【完結】完璧上司の裏の顔~親の借金返済のため、内緒でエッチなコスプレで動画配信していたら、実は熱烈なファンだった上司に求婚された件

香月律葉

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エピローグ

未来へ

「ちょっと今日の演奏、力みすぎちゃったかな……」

 配信後、千紗がつぶやくと即座にコメントが並ぶ。

"Hello, I'm living in Singapore. I saw your street performance the other day and subscribed to your channel. Keep up the great work! I'm rooting for you."

「え、こっちの人も見てくれてるんだ。最近外国語の書き込み増えたなぁ」

『よかったよー。癒された』
『清楚な着物もよし。以前の過激なやつもたまに見たくなるけど』
『路線変えてもついてくよ』
『タマさんの演奏見て、私も楽器習い始めました』
『日本に戻ってきたらコンサートしてほしいなぁ』

 こちらに来て数か月。最近になり、動画配信業を再開した千紗だった。以前のような露出したコスプレはやめて、着物を着てやるようになった。
 海外の日本オタクのファンも増えて、地道に活動を続けていた。
 そして──一度はやめた動画配信を最近また始めたのだ。
 引退詐欺と言われないかびくびくしていたが、大半は歓迎するコメントで溢れた。露出はもうしない代わりに、着物を着たり、露出控え目のコスプレに路線を変更した。
 衣装がおとなしくなった分、技術は磨いているつもりだ。
 爆発的に伸びることもないが、安定してファンは増えている。

「お疲れ様。明日休みだし、バルコニーで一緒に飲もう」

 夫となった井村が、ワインとおつまみをもってやってきた。
 今はシンガポールのコンドミニアムに二人で住んでいる。夜景を見ながら風を感じて食べる夜食は最高だった。

「カプレーゼサラダと、野菜スティックにアボガドのディップ」
「相変わらずハイセンスですね。聞きなれないカタカナばかり」
「千紗ちゃんの好きなたこわさもあるよ。あともつ煮」
「なんか浮いてるけど和が恋しいから嬉しい」
「もう半年かぁ」
「まだ半年って感じだな。結婚式のあと、叔父さんの下ネタを酔った千紗ちゃんが止めてカオスだったのが懐かしい」
「お義母さんとお義父さん呆れてませんでしたか?」
「うちの親お笑い好きだから大丈夫」
「いやあれウケを狙ったわけでは……」
「ところで、例のプロジェクト、千紗ちゃんのおかげで順調だよ。苦手なのに人前出る仕事やってくれてありがとう」

 井村のプロジェクトに関係して、こちらのTV番組に出演したりもした。表に立つことはまだ苦手だが、今まで自分が世の役に立つようなことをしたことがなかったから、たまたま回ってきた使命だと思い、精一杯頑張ることにした。
 千紗が出演した動画の広告収益の一部が奨学金に充てられ、話題になり、取材も多数受けることになった。支援の輪は広がり、海外協賛企業も徐々に増えて国際的な取り組みになりつつある。
 基金は順調に増えて、来年からそのお金で学校へ通う子が出てくるという。

「いえ……私みたいな日陰者でも世の役に立てるなら、一肌でも二肌でも脱ぎますよ」
「いや、もう脱がないでね。ちゃんと着てても人気あるんだし」
「そういう意味では……。田吾作さん時代から、お世話になりっぱなしで、少しでも恩返しができれば、嬉しいです。私を選んでくれて、ありがとうございます」
「どうしたの? 突然」
「なんかやっぱり、出会えてよかったなって。最初はなんか意識高い系の苦手なタイプだと思ったんだけど、全然違いました」
「はは。千紗ちゃんどっか抜けてるから、ほっとけないなとは最初に会った時思ったよ」

 夫婦仲ももちろん良好で、要するに、順風満帆で幸せな日々を送っている。借金やらいじめやら、炎上やらでどん底だった日々も今となれば懐かしい。
 それに自分の力で逆風を乗り切った経験は千紗の自信になった。 

「やっぱり井村さんは運がいいんですよね。いい風を呼び寄せるというか。不運続きの私も付き合ってから運気UPしてるし」
「そうかな。そうだといいけど」
「あと……今日通知が来て、試験受かりました」
「おめでとう。受かるとおもったよ」

 高校を途中でやめた千紗だったが、こちらの音楽専門学校に通えることになった。語学がかなりネックだったが、井村に毎晩教わりなんとか合格できた。

「あと、お正月に帰国したらまたアイさんとコラボすることになって。キュービッド役したんだからそれくらいしてよねって言われました」
「お世話になったからなぁ。アイさんと千紗ちゃんなら、タイプ違うから引き立て合えるしいいんじゃないかな」
「楽しみなことが増えちゃってなんだか忙しい……。前は貧乏暇なしって感じの忙しさだったけど今は充実してます。この世に希望なんてありはしないって気分の時もあったのに、なんでか今は世界は光に満ちているような気がします」
「そうか。よかった」
「あっ、見て花火」

 千紗は立ち上がり、バルコニーに手をかけて夜空を見上げた。轟音とともに夜空に色とりどりの大輪の花が咲く。
 遠くから歓声が湧きおこるのが聞こえた。普段の夜景とはまた一味違う楽しさがあった。

「なにかイベントなのかな」

 身を乗り出して花火を見る千紗の肩を井村が抱いた。

「きれい。私の人生にこんなに素敵な夜が来るとは思わなかったな」
「これからも続くよ。続けよう」

 美しい夜景の上で花火が散る。涼やかな夜風が二人を心地よく包んだ。

美しい光が咲いては、また散っていく中。穏やかな時間を過ごす。夜景を眺めながら、千紗は幸せそうな表情で夫となった人の肩にもたれた。彼は彼女を優しく抱きしめ、互いの温もりを感じながら、幸せを噛みしめていた。

感想 1

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みんなの感想(1件)

ななママ
2023.05.01 ななママ
ネタバレ含む
2023.05.01 香月律葉

丁寧なご感想ありがとうございました!

参考になります。
ヒロインのキャラが濃くなりすぎて
しまいましたが楽しんでもらえたら
幸いです!

解除

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