多面性を持つ最強暗殺者はただ日常を望む

やみくも

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ChapterⅤ:Crazy

No66.Strange atmosphere

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 Silverと会話した翌日、俺はLeviathanの件を片付けるための会議に出席していた。
 
 「株式会社ポピュラブは倒産した。Leviathan追跡と匿名の死亡報告は受けている。後日の再調査で、姿を晦ました底沼の死体を確認。長任務ご苦労だった。」

 大体はおさらい的な感じだ。諸悪の根源は割れていないが、俺もLeviathanが暗躍者だと思っていた。…昨日の夜までは。
 突如姿を現した Silverは意味深な匂わせだけして帰って行った。彼女達は確か九州出身だ。今の活動拠点は分からないが、何か意味があって訪れたことは明白だ。

 「それでは解散だ。」

 会議というか報告&確認という形で終わり、俺達はそれぞれ帰宅しようとしていた。

 「歪。ちょっと話さないか。」

 「……ああ。構わない。」

 絆に声を掛けられ、適当に歩いてある場所に向かった。







 人気が少ない川沿い。時間帯も相まって極秘会話にはうってつけの場所だった。

 「ここはOrderの原点だ。」

 「そうか。………匿名の件は終わったんだな。」

 「俺の中にある課題は一つ解決した。Leviathanも滅び、最近はテロというより大掛かりな襲撃ばかりだ。……そろそろ…潮時かもな……。」
 
 絆はきっと社会復帰を狙っているのだろう。俺達だって平和が訪れるならそれが一番だ。むしろ、誰かの平和のために、敵を装い脅威を排除する我々だからこそ望んでいるのかもしれない。
 正直、国はまだぐちゃぐちゃだ。しかし、関東圏内だけはマシなレベルになってきた。度重なるテロで一周回って冷静になった人々も関東へ移住しているようだし、この件もいづれ収束するだろう。
 ただ、重要なのはそこでは無い。これまで以上の嵐の前の静けさを感じずにはいられないのだ。
 まず、根本的には何も解決していないし、まだ“俺の目的”は一つも解決していない。それどころか、伏線ばかり増えるだけだ。

 「なぁ絆。いつか本当の平和は訪れるとは思っている。けど、素直に両手を挙げて喜べない今の感覚。……妙じゃないか?」

 「は……同感だ。真相が全く掴めていない。暗躍者は誰なんだ……。」

 「……サイレンス二強チームの代表としてさ、秘密裏に真相……解き明かさないか?」

 「奇遇だな。それが用件だった。」

 会議中、絆は妙に思考を巡らせているような集中力だった。もしかしたらと思ったが、やはり疑いの眼を光らせていた。

 「……これからよろしくな。ライバルだけでなく、作戦班として。」

 「こちらこそ。」

 俺達は軽い握手とグータッチをして、その日は解散した。







 私は会議終了後、少し頭を使っていた。Leviathanの件が終了して以降、清心が音信不通だ。
 彼は政治家で忙しくはあるものの、流石に違和感を感じざるおえない。私も彼の事を完璧に信用してるわけでは無い。あの旧友はまだ何もしていないが、不穏な空気は漂わせている。
 これまで、彼に選択を迫られながらサイレンスを運営し、成果を出させてきたが、その選択が正しかったという確証もない。
 解決していない状況での一時の平和。これ以上に怖いものはない。細心の注意を図る必要がある。







 慈穏の墓参りを行い、私は帰路に着こうとしていた。本部の近くまで来た時は、習慣的に行っている。

 「また来るね。」

 そう言葉を掛け、日没寸前の階段を降りている。すると、階段の下で普段はあまりない人影がある。
 
 「やぁ愛沙。」

 顔は全く見えなかったが、私はその声にドキッとした。聞き馴染みのある声であり、この場所だからこそ、余計に怖くて仕方が無い。

 「……要?」

 「久しいな。……ちょっとお話がしたい。来て欲しい。」

 急に現れて怖すぎる。今の私は最年長のお姉さんとしてチームを支えているけど、ここでの立場は変わらない。
 
 「ごめんだけど、会いたくない。もうそれは過去の私。今の私とは無関係だから。」

 「そっか……。月歌。」

 すると、木々の間から発砲され、私は睡魔に襲われた。

 「……貴方…そんな人だった……け……。」

 私の意識は閉じた。



 「………帰るぞ。月歌、俺にしっかり捕まってろよ。」

 「分かった。」

 眠らせた愛沙を挟み込みようにハンドルを握り、月歌を後方に乗せ、驚異のバイク三人乗りで、仙台に向けて爆走した。
 バランスが難しいが、月歌は絶対俺を離さないので、愛沙にだけ気を遣ってれば事故らない。







 急に眠らされて起き上がると、そこには様々な研究機材が置かれていた。

 「ここは……。」

 「待っていたぞ。葉桜愛沙。」

 「ッ!」
 

 
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