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Chapter Ⅳ:Stealth
No56.Contact and outwit
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路地裏。賑やかい大通りの陰で、怪しい人物が身を潜めていた。
「滲襲さーん。」
「来たね。早速だけど、コードネーム冬夜にこれを渡せ。できるだけ怪しまれずにね。」
「これは何ですか?」
「秘密。そいつは僕の仲間で、命を狙われているんだ。多分あの店に居ると思うよ。」
そう言って底沼は看板を指差した。
「はーい!じゃあ行ってきます。」
呼び出された女は、そのメイド喫茶にへと向かった。
コードネーム底沼の由来は、他人に自分を依存させ、意のままに操ること。その彼の特技こそが誰も抜け出せない沼なのだ。
最強ホストの一面も兼ね備える彼は、東京の街でさえも舞台に暗躍しているのだ。
「向かわせた。集中的にそこを墜とすよ。Mythologyの若い芽はさっさと摘むべき。」
『分かった。接触操作は任せろ。甘採は他の店の監視を引き続き。』
「了解。」
通話を切ると、甘採はまた大通りの人混みに紛れていった。
午前中、特に何事も無く平和に過ごせた。しかし、聖薇先輩から『慌ただしい。何か仕掛けるかもしれない。』とメールが送られてきたため、油断は出来ない。
現在、十二時。十三時から午後の部が始まるため、事前情報の通り失踪が起こるなら今だ。
そして、奴らの傾向は関東圏で影響力のある人物や地位のある警察を狙っている。奴らの視点に立ってみると、今一番カモれる消したい人物は自分だろう。
武器は忍ばせてある。警戒も一切怠らない。……どこからでも来い。
「じゃ、一発やってみるか。」
甘採が光弾を放つと、溢れかえるほどの人は一気に気絶した。しかし、サングラスを咄嗟にかけて逃れた人々も居た。
「範囲渋谷。自由に荒らせ。」
そう声を挙げると、立っていた人々はライフルを取り出し、乱射し始めた。
渋谷ジャック。テロの一環と思われるのが当然の反応だろう。
しかし、その指示だけして甘採はひっそりと去って行った。
「ビル屋上から警察やサイレンスの状況を探る。どうせスパイが客の中にいるだろ?炙り出すぞ。」
『こちらは冬夜を集中的に潰す誘導を今から行う。』
「承知。で、八は何している。」
『白薔薇と紅月が来た。まだ何もしていないが、念のため警備に入らせた。』
「そっちは任せても良さそうやね。こっちは当初の目的を果たすぞ。」
『分かってる。』
……銃声が聞こえ始めた。ここにテロを被せるなんて資料は無かったので、こちらの動きが警戒されている事は確かだ。
ただ、これは罠で離れた所を襲うのは確かだろう。それでも、分散の択を迫るだけで、どちらでも殺人を犯す可能性は捨てられない。
とりあえず、柊司令に連絡してみる。
「こちら葉桜。渋谷でテロ発生。指揮官は居らず自由に動いていると見られます。」
『了解。その件は本部に任せたまえ。君達はポピュラブの系列店舗から目を離さぬよう。』
「承知しました。」
通話を切り、私はスパイに続行の連絡を入れた。これで確信した。Leviathanは私達の翻弄を狙っているのかもしれない。
となると、向こうで待機している後輩達が心配だ。潜入には成功しているのか。この連絡が入らなかった事を考えると、社内でも把握出来ていない事を起こしている別行動者が居るのかも。
俺達とOrderは分散潜入を開始した。外から遠隔で情報を抜けると良かったが、電波妨害されてしまった。
ここら一帯がLeviathanの回線以外にアクセス出来ないように改造されているようだ。
「Orderと完全に分離したな。ブレーカーを一旦落としにいくぞ。そこを待ち伏せして奴らを撃つ。」
「「了解。」」
サーバーさえ破壊すれば、関東と繋がる手段は一時的に途絶える。
あっちに直接暗殺する者が居ない限りは、大丈夫だ。仮に居たとしても、サイレンスには沢山のチームがある。タコ殴りにすれば良いだけだ。
昼休み。午後の部が始まる前の時間だ。自分は明璃に呼ばれて店横に来ていた。
「疲れたぁ!」
「踊りっぱなしだもんね。」
姉に似たのか歌も踊りも上手だった。また午後からもやるなんて、凄い体力だと思う。
そういえば、観覧中に隣の客から何かカードを握らされた。怪しいと思ったが、得体が知れないが故捨てられない。
そっとポケットに入れようとした時……。
「おぉ!相性診断券持ってるんじゃん!」
相性診断券?この店の仕様は何か珍しい。明璃は説明し始めた。
「そこに書かれたQRコードをスマホで読み取ってみて。そしたら診断できるから。」
押されるがままに行おうとした時、自分は気付いた。紙に見せかけた材質をしているが、何か重い。
これ自体がチップになっていて、スマホから個人情報を抜けるものかもしれない。
