多面性を持つ最強暗殺者はただ日常を望む

Chapter Ⅳ:Stealth

No55.Open

　午前十時。開店した。私は少し離れた場所から様子を伺う。
　その辺で捕まえたスパイを客として忍ばせて、私は外部からの攻撃が無いか、全体の指揮を行っている。

　「無事オープン。まだ何も起こってないよ。」

　『了解。こっちも変わりなし。』

　株式会社ポピュラブ周辺で待機する後輩君達に状況を報告した。
　あの誘拐犯との戦いを思い出す任務内容だ。







　葉桜さんから情報は届いた。会社周辺にはタレットが何台も設置され、要塞として魔改造されていた。
　もうこの会社はただの基地になったと言っても過言では無い。

　「………俺、旋梨、愁で惹きつける。Orderに連中との交戦を任せてもよいか？絆。」

　「勿論。……あの悪魔をぶっ潰せるチャンスだからな。」

　普段から結構冷酷さがあるが、まだ挑発したりするだけの余裕がある絆とは一変、今日は一段と殺意に満ちていた。
　こっちでは確実に死人が出るだろうが、今は平和を謳える状態では無い。
　俺は、俺達は暗殺者としての本気の一面のみを表に出す。







　時刻だ。僕はスマホでSNSを確認する。客も話題性も足りている。後は獲物をどう釣るか、どうその状況を作るかだ。
　ある程度目星は付けて吹き込んだが、あくまで純粋さに漬け込んだまでだ。こちらから操れるわけでは無い。
　
　「………映人。現在地が渋谷になっている奴に広告を送信できるか。」

　『可能。』

　「承知。」

　すると通話が切れた。とにかく話題を作るためには人の目に宣伝を植え付けるしかない。
　東京の街を歩き回り、人の流動を確認して店に呼び寄せるための策略を映人に報告する。
　何度もこの関東を出入りしている僕にとっては、一切怪しまれる事が無い簡単な仕事。
　誰の目にも僕が暗殺者とは重ならない。まさに、生きる盗聴器だ。







　開店した。自分は割と前列だったため、すぐに入店できた。

　「お帰りなさいませ！ご主人様！」

　早速メイドさんが出迎える。イベント内容は値段が割り引きされているのと、何か企画があるらしい。　
　他の店舗は愛沙先輩が指揮してくれるそうなので、自分はこの店に専念する。
この店はメイド喫茶で一番規模がでかく人気だ。設備も良いから、コードネーム追跡と呼ばれるLeviathanにとってはカモりやすい場所だ。
　大量虐殺が狙いなら、動員数も多いから辻褄が合う。

　こんな場所を一人で守り切れるのか、そんな心配が心を煽るが、自分の決意を信じて警戒する。

　「あ、来てたんだ！凍白さん！」

　客やメイドさんの声が環境音として騒々とする中、その声ははっきりと届いた。

　「ご主人様じゃないの？」

　「何？言われたいの？」

　ニヤニヤしながらからかってくる明璃。ただ仕事の催促をしたに過ぎないんだが。

　「ご主人様！今日は一日宜しくね！……独占状態で……ね？皆それでいいー？」

　そう言って明璃は沢山の客達にそう呼び掛けをする。人気No1がそんな事言って自分が叩かれないのか心配になるが、客達は何故だが食い気味だ。
　反対するどころか、肯定する人しか現れない。……今日は過去一疲れる予感がするよ。







　「……来てる。白薔薇も紅月も。」

　「面倒な置き土産されたものだ。……いい機会だ。俺が全員潰す。映人は店のタイミング頼んだ。」

　「任された。」

　裏をかき、その裏をかく。暗殺者対暗殺者は、どれだけ予想外の行動に出れるかの戦いだ。