多面性を持つ最強暗殺者はただ日常を望む

やみくも

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Chapter Ⅳ:Stealth

No52.Calmness

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　相次ぐ失踪事件。共通点はある会社の系列店舗に訪れた著名人及び有名人。
　ライブジャック事件以前から定期的に発生していたが、徐々にそのペースは速まってきていた。

　「全く……何をそんなに手こずっているのだ柊！」

　我々の苦労を知らない旧友が一人。実際、政治家も標的にされているらしいので焦る気持ちも分かる。

　「範囲が広いから捌く情報が多いんだ。痕跡が残っていなければ手こずるのも当然。」

　「それもそうか……。どちらにせよ、早めの対応を頼むぞ。」

　そう言って、清心は帰って行った。
　彼の傲慢な態度には慣れたものだが、早めの解決を望むなら少しは何か行動してほしいものだ。
　すると、扉がノックされて唯一の癒しが入って来た。

　「莉緒菜か。」

　「何ですかお父さん。急に呼び出しだなんて……。」

　聖薇君が孤高から聞いた話によると、Leviathan追跡が、サイレンスのサーバーとライブ用のサーバーを操っていたらしい。
　内通者もどきとの連絡が途絶えて失踪が加速していることを考えると、追跡がその件に加わった事がわかる。つまり、全面的にLeviathanが関与しているのだ。
　株式会社ポピュラーラブ・スイートフラグが何者かに買収されたという情報は持っている。こんな大掛かりな事をしていてもミステリアスなのは、奴らしかこの界隈には居ない。
　
　「系列店舗への偵察を頼みたい。励領君を連れてな。」

　「分かりました。」

　そう言って莉緒菜は司令室を後にした。
　娘をあまり不確定要素の多い所に出したくないが、石川さんはスナイパーなので室内には出せない。
　励領君は強いが、保険がいないのはリスキーなため、莉緒菜が行かざるおえないのだ。

　俺は司令から連絡を受け、川辺で待機していた。ライバルがLeviathanの一人を実質的に撃破したと報告を受け、俺もいち早くこの長引いた失踪事件の真相に迫りたいところだ。
　しかし現実は何も進んでいない。三週間も経ったとは思えないほど、痕跡が無い。
　そうこう考えていると、莉緒菜が来た。

　「行きましょう……。」

　「ああ。」

　全店舗の店内と周辺を隅々までチェックしたが、盗聴器すら無い。監視カメラも店内に元々あるものしか無く、店長も会社から何か言われている様子では無さそうだった。

　「結局音沙汰無しか……。」

　「そうだね…。今日はデートありがと。」

　「デートじゃなくて任務な？」

　彩良のテンションが莉緒菜にも伝染している気がする。マジで周りがどんどん面倒な奴になっていく。
　それに呆れながらも、俺達は解散して帰宅した。

　最近テロが落ち着いている。嵐の前の静けさなのかは分からないけど、Orderが率先して何か捜査しているらしい。
　サイレンスの平均年齢は二十代前半だ。それでも、自分達のような学生も多い。
　先輩方が色々やってくれているようで、自分と夕憧は変わらない日常を送っていた。
　学業も優先してくれるのがサイレンスの特色だが、元々どちらにおいても優秀な Mythologyの先輩方やOrderの方々は引っ張りだこのようで、多忙の日々を送っているらしい。
　……罪悪感が少しばかり残る。

　「おっはよー！……あれ？元気ないじゃん。どしたの？」

　色々考えながら席に座っていると、明璃さんが声を掛けてきた。

　「……何もないよ。」

　彼女は何故そんなに元気なのだろう。先日、姉の恋音が出ていたライブ中にテロ？が起った事はニュースで見たし、本部からも聞いた。
　何か聞こうとも思ったが、もしかしたら触れられたくない可能性もあるので、口は閉ざす。

　「…何か暗いね。私の事は心配しないでいいから……。」

　「……ごめん。思い出させちゃったよね。」

　「大丈夫。謝らないで。凍白さんは何も悪くないから…。」

　余計に曇らしてしまった。良かれと思った事が裏目に出るのはよくある事だし仕方が無いが、その後の対応はしっかりとしたいところだ。

　「明璃さん。今週末に遊びにいきませんか？」

　楽しい事をするのが一番。恋音さんは傷ついたわけでは無い。ただ、何も知らされていないのは事実。
　その場に居合わせていたと噂の聖薇先輩とは連絡が途絶えており、同行していた七瀬先輩は相変わらず沈黙を貫いている。
　関与させたくない雰囲気が成り立っている。

　「行きたいのは山々だけど、丁度イベントがあって………あ！」

　突如、彼女は何か思いついたように声を上げた。

　「今週末店に来てよ！折角だしさ！」

　「分かった。」

　断る理由は何処にも無い。自分がちょっと雰囲気を悪くしてしまったから、そのお詫びと券消費もかねてよい機会だ。
　こうして、約束が成立した。

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