【完結】完璧上司の裏の顔~親の借金返済のため、内緒でエッチなコスプレで動画配信していたら、実は熱烈なファンだった上司に求婚された件

香月律葉

文字の大きさ
13 / 49
10章

人気の歌い手さんとコラボ

「タマちゃーん! 会えて嬉しいっ!」

 今日はコスプレイヤーで人気の歌い手であるアイさんの手伝いに来た。
 アイさんは歌が物凄いうまくて、流行りの曲をカバーしたり、オリジナルソングをUPしたりして人気がうなぎのぼりだった。
 歌唱力もさることながら、トーク力も抜群で、千紗と違ってつぶしがきいた。
 もともとコスプレ繋がりで、以前コラボを持ちかけられたのだが、人と関わるのが苦手な千紗は断った。
 だが田吾作の勧めもあり、一度オンライン上でコラボした。
色々着こなしやSNSの運用方法などの有益情報を教えてくれて、アイの歌に合わせて千紗が演奏した動画はかなり伸びて、お互いの知名度が一気に上がったのだ。
 それから地味に交流が続いている。

 今日は都内某所で行われるコスプレイベントがあった。今日は顔出しNGの千紗はコスプレでは参加しないが、アイさんの荷物持ち兼SNSに上げるための撮影係ということでアシスタント代わりを頼まれた。
 人見知りの千紗がオフで人に会うのは、なかなか神経をすり減らすことではあったが、アイさんの押しの強さに負けてイベントに付き合っている。
 リアルで会うのは初めてだが、アイさんは一人でもしゃべり続けるので、一緒にいるのは楽だった。

「すごい人ですね」
「今日は一大イベントだからね。見てーみんなすごい衣裳凝ってる!」
「あーっ! ラトちゃんのコスかわいい!!」
「ところで、タマちゃん。動画は結構大胆なのに私服はすごい地味なんだね。てか化粧もしないの?」

 千紗は、家では高校時代のジャージで主に暮らしている。今日はねずみ色のTシャツと、近所のスーパーのワゴンで安売りされていたデニムを着ていた。

「動画の衣裳に手間とお金かけてるので、私服はなんでもいいんです。目立つのも苦手だし」
「みんな目立ちたくてしてるのにねぇ。ね、せっかくのその美貌もそのセンスだともったいないよ。大トロだってあら汁に入れたら良さがわかんないでしょ?」
「いや、私は元々アラみたいなもんでして」
「くぅーっ! もうやだぁ。顔隠してるから、こんなに可愛いと思わなかったよぅ。眼鏡取って素顔をお姉さんに見せてみ? うわ伊達メガネなの? 眼鏡はいいけど、これはダサすぎないか」

 アイさんは千紗から眼鏡を取ると、顔をまじまじと見た。

「こりゃ顔出したら世間がほっとかんぞ」
「勘弁してください」
「まぁ確かに色々リスクはあるからね。でも今日はかわいい一般人としてアシスタントしてよ。そこでちょっと服買って化粧してお洒落してからにしよ。ヘアアレンジもしてあげるから」
「で、でもお金が」
「今日の手伝いのバイト代ってことで。経費で落とすから。私登録者200万人だからね? 心配無用」

 強引に近くのアパレルショップに連れていかれ、今風の垢ぬけたデザインの服に着替えさせられた。慣れない細いヒールのシルバーのパンプスとそれに合うバッグも買ってもらう。
 淡い水色のシフォンブラウスに白いフレアスカート。自分では絶対に買わない組み合わせだった。

「足ながーい。顔小さい。化粧映えする顔だし、顔出ししたらトップ狙えるのにな。おっぱいだけであれだけ釣れてるのに」
「いえ。ある程度稼いだら引退するので」
「うーん。まぁそれが健全かも。引っ込み思案ぽいしね。今日は私の美人アシスタントってことで」
 
 アイさんにメイクをしてもらい、髪もゆるく巻いてもらうと、まるで別人だった。、鏡の前には別人がいた。

「うむ。我ながら完璧。コスプレしてない子は写真撮られないから安心していいよ。無許可で撮影は禁止されてるし」
「はい……確かに可愛いですね」
「ははっ! それくらい図々しくないとこの世界生き残れないよ」

 あくまで今日はアイさんの手伝いなので気楽だ。8等身美人のアイがコスプレすると、2.5次元という感じで迫力もあるしとにかく映える。
 アイさんがイベントに登場すると、いわゆるカメラ小僧がアイさんを取り囲んだ。

「おお、美人が二人も」
「こっちの子はアシスタントだから撮らないでねー」

 千紗は、彼らに混じってSNSにUPするための写真を撮影した。
 あちこち移動しながら、撮影しては、また別の衣裳に着替えたりてんやわんやだった。
 アイさんは有名人ということもあり、運営からの扱いもVIPだった。イベント用のステージでトークショーまでするらしい。

「なんだ、なんだ」
「すげー。アイが来てる」

 ステージの裏で待機していた千紗に向かって、アイさんがおいでと合図する。

「ね、ちょっと別のコスプレイヤーが体調不良で穴が空いたから、一曲歌って欲しいって言われたんだ」
「急ですね」
「千紗ちゃん、一曲引いてみない? ギターならあるからさ。確か弾けるよね」
「で、でも」

 ここで弾いたらまず写真を撮られてしまう。顔出しNGの千紗にとっては、衆人環視のライブは抵抗がある。

「お面とか色々あるから」
「それなら」

 いつも部屋に籠っての演奏しか経験がない千紗は、皆の見ている前でできるか不安だった。だが、アイさんの歌に合わせて演奏するのは楽しそうだった。
オンライン上で一緒に演奏した時も、鳥肌が立つほど楽しい経験だったのを思い出したのだ。一人は気楽だが、誰かと一緒になにかやる楽しさみたいなのもあるのだと知った。

「私が合わせるから。前にコラボした時の曲でいい?」

 アイさんに促され、一曲だけ演奏することになった。千紗は緊張と期待で武者震いした。
 ──失敗しませんように。


感想 1

あなたにおすすめの小説

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました

藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。 次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

ワケあって、お見合い相手のイケメン社長と山で一夜を過ごすことになりました。

紫月あみり
恋愛
※完結! 焚き火の向かい側に座っているのは、メディアでも話題になったイケメン会社経営者、藤原晃成。山奥の冷えた外気に、彼が言い放った。「抱き合って寝るしかない」そんなの無理。七時間前にお見合いしたばかりの相手なのに!? 応じない私を、彼が羽交い締めにして膝の上に乗せる。向き合うと、ぶつかり合う私と彼の視線。運が悪かっただけだった。こうなったのは――結婚相談所で彼が私にお見合いを申し込まなければ、妹から直筆の手紙を受け取らなければ、そもそも一ヶ月前に私がクマのマスコットを失くさなければ――こんなことにならなかった。彼の腕が、私を引き寄せる。私は彼の胸に顔を埋めた……