90 / 150
ChapterⅥ:Signpost
No90.Black Rose
しおりを挟む
睨み合いが終わると、先制したのは彼岸の方だった。地を蹴って跳び上がり、ハンマーを叩きつけようとしてきたが、俺はそれを容易く躱す。
「オラァァァ!」
しかし、奴はその怪力でハンマーを振り上げてきた。すぐに反応出来た俺は地を軽く蹴り上げ、危機一髪で回避した。
そして空中で照準を定め、奴の腹部を撃ち抜いた。
「がはっ!」
引き金を引き終えた俺はすぐに腰のロープを投げ、着地と同時に奴を引き寄せた。
奴は腹部の抑えていたため、引っ張られる際にハンマーを手放したようだ。
「誰が蹂躙のプロフェッショナルだって?……特製ロープが人間の力で引き千切れると思うか。お前の負けだ。」
聞いていた話より全然弱い。どうやら、過大評価し過ぎていた。
奴はまだ終わりじゃないと言わんばかりに暴れるが、無駄な抵抗となった。
「さぁ話せ。お前達は何がしたい。そして、葵が必要だった理由を。」
「はん!俺様は何も………ッ!」
「あー悪い。つい発砲したわ。……約束が守れないなら首が飛ぶぞ。覚えておきな。」
「……Hades、Zeus。この二大組織から派生し、それらが統合されて成るのが生命再起会だ。」
「……責任者は。」
「……。」
「あくまでも、自分の命より責務を全うしようとするか。……いいよ、手掛かり一つあれば特定出来るから。」
そう言い放し、銃口を奴の額に当てた。
「誰に従ったかは知らないが、葵を攫った張本人を生かす気は最初から無い。彼岸、お前の操者はいづれ破滅する。どちらを呪うかは心底どうでもいい。……選ばしてやるよ。俺は対魂で無くなる。お前の遺言は次の俺の命名で終わる。自分を殺した人間のな。」
引き金に指を掛け、奴の返答を待った。
「蝙蝠は黒薔薇がどうとか言っていたな。蓬萊の遺言らしい。」
「……伝えてくれて感謝する。」
そう口に零し、引き金を引いた。
Asmodeus彼岸銃殺。対魂としての任務を完遂し、俺は「黒薔薇」となった。
仙台国家秘密研究を制圧した俺は、すぐに葵の容態を確認しにいった。
間近で見ると、呼吸はある。つまり死んではいない。カプセルを展開して葵を出して、分析を開始した。
しかし、目を覚ます事は無かった。どうやら、“意識”が抜かれたようだ。研究対象のデータ資料には、『対象:恵蜜葵 に不要な意識及び記憶は、厳重に隔離保管をする。』と記載されていた。
「……違う。俺は身体だけが欲しいんじゃない。“心”も欲しいんだ…!」
今の彼女は、言わば植物状態。生きていたことには一安心だが、これでは意味が無い。“記憶”を取り戻さねば……。
その日は研究所内にあるデータを隅々まで閲覧しながら、死体や残骸を片付けていた。
判明したこともいくつかある。
一つは生命再起会は行政に携わる事。一つは人為的に気象を操作する技術を有する事。そして、もう一つは“有能な母体から人間を複製し、新たな社会の礎を構成しようとしている”事だ。
少子高齢化問題を強引に解決しようした計画にあたる。近い未来、確実に実害を及ぼす。俺だけでなく、全日本国民に。いや、下手したら全人類かもしれない。
葵(身体)奪還から年月が流れ、俺は旧Enterと合流した。愛沙は提案に応じてくれなかったが。
そこにLeviathanも招集し、計画阻止と葵の記憶を取り戻す手掛かりを探すために動き出した。
同時期、生命再起会の技術が暴走したからか、日本で異常気象が多発。
勿論、その正体が連中の仕業とは知らないが、政府が勝手に自爆したお陰で、日本の派閥が綺麗に分断された。
これを好機と見た俺は、反政府の荒れ狂う国民を一気に味方に付けるため、抵抗推進機構「プレデスタンス」を設立し、対政府戦に備えた。
そして、こんな情勢の中、政府側では清心将角という男が一気に権力を強めた。彼は生物の秩序に関して熱心であり、生命再起会の黒幕は間違いなくこいつだと確信した。
Episode:Black Rose Fin
