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やみくも

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9章ー総力決戦編ー

215.混戦 高熱と矢

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 壁が崩壊すると、筋肉質の大柄な男が現れた。

パングス「おかしいな。三人分の気配があったような気がするが……小娘一人に押されたのか?名ばかりの雑魚ゴーレムだな。」

 そう言うと男は蒸気を部屋に充満させて、通信を阻害した。

バロン『……!通信が…』

エサラ「…ッ!バロン、バロン応答を…!」

パングス「無駄だ小娘。こっちも連絡が無いこたぁない。まさか頭の切れる智将が現地に居ないとはな。実際、采配で力量差がかなり縮んでいる。だがにぁ…通信が途絶えれば終いだろぉっ!」

 すると男は拳を固めて、私に一歩近づいた。臆さずに私は言った。

エサラ「確かに私達では力不足なところもあるかもしれません…。ですが、決して屈することはありません。見ていてください。今はまだ劣勢でも、いずれ逆転していくでしょうから。」

パングス「ガハハ…真の敵はリヴォリーターだけじゃ無かったという事だ。上等じゃあないか。俺がここを全滅させて、他の場所にいる手前の同胞共を動揺させてやらぁ!魔拳:スチームパンチ!」

 男は拳に高熱を纏い、殴りかかってきた。私はそれを回避したが、男がすぐ後ろに回り込んで、二発目が飛んできた。

パングス「遅い!」

エサラ「……ッ!」



 私はまた守られた。目前に迫りかけていた男の拳は、バーグもスもが足元を蹴り崩したお陰で、私に届くことはなかった。

パングス「チッ…手前ェ!まだ続ける気か!力の差を目の当たりにして、絶望していたじゃあないか!」

バーグス「そんなさぁ……いつまでも、うずくまっている訳がないだろ!言ったよな?“やりきる”と。しっかりトドメを刺さなかったパングス…お前の落ち度だ。」

パングス「ぐぬぬ…まぁいい。また潰せばいいだけだ!」

 するとパングスは高熱のパンチをバーグスに繰り出そうとした。
 バーグスは大地エネルギーを脚に纏って蹴りつけ、パンチの威力を相殺した。

パングス「互角か。さっきの技の余波があるみたいだなぁ!」

バーグス「だから時間を無駄にはしてられないんだよ。ルゥリム!通信を!」

ルゥリム「はい!」

 戦いながらそう指示すると、ルゥリムは風魔法で蒸気を払った。するとすぐにバロンとの通信は繋がった。

バロン『ありがとうルゥリム。エサラ…バシュノン討伐を再開する。バーグス、あとどれくらい持つ?』

バーグス「そんなに余裕はない!だが、そっちが終わるまでは何があっても持ち堪える!」


バロン『分かりました。エサラ、飛んでくる矢は全て落としてください。バーグスは周りを見られる余裕までは無さそうです。』

エサラ「了解。私はバシュノンに集中します。全体の状況把握は任せましたよ!」

バロン『任せてください。』

 私はハンマーに風を纏って跳び上がり、バシュノンに迫った。
 するとバシュノンは矢を拡散させて放った。ハンマーを横から振るい、放たれた矢を上へ吹き飛ばした。
 しかしバシュノンは手を止めず、次々に矢を放ってきた。

