【完結】 I は夏風と共に、詩を綴る

やみくも

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2章:ジャンボ海水プール

#8.流水と激流

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 水が撒かれて歩けるようになり、僕達はプールに身体を浸からせた。
 
 「冷たっ!」

 「まだ身体が慣れてないからな。出る頃には外の方が冷たくなってるだろうけど。」

 「いや冷静なこと言ってるけどさ……めっちゃ身体震えてるじゃん!」

 「悪いかよっ!」

 「冗談冗談。」

 「何が……?」

 学校では絶対に見せないような困惑した表情を見せる琉威は完全にプライベートモードの様子。
 生徒会の仕事も頑張っているし、彼は何処か疲れている雰囲気もあった。アクティビティで申し訳ないけど、しっかりと休暇を取ってほしい。
 
 「何でもないよ。今日くらいは色々忘れてもいいと思うな……」

 「……?」

 そう濁した返しをしてプールサイドに目にやると、僕達より少し後ろを歩いていた東風さんが辿り着いたようだ。

 「水の温度はどうですか?」

 「うーん…ちょうどいいくらいだと思うよ。」

 「そうですか………ひゃっ!冷たいっ!」

 プールサイドに座って足を水につけると、想像以上に冷たかったのかピクリとした。
 
 「あはは……まぁ入っていれば慣れると思うよ?琉威もこんな感じだし。」

 「ん?まぁそうだな。瞬間的なものですぐ馴染む。」

 「あ…本当ですね……こう話している間に慣れてきた気がします……」

 顔色的にもかなり落ち着いてきたようで、足を深く浸からせて目線が同じ高さになった。

 「とりあえず軽く身体を動かそうか……」

 「そうですね、私もプールに入るの一年ぶりなので……」

 日本最大級と称されるここに来たということは、勿論ウォータースライダーとかにも乗っておきたい。
 しかし、水の抵抗を受けることが丸一年なのでまだプールの身体になりきれていない。
 プールの身体になってからの方が楽しめるため、ちょっと水慣らしをすることにした。







 「なぁ二人とも……運動は苦手か?」

 体感5分ぐらいゆったりとした水に身体を委ねていると、突然琉威はそう質問を投げ掛けてきた。

 「え?全然苦手じゃないよ?」

 「私も得意とは言えませんが、苦手ではないです。」

 「そうか……もう身体は十分に慣れたはず。ついて来い。」

 そう言って彼は流水プールを上がり、こちらの様子を伺いながら何処かへと歩いていった。

 「…琉威さん行っちゃいましたけど追わなくていいんですか?」

 「追うには追うけど……彼があのキャラになった時は大体裏があるけど大丈夫?」

 「裏……ですか?」

 「うん。…あ、別に悪いことを企んでる訳ではないと思うよ。面白いこと……なのかな?」

 確か去年に訪れた時は、昼食直前にスチールドラゴンに連れて行かれた。楽しかったけど、お陰で喉に飯が通らなかった。
 今になってはそれも唯一無二のいい思い出になった気がしてる。だから信頼して乗っかっている節はある。

 「面白いことですか。……折角来たなら色々体験しておきたいですし、行きましょう。」

 「だね。」

 僕と東風さんもプールサイドに上がり、遅れて彼について行った。







 案の定と言ったところだ。さっきまでのようにのんびりなんてできない。アクティビティを全力で楽しませようとしてくる。

 「入場から10分でハードル上げてくるね……」

 「分かります……琉威さんは運動が好きな方なんですか?」

 「僕よりはね。絶叫マシンとかが好きなタイプの人だよ。」

 今、目の前にある列は超激流プールの列。既に迫力が違う。
 そうこう話していると、琉威と合流できた。

 「お、二人とも追いついたか。喜べ、予想よりも待ち時間が少ないぞ。」

 「待ち時間はあってないようなものでしょ。優先チケットがある以上ね……」

 「ああ、お金の力は偉大だからな。」

 「生徒会会計がそれを言うんですね……」

 琉威の発言に、東風さんは少し引き気味の様子だった。確かに彼の金銭感覚は何処かズレている。もちろん、プライベートに限った話ではあるが……。

 しばらく順番を待ち、遂に来てしまった。並びながら見ているだけでも、さっきの比にならないことは一目瞭然だ。
 
 「何で人々はスリルを求めてしまうんだろうか……」

 「ここまで来て何言ってるんだ?去年何を経験したのか忘れたか?」

 「感覚が忘れてないのが怖いね。」

 「はぁ……俺は先行くぞ。列が詰まるから早く来いよ。」

 見かねた琉威は先に水流に乗り身を委ねた。

 「相葉君、行きましょう。どのみち引き返せないところまで来ているので……」

 確かに東風の言う通りだ。時間を長引かせるわけにはいかない。

 「はぁ…腹をくくりますか……」

 「はい。」

 僕達も身体を浮き輪に任せ、流れ始めた。開幕から速度の違いを痛感させられ、何故これを好む人が多いのかますます分からなくなった。
 






 「流石にグダり過ぎだろ……苦手なら苦手って言えよ……」

 鬼のような速さで上下する水流を何とか完走したものの、琉威からは完全に呆れられた様子だった。

 「限度があるんだって!」

 「限度が低い……」

 彼は小さくそう呟くが、全然聞こえている。むしろわざとな気がしてならない。
 
 「というか東風さんはけっこう楽しそうにしてたな。」

 「は…はい。やってみたら案外……」

 横を見ると東風さんの瞳は明らかにワクワクしている様子だ。
 すると、今度は東風さんから提案してきた。

 「じゃあ次は……あれに乗りましょう!」

 そう言って東風さんが指を指したのは、ブーメランツイストだった。
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