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Chapter Ⅳ:Stealth
No53.Opinion
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とある公園の噴水広場。人が一番少ない日の出の時間に、俺は呼ばれていた。
「おーす歪。休暇中は何も連絡してこないから心配したぞ。」
「悪いな。事件の処理で忙しかった。丁度一段落ついたところだ。」
確かに何も連絡しないのは悪手だったかもしれない。俺達は暗殺者。逆恨みで命を狙われるなんて割とある。
大抵は返り討ちにしているが、どんな強い人でも奇襲でタコ殴りにすれば弱い者いじめだ。
「こんな朝から早くから呼ばれた理由は理解しているつもりだ。」
「聞かせてくれるんだな。」
「隠す理由も無いし。」
旋梨に俺は今回の全貌について話した。ライブジャックの犯人は撫戯とLeviathanのハッカーという事、元マネージャーのせいで今回の事件に繋がった事、彼らが新しい人生を歩み始めたという事。
「……って感じだ。」
「大変だったな。」
「ああ。だが、良い情報を手に入れた。」
スマホに撫戯の撮影した資料を見せた。
「こ、これは……!…良い土産だな。」
資料の内容は現在多発している失踪事件の原案書だ。
Orderが長い事調べているそうだが、何も手掛かりを掴めていないのだという。
その理由もこの資料を見れば納得できるものだ。
「いやぁこれは無理なわけだ。……やべぇなLeviathan。」
系列店舗全ての店員の名札に爆弾を仕込んで、標的と接触した際に大人しい爆発。
しかも一目がない場所への誘導もバッチリとなればそりゃ証拠が残らない。死体処理が速すぎる。
そもそも、店員は操り人形であって、暗殺する気など無いどころか頭にもよぎらない。
「奴らは買収した親会社を住処にしているらしい。目に見えない悪魔を視界に捉えたって事だ。そして今週末、イベントが一斉開催される。……奴らなら間違いなくここで派手にやるはずだ。」
「なるほどなぁ。攻めに集中する時、防御が疎かになりやすいから狙い目ってとこか?」
「ああ。司令にも提案書は出した。旋梨は現状だと攻めになるから、良い手段考えておけよ。」
「いつだってその気だ。」
日もかなり昇ってきたので、俺達はそのまま学校へと向かった。
放課後、久しぶりの緊急招集が掛かった。MythologyとOrderこの二つが呼ばれたという事は、間違いなくあの件の会議だろう。
「全員集まったか。諸君、先程送信した資料には目を通したかい。」
撫戯の資料を元に、柊司令が作戦内容を記入したものだ。
正直、奴らが変わった行動を取らなければ、これで嵌めれる。しかし、それでも苦戦はするだろう。
「まさか、こっちが早三週間かけて何も掴めなかった事を個人的に一件解決してから成し遂げるとはな…。あんたにはやっぱり敵いやしない。少なくとも今はな……。」
「言うようになったな。」
話が少し脱線したが、俺は司令に代わって作戦内容の細かな部分を説明した。
「……そんな作戦だ。司令からの同意も得ている。」
そう言って司令に目を向けると、彼は印鑑を既に用意していた。
「異議がある者は……。」
見た感じ全員納得している様子だ。俺は作戦書に印鑑を押してもらい、内容が確定した。
「解散でいいですか?司令。」
「構わない。」
そうして、俺達は解散した。
作戦自体に異論は無い。でも、自分には絶対にこれだけはすべきという事があった。
もしかしたらそれは余計に危険に晒す事になるかもだけど、知ってて見て見ぬふりは出来なかった。
「聖薇先輩。」
待ち伏せして聖薇先輩を呼び止めた。
「夜空か。何かあったか?」
「自分を今回の作戦で、防衛に当ててくれませんか。」
すると聖薇先輩は複雑そうな表情を浮かべた。自分は対複数よりも判断力を活かした敵陣での戦闘の方が柔軟に動ける。
防衛でも大事なスキルだが、予め情報を抜いた防衛作戦なら、ある程度の知能があれば誰でも可能だ。
やっぱり無茶かと思ったけど、予想外の反応が返ってきた。
「上下関係ってさ、意識しなくても勝手に意識してしまうものなんだよな。華隆さんはそんなの気にしなくて良いと言ってたけど、俺も少し遠慮はあった。」
確かにそんな事もあった。慈穏先輩と葉桜先輩は歳が誤差とは言えなかった。
大人になれば誤差なんだろうけど、学生にはやはり壁がある。
「……よく意見したな。考慮してメンバーは選ぶとするよ。お前なら、犠牲者ゼロも夢じゃないかもな……。」
「叶えますよ。先輩の念願を…!」
「別に取り引きじゃないんだが……まぁ任せたぞ。」
こうして無事に防衛に務める事になった。誰一人……明璃は絶対に守る。
「明日か。楽しみだな。広告も貼りまくったし、良い餌が釣れるだろう。」
