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ChapterⅤ:Crazy
No67.Doesn't change but doesn't cooperate
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その声の主。彼こそが私の最も会いたくなかった人物だ。
「薔羨……。」
聖薇薔羨。歪の実の兄で、慈穏の相棒。ただ、今の彼は昔のような人ではない。
「何で私を誘拐?Leviathanに関与してたでしょ?」
早速質問攻めに出た。意図的には会いたくない上に、機会もない。今を逃すと二度と反政府の首謀者が分からなくなるかもしれない。
「質問には後でしっかりと答えてやるから話を聞け。……葵の事は覚えているな?」
「ええ。勿論。」
「……ここが何処だか分かるか?」
「……何処。見た感じ、研究所のようだけど……。」
「ここは仙台だ。元々政府の持ち物だったが、襲撃して奪った。それでも懲りずに東京に設立したらしいがな。」
私達サイレンスの元には社会の様子が情報として舞い込んでくる。
しかし、国が運営する研究施設の新設の話は聞いていない。
「その感じだと知らないようだな。教えてやるよ。……暗黒政府の悪行の数々を。」
それから私は、ひたすらにそんな話を聞かされ続けた。しかし、私の心は一切揺れ動かなかった。
「これが真実だ。とは言え、ほんの一部に過ぎないが。協力する気にならないか?」
「……ならない。」
「お前も薄々勘づいているはずだろ。慈穏があっさり散った理由。その主犯。」
勿論気づいている。だけど、私は彼に頼りたくは絶対にない。あの時は確かに私達は信じられずに決別したけど、すぐにそれは確信に近いものに変わった。
それでも、私はサイレンスに残る事を決意した。Enterの名を捨てる事になったとしても、守り抜かないといけない約束があったから。
私達の青春の思い出はあくまでも記憶。大人になった私達の本来すべき事は、未来ある若者を支える事。
彼もその理念こそは同じ。だけど、理解り合えない食い違いがある。解釈が不一致である。
「でも協力しない。ほら、ここまで連れてきたんだから帰してよ。」
「……はいはい。それでも、お前が協力しなくとも、ピンチには駆けつけてやるからな。……元とはいえ仲間なんだし。」
私は睡眠薬を飲まされ、行きと同じようにバイクで帰された。
「う、うーん?」
「お目覚めかな。おはよう。」
目を開くと、真上に要が居た。どうやら、人気の無い路地裏のベンチのようだ。
「ねぇ…なんで膝枕なの!」
起きて思考が戻ると気付いた。彼を膝枕にして寝ていた事に。
「ベンチだと硬いじゃん。気遣いのつもりなんだけど…。」
彼は顔が良いので雑に扱えないという悔しさが渦巻いていた。かつての仲間だしよくあった事とはいえ、今はあまり気分がよろしくない。
「……要はそんなに変わってないよね。安心した。」
「別に薔羨も変わっちゃいないさ。難しいんだよな。慈穏と同じで。」
薔羨だってあの頃と同じ眼をしていた。本質的には変わっていないんだろうけど、やっぱりEnterにはあまり関与したくない。
「ふぁぁ……ん?あ…おはよー愛沙。要。」
すると、要を抱き枕にして寝ていた月歌が起きた。寝起きが可愛過ぎる彼女は、鏡を取り出して髪をセットし始めた。
「そろそろ帰りなよ。俺達もそろそろ仙台に戻るから。」
多分彼は私の家が分からないから適当に人気の少ない場所に降ろして見張っていてくれたのだろう。
「じゃあね。さようなら。」
そう言い残して、私は帰路に着いた。
不穏な空気を感じながらも、今を楽しまないのは勿体無い。いつ、何が起こるか分からないこそ、すぐに行動する事に決めた。
「旋梨。明日の予定は?」
「出掛ける。歪もだろ?」
「まぁな。」