エサラ「槌術:スルースイング」

 私も距離を詰めつつ、矢の雨を打ち落とし続けた。けれども、途中で変則的な矢も混ぜてくるので、防ぐだけで精一杯だった。

エサラ「きりがない!これではいつか間に合わなく…!」

パングス「俺たちゃあ同時に相手するぜぇ!」

エサラ「…!」

 そんな時、高熱を纏ったパングスがバシュノンの前に現れて私を叩き落とそうとしてきた。

エサラ「槌術:パワース…」

バーグス「脚術:大戒転!」

パングス「ぐふぁっ!手前!」

 バーグスに横から蹴りを入れられて、逆にパングスが叩き落された。

バーグス「エサラの邪魔はさせない!」

エサラ「ありがとうございます。バーグス。」

バーグス「あいつは俺が抑える。気にするな。」

 そう言ってバーグスは追撃の踵落としを繰り出しながら着地した。


バロン『あの構えは…一気に距離を詰めてください!奴の真横が安全地帯です!』

エサラ「はい!」

 バロンの指示を受けて、私はハンマーにエネルギーを集中させながらバシュノンに迫る。
 するとバシュノンは弓の角度を少し上にずらして放った。

バシュノン「魔術:アサルトバンビー」

 放たれた矢は上空で弾けて、弾けたところから四方に分裂して降ってきた。
 落下速度的にはバシュノンに直進で問題なさそうだったので、私はハンマーを振りかざす準備をした。

バシュノン「魔術:アブソリュート」

エサラ「…咄嗟の単発攻撃…!」

バロン『避けなくていい!最低限四肢に刺されなければ大丈夫です。』

エサラ「なら…槌術:パワースイング」

 一度壁を蹴って勢いをつけて、腹部に矢を打たれながらも、私はハンマーを思いっきり振りかざした。
 攻撃は見事バシュノンに直撃して、奴は後ろの壁を貫通して吹っ飛んだ。

エサラ「はぁ…はぁ…これで……」

 そう思ったのも束の間、壊れた壁の地煙の中から素早い矢が飛んできた。
 
エサラ「…まだ!うっ!」

 一発目は間一髪で避けられたものの、今度は十本に拡散してきて、被弾してしまった。

バロン『エサラっ!』

エサラ「私は…大丈夫です。…奥にいるバシュノンの様子は?」

バロン『見立てた通り、耐久力は乏しいようだ。エサラの一撃で骨折して、動きが鈍ったようです。…ただ……』

エサラ「射撃の精度には影響しない……」

バロン『そうです。ですが幸い、オリジナルの彼の脅威度を底上げしていた“流血矢”やその他の能力は使えないみたいだ。…ただこちらも満身創痍、確実に当てにくる矢というだけで事故率が上がる。』

エサラ「あと一撃で沈みますよね…勝負を着けてきます。」



 相手はもう瀕死。そう思って追撃を浴びせにバシュノンの元へ向かったところ、上から大剣と小型ミサイルの雨が降ってきた。

エサラ「……!あれって…!」

バロン『ギガント…!まさか自己修復したのか…?すまないエサラ、修復に気づけなかったのは俺の……』

エサラ「バロンさんのせいではないです!槌術:パワースイング!」

 私は助走をつけて跳び上がり、ギガントの大剣と真っ向から打ち合った。

エサラ「ぐっ……重…たい…」

 流石に力の差が大きすぎて、一方的に押されてしまい、床と大剣に挟まれてしまった。

バロン『そのまま耐え続けるにも限界がある!ギガントの力が弱まったタイミングで大剣を押し上げて、その場を離れてください!』

エサラ「分かってる…けど……」

 頭では分かっていても、それを実行できる程の自身も能力も足りない。一触即発の状況だからこそ、何か行動を起こさなければならないのに。

バロン『くっ…せめて俺がその場に居れば、能力で奴の注目を引くことができるのに……注目を引く?あっ!』

 するとバロンは何か閃いたようで、私に指示した。

バロン『無線機を投げてください!』
 
エサラ「えっ…?」

バロン『大丈夫です。自爆させる訳ではありませんから。』

エサラ「…えいっ!」

 指示通りに片手で無線機を上空に投げた。次の瞬間、無線機からけたたましいサイレンが鳴り響き、ギガントの力が一瞬だけすっと抜けた。
 その一瞬に隙かさず大剣を押し上げ、おまけにハンマーでギガントの足元を崩した。

エサラ「はぁ…助かりました。私の鼓膜にも効きましたが……」

バロン『ちなみに音源はこっちにありますからね……。何はともあれ、無事で良かった。援軍も来たみたいだし。』

エサラ「援軍?……!」

 ガントレット以外の装備はほぼ直った状態で、グラッシェが左肩を押さえながら歩いてきた。

グラッシェ「俺を呼んだか…お前ら。」
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