「各種有名サイトの広告も上書きしてやったよ。」
「流石は二人だ。僕は仕事しつつ偵察しつつになるけど……健闘を祈るよ。」
明日、見えない悪魔はテロなんて比じゃない物理的な情報戦を決行する。
「おーす歪。休暇中は何も連絡してこないから心配したぞ。」
「悪いな。事件の処理で忙しかった。丁度一段落ついたところだ。」
確かに何も連絡しないのは悪手だったかもしれない。俺達は暗殺者。逆恨みで命を狙われるなんて割とある。
大抵は返り討ちにしているが、どんな強い人でも奇襲でタコ殴りにすれば弱い者いじめだ。
「こんな朝から早くから呼ばれた理由は理解しているつもりだ。」
「聞かせてくれるんだな。」
「隠す理由も無いし。」
旋梨に俺は今回の全貌について話した。ライブジャックの犯人は撫戯とLeviathanのハッカーという事、元マネージャーのせいで今回の事件に繋がった事、彼らが新しい人生を歩み始めたという事。
「……って感じだ。」
「大変だったな。」
「ああ。だが、良い情報を手に入れた。」
スマホに撫戯の撮影した資料を見せた。
「こ、これは……!…良い土産だな。」
資料の内容は現在多発している失踪事件の原案書だ。
Orderが長い事調べているそうだが、何も手掛かりを掴めていないのだという。
その理由もこの資料を見れば納得できるものだ。
「いやぁこれは無理なわけだ。……やべぇなLeviathan。」
系列店舗全ての店員の名札に爆弾を仕込んで、標的と接触した際に大人しい爆発。
しかも一目がない場所への誘導もバッチリとなればそりゃ証拠が残らない。死体処理が速すぎる。
そもそも、店員は操り人形であって、暗殺する気など無いどころか頭にもよぎらない。
「奴らは買収した親会社を住処にしているらしい。目に見えない悪魔を視界に捉えたって事だ。そして今週末、イベントが一斉開催される。……奴らなら間違いなくここで派手にやるはずだ。」
「なるほどなぁ。攻めに集中する時、防御が疎かになりやすいから狙い目ってとこか?」
「ああ。司令にも提案書は出した。旋梨は現状だと攻めになるから、良い手段考えておけよ。」
「いつだってその気だ。」
日もかなり昇ってきたので、俺達はそのまま学校へと向かった。
放課後、久しぶりの緊急招集が掛かった。MythologyとOrderこの二つが呼ばれたという事は、間違いなくあの件の会議だろう。
「全員集まったか。諸君、先程送信した資料には目を通したかい。」
撫戯の資料を元に、柊司令が作戦内容を記入したものだ。
正直、奴らが変わった行動を取らなければ、これで嵌めれる。しかし、それでも苦戦はするだろう。
「まさか、こっちが早三週間かけて何も掴めなかった事を個人的に一件解決してから成し遂げるとはな…。あんたにはやっぱり敵いやしない。少なくとも今はな……。」
「言うようになったな。」
話が少し脱線したが、俺は司令に代わって作戦内容の細かな部分を説明した。
「……そんな作戦だ。司令からの同意も得ている。」
そう言って司令に目を向けると、彼は印鑑を既に用意していた。
「異議がある者は……。」
見た感じ全員納得している様子だ。俺は作戦書に印鑑を押してもらい、内容が確定した。
「解散でいいですか?司令。」
「構わない。」
そうして、俺達は解散した。
作戦自体に異論は無い。でも、自分には絶対にこれだけはすべきという事があった。
もしかしたらそれは余計に危険に晒す事になるかもだけど、知ってて見て見ぬふりは出来なかった。
「聖薇先輩。」
待ち伏せして聖薇先輩を呼び止めた。
「夜空か。何かあったか?」
「自分を今回の作戦で、防衛に当ててくれませんか。」
すると聖薇先輩は複雑そうな表情を浮かべた。自分は対複数よりも判断力を活かした敵陣での戦闘の方が柔軟に動ける。
防衛でも大事なスキルだが、予め情報を抜いた防衛作戦なら、ある程度の知能があれば誰でも可能だ。
やっぱり無茶かと思ったけど、予想外の反応が返ってきた。
「上下関係ってさ、意識しなくても勝手に意識してしまうものなんだよな。華隆さんはそんなの気にしなくて良いと言ってたけど、俺も少し遠慮はあった。」
確かにそんな事もあった。慈穏先輩と葉桜先輩は歳が誤差とは言えなかった。
大人になれば誤差なんだろうけど、学生にはやはり壁がある。
「……よく意見したな。考慮してメンバーは選ぶとするよ。お前なら、犠牲者ゼロも夢じゃないかもな……。」
「叶えますよ。先輩の念願を…!」
「別に取り引きじゃないんだが……まぁ任せたぞ。」
こうして無事に防衛に務める事になった。誰一人……明璃は絶対に守る。
「明日か。楽しみだな。広告も貼りまくったし、良い餌が釣れるだろう。」
「各種有名サイトの広告も上書きしてやったよ。」
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