思想で溢れたメモリー

やみくも

文字の大きさ
168 / 240
7章―B ー消墨編ー

168.追求の果ては……

しおりを挟む
      ー数分前ー

 俺達が模擬戦を行っていたところ、突如空が邪力に覆われた。そして、強烈な邪力が辺りに広がった。

抗「おい。嘶……。」

嘶「分かっている。……俺達のものとは比にならない。“奴”だ…!」

 サニイはこれを予想していたのか。違う、偶然だ。そうでなければ、彼は警戒体制でいるはず。
 結界の一枚も張られておらず、日のエネルギーが今漂い始めたため、急襲だったのだろう。

抗「………行くぞ。」

嘶「…ああ。」

 しかし、意思に反して身体は動かなかった。

嘶「は……?どうして……。」

 すると、途端に人間の記憶と邪種にされる瞬間の記憶が、脳裏にフラッシュバックした。

嘶「ぐ……ぐぁぁぁぁぁ!」








 力はあり、名誉はない。トップ争いにならないくらい差は歴然。
 何が楽しくて力を追求したのだろうか。底のない力を。

 教祖による邪種化。禁忌邪種:嘶として力を証明した。だが、その先にあるものは名声ではない。悲鳴だ。
 誰もが怯える存在。気が付いたらそうなっていた。それに何の疑問も持たずに、同類を増やすために邪力を分配した。
 しばらくすると、肉体・能力が変異した。俺の周りには増殖させた邪種や俺と同じように邪種に変えた存在が集っていた。一つの群れとなったのだ。
 その過程で、何人かの変異者に出会った。共通点は教祖に直接邪種にさせられた事だった。







 二十分ほど金縛りに囚われていた。隣にいる抗も同様だ。
 あまりの強さにここまで充満してくるエネルギーを感じ取れば分かる。サニイが押されている。莫大なエネルギーを用いた攻撃を相殺するのに、魔力の大半を使ったのだろう。
 彼は簡単にはくたばらない。それでもエネルギーが切れれば、ただの一般人だ。いつまでも継続戦闘する事は不可能。

嘶「ぐぁぁぁ……!動…けよ……!動け…よ……!」 

 身体が重い。動かそうと思った瞬間、圧力が掛かる。これは奴の能力なんかではない。本能が拒んでいる。

嘶「……判断を誤った。決意さえあれば、動けるというのに…!」

 最後に行った実戦はサニイとの戦い。そこそこの年月が経っている。
 これだけの期間が開いた中、ここまでエネルギーが伝達するような奴に挑みにいく覚悟、俺には……。

エサラ「二人共!」

 すると、エサラが目の前に現れた。

嘶「何をしている……加勢に行かなくては……」

エサラ「そのままお返しします。このままだと終わってしまいます。ウォーム・クラスが、アスト大陸が!」

嘶「……ッ!」

エサラ「……最初は皆、過去に葛藤して縛られていました。ですが、干渉しなかったら干渉されないなんて、そんな甘い世の中ではありません。私も、それを身を持って体感しました……。故郷は悪魔に襲われて、一夜で灰になりました。何の前触れもなく居場所を奪われた私は、小さく無力ながらも放浪しました。」






 熊に襲われた。もう駄目かと思った時、熊は焼かれてしまった。

サニイ「怪我はない?一人かい?」

 私とそんなに年齢は違わないのに、彼はとても落ち着いていて、強かった。







エサラ「ですが、彼に出会ってから変わりました。自衛を超えて、誰かを守るために強くなれたんです。……それでも、貴方達には及びません。私も、“もっと強かったら皆を守れるのに……”。」

 その言葉は、俺の心に突き刺さった。
そうだ。俺は何のために力を追い求めていたのか。こんな姿になってまで。
 見返すためか、名誉のためか。最初からそうではなかった。

嘶「……俺は………。」

 圧力が全て消え、身体が身軽になった気がした。すると、上手く回らなかったエネルギーが身体に一気に流れ始めた。

嘶「俺は……俺を認めてくれる人の役に立つために、ここまで登り詰めた…!」

 そして、俺は邪力を身体に纏い、主戦場アストロック遺跡群の方へと向かった。







エサラ「抗。嘶は……」

抗「ありがとな。あいつを引き出してくれて。」

エサラ「貴方は平気だったのですか?」

抗「まさかな。俺も本当の金縛り状態だった。ただ俺は普段から脅迫されていた身。隣で悶える嘶と比べれば、余裕はあった。」

エサラ「そうですか。……向かいましょう。」

抗「ああ。」

 そして、エサラと抗も戦場へと向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様を書いたストーリーです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...