばれるんだよね...。私の名前はノアールなのに!ほら、ちょっと格好付けて外国語にしたんだよねぇ...何処の国の言葉だったかは忘れちゃって分からないけど、黒って意味です。ほら、ネットで調べたんだよ!本名にも黒が入ってるし、髪も目も黒いからね。アバターは茶色にしてるよ?髪は濃いめの茶色で、目は薄い茶色だから琥珀色っぽいやつ!首元に髪が当たるのが嫌でポニーテールにすれば良いかと長めに設定したら、ゲームの癖に髪を結ぶことが簡単ではないと後に知ったんだよね...。それからは、毎日見かねたハルクさんに結んでもらっております。





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