たまには、俺から誘ってやるのも悪くないと思った。俺は気づいている。自惚れてるだけかもしれないし、勘違いかもしれないが、機会は作ってあげたい。
……俺の心が動くかは、自分自身でも分からないが。
「薔羨……。」
聖薇薔羨。歪の実の兄で、慈穏の相棒。ただ、今の彼は昔のような人ではない。
「何で私を誘拐?Leviathanに関与してたでしょ?」
早速質問攻めに出た。意図的には会いたくない上に、機会もない。今を逃すと二度と反政府の首謀者が分からなくなるかもしれない。
「質問には後でしっかりと答えてやるから話を聞け。……葵の事は覚えているな?」
「ええ。勿論。」
「……ここが何処だか分かるか?」
「……何処。見た感じ、研究所のようだけど……。」
「ここは仙台だ。元々政府の持ち物だったが、襲撃して奪った。それでも懲りずに東京に設立したらしいがな。」
私達サイレンスの元には社会の様子が情報として舞い込んでくる。
しかし、国が運営する研究施設の新設の話は聞いていない。
「その感じだと知らないようだな。教えてやるよ。……暗黒政府の悪行の数々を。」
それから私は、ひたすらにそんな話を聞かされ続けた。しかし、私の心は一切揺れ動かなかった。
「これが真実だ。とは言え、ほんの一部に過ぎないが。協力する気にならないか?」
「……ならない。」
「お前も薄々勘づいているはずだろ。慈穏があっさり散った理由。その主犯。」
勿論気づいている。だけど、私は彼に頼りたくは絶対にない。あの時は確かに私達は信じられずに決別したけど、すぐにそれは確信に近いものに変わった。
それでも、私はサイレンスに残る事を決意した。Enterの名を捨てる事になったとしても、守り抜かないといけない約束があったから。
私達の青春の思い出はあくまでも記憶。大人になった私達の本来すべき事は、未来ある若者を支える事。
彼もその理念こそは同じ。だけど、理解り合えない食い違いがある。解釈が不一致である。
「でも協力しない。ほら、ここまで連れてきたんだから帰してよ。」
「……はいはい。それでも、お前が協力しなくとも、ピンチには駆けつけてやるからな。……元とはいえ仲間なんだし。」
私は睡眠薬を飲まされ、行きと同じようにバイクで帰された。
「う、うーん?」
「お目覚めかな。おはよう。」
目を開くと、真上に要が居た。どうやら、人気の無い路地裏のベンチのようだ。
「ねぇ…なんで膝枕なの!」
起きて思考が戻ると気付いた。彼を膝枕にして寝ていた事に。
「ベンチだと硬いじゃん。気遣いのつもりなんだけど…。」
彼は顔が良いので雑に扱えないという悔しさが渦巻いていた。かつての仲間だしよくあった事とはいえ、今はあまり気分がよろしくない。
「……要はそんなに変わってないよね。安心した。」
「別に薔羨も変わっちゃいないさ。難しいんだよな。慈穏と同じで。」
薔羨だってあの頃と同じ眼をしていた。本質的には変わっていないんだろうけど、やっぱりEnterにはあまり関与したくない。
「ふぁぁ……ん?あ…おはよー愛沙。要。」
すると、要を抱き枕にして寝ていた月歌が起きた。寝起きが可愛過ぎる彼女は、鏡を取り出して髪をセットし始めた。
「そろそろ帰りなよ。俺達もそろそろ仙台に戻るから。」
多分彼は私の家が分からないから適当に人気の少ない場所に降ろして見張っていてくれたのだろう。
「じゃあね。さようなら。」
そう言い残して、私は帰路に着いた。
不穏な空気を感じながらも、今を楽しまないのは勿体無い。いつ、何が起こるか分からないこそ、すぐに行動する事に決めた。
「旋梨。明日の予定は?」
「出掛ける。歪もだろ?」
「まぁな。」
たまには、俺から誘ってやるのも悪くないと思った。俺は気づいている。自惚れてるだけかもしれないし、勘違いかもしれないが、機会は作ってあげたい。
……俺の心が動くかは、自分自身でも分からないが。
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