そうでないにしろ、監視カメラが届かないこの場所で、奴らがチャンスを見つけるには、何らかの方法で干渉する必要がある。
どうやら、都合の良すぎる道具を押し付けられた。
「滲襲さーん。」
「来たね。早速だけど、コードネーム冬夜にこれを渡せ。できるだけ怪しまれずにね。」
「これは何ですか?」
「秘密。そいつは僕の仲間で、命を狙われているんだ。多分あの店に居ると思うよ。」
そう言って底沼は看板を指差した。
「はーい!じゃあ行ってきます。」
呼び出された女は、そのメイド喫茶にへと向かった。
コードネーム底沼の由来は、他人に自分を依存させ、意のままに操ること。その彼の特技こそが誰も抜け出せない沼なのだ。
最強ホストの一面も兼ね備える彼は、東京の街でさえも舞台に暗躍しているのだ。
「向かわせた。集中的にそこを墜とすよ。Mythologyの若い芽はさっさと摘むべき。」
『分かった。接触操作は任せろ。甘採は他の店の監視を引き続き。』
「了解。」
通話を切ると、甘採はまた大通りの人混みに紛れていった。
午前中、特に何事も無く平和に過ごせた。しかし、聖薇先輩から『慌ただしい。何か仕掛けるかもしれない。』とメールが送られてきたため、油断は出来ない。
現在、十二時。十三時から午後の部が始まるため、事前情報の通り失踪が起こるなら今だ。
そして、奴らの傾向は関東圏で影響力のある人物や地位のある警察を狙っている。奴らの視点に立ってみると、今一番カモれる消したい人物は自分だろう。
武器は忍ばせてある。警戒も一切怠らない。……どこからでも来い。
「じゃ、一発やってみるか。」
甘採が光弾を放つと、溢れかえるほどの人は一気に気絶した。しかし、サングラスを咄嗟にかけて逃れた人々も居た。
「範囲渋谷。自由に荒らせ。」
そう声を挙げると、立っていた人々はライフルを取り出し、乱射し始めた。
渋谷ジャック。テロの一環と思われるのが当然の反応だろう。
しかし、その指示だけして甘採はひっそりと去って行った。
「ビル屋上から警察やサイレンスの状況を探る。どうせスパイが客の中にいるだろ?炙り出すぞ。」
『こちらは冬夜を集中的に潰す誘導を今から行う。』
「承知。で、八は何している。」
『白薔薇と紅月が来た。まだ何もしていないが、念のため警備に入らせた。』
「そっちは任せても良さそうやね。こっちは当初の目的を果たすぞ。」
『分かってる。』
……銃声が聞こえ始めた。ここにテロを被せるなんて資料は無かったので、こちらの動きが警戒されている事は確かだ。
ただ、これは罠で離れた所を襲うのは確かだろう。それでも、分散の択を迫るだけで、どちらでも殺人を犯す可能性は捨てられない。
とりあえず、柊司令に連絡してみる。
「こちら葉桜。渋谷でテロ発生。指揮官は居らず自由に動いていると見られます。」
『了解。その件は本部に任せたまえ。君達はポピュラブの系列店舗から目を離さぬよう。』
「承知しました。」
通話を切り、私はスパイに続行の連絡を入れた。これで確信した。Leviathanは私達の翻弄を狙っているのかもしれない。
となると、向こうで待機している後輩達が心配だ。潜入には成功しているのか。この連絡が入らなかった事を考えると、社内でも把握出来ていない事を起こしている別行動者が居るのかも。
俺達とOrderは分散潜入を開始した。外から遠隔で情報を抜けると良かったが、電波妨害されてしまった。
ここら一帯がLeviathanの回線以外にアクセス出来ないように改造されているようだ。
「Orderと完全に分離したな。ブレーカーを一旦落としにいくぞ。そこを待ち伏せして奴らを撃つ。」
「「了解。」」
サーバーさえ破壊すれば、関東と繋がる手段は一時的に途絶える。
あっちに直接暗殺する者が居ない限りは、大丈夫だ。仮に居たとしても、サイレンスには沢山のチームがある。タコ殴りにすれば良いだけだ。
昼休み。午後の部が始まる前の時間だ。自分は明璃に呼ばれて店横に来ていた。
「疲れたぁ!」
「踊りっぱなしだもんね。」
姉に似たのか歌も踊りも上手だった。また午後からもやるなんて、凄い体力だと思う。
そういえば、観覧中に隣の客から何かカードを握らされた。怪しいと思ったが、得体が知れないが故捨てられない。
そっとポケットに入れようとした時……。
「おぉ!相性診断券持ってるんじゃん!」
相性診断券?この店の仕様は何か珍しい。明璃は説明し始めた。
「そこに書かれたQRコードをスマホで読み取ってみて。そしたら診断できるから。」
押されるがままに行おうとした時、自分は気付いた。紙に見せかけた材質をしているが、何か重い。
これ自体がチップになっていて、スマホから個人情報を抜けるものかもしれない。
そうでないにしろ、監視カメラが届かないこの場所で、奴らがチャンスを見つけるには、何らかの方法で干渉する必要がある。
どうやら、都合の良すぎる道具を押し付けられた。
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