「ここからは、お前が知っての通りだ。」
壮絶な過去だった。俺の前に現れなくなった兄上は、葛藤し続けていたのだ。
自身のため、仲間のため、国民のために。日陰で、日向に照らされ本性を隠す存在を探っていた。
絶望しても決して挫折しないその姿は、華隆さんの片割れとして、納得のいき過ぎるものだった。
「兄上……一生ついて行きたい。」
「信じてついて来い。闇夜に紛れて闇夜を払うぞ。」
士気が高まった俺は、身体を動かさずにはいられず、気づけば射撃場に移動していた。
関東。魔境と化したこの地域も、まだ活気が失われるほど侵食されているのは、中区のみだ。
俺達の住んだ町は、“今は”これまで通りの情景だ。
「ただいま。」
Episode:Melody
~Dissonance~
to be the continue
「オラァァァ!」
しかし、奴はその怪力でハンマーを振り上げてきた。すぐに反応出来た俺は地を軽く蹴り上げ、危機一髪で回避した。
そして空中で照準を定め、奴の腹部を撃ち抜いた。
「がはっ!」
引き金を引き終えた俺はすぐに腰のロープを投げ、着地と同時に奴を引き寄せた。
奴は腹部の抑えていたため、引っ張られる際にハンマーを手放したようだ。
「誰が蹂躙のプロフェッショナルだって?……特製ロープが人間の力で引き千切れると思うか。お前の負けだ。」
聞いていた話より全然弱い。どうやら、過大評価し過ぎていた。
奴はまだ終わりじゃないと言わんばかりに暴れるが、無駄な抵抗となった。
「さぁ話せ。お前達は何がしたい。そして、葵が必要だった理由を。」
「はん!俺様は何も………ッ!」
「あー悪い。つい発砲したわ。……約束が守れないなら首が飛ぶぞ。覚えておきな。」
「……Hades、Zeus。この二大組織から派生し、それらが統合されて成るのが生命再起会だ。」
「……責任者は。」
「……。」
「あくまでも、自分の命より責務を全うしようとするか。……いいよ、手掛かり一つあれば特定出来るから。」
そう言い放し、銃口を奴の額に当てた。
「誰に従ったかは知らないが、葵を攫った張本人を生かす気は最初から無い。彼岸、お前の操者はいづれ破滅する。どちらを呪うかは心底どうでもいい。……選ばしてやるよ。俺は対魂で無くなる。お前の遺言は次の俺の命名で終わる。自分を殺した人間のな。」
引き金に指を掛け、奴の返答を待った。
「蝙蝠は黒薔薇がどうとか言っていたな。蓬萊の遺言らしい。」
「……伝えてくれて感謝する。」
そう口に零し、引き金を引いた。
Asmodeus彼岸銃殺。対魂としての任務を完遂し、俺は「黒薔薇」となった。
仙台国家秘密研究を制圧した俺は、すぐに葵の容態を確認しにいった。
間近で見ると、呼吸はある。つまり死んではいない。カプセルを展開して葵を出して、分析を開始した。
しかし、目を覚ます事は無かった。どうやら、“意識”が抜かれたようだ。研究対象のデータ資料には、『対象:恵蜜葵 に不要な意識及び記憶は、厳重に隔離保管をする。』と記載されていた。
「……違う。俺は身体だけが欲しいんじゃない。“心”も欲しいんだ…!」
今の彼女は、言わば植物状態。生きていたことには一安心だが、これでは意味が無い。“記憶”を取り戻さねば……。
その日は研究所内にあるデータを隅々まで閲覧しながら、死体や残骸を片付けていた。
判明したこともいくつかある。
一つは生命再起会は行政に携わる事。一つは人為的に気象を操作する技術を有する事。そして、もう一つは“有能な母体から人間を複製し、新たな社会の礎を構成しようとしている”事だ。
少子高齢化問題を強引に解決しようした計画にあたる。近い未来、確実に実害を及ぼす。俺だけでなく、全日本国民に。いや、下手したら全人類かもしれない。
葵(身体)奪還から年月が流れ、俺は旧Enterと合流した。愛沙は提案に応じてくれなかったが。
そこにLeviathanも招集し、計画阻止と葵の記憶を取り戻す手掛かりを探すために動き出した。
同時期、生命再起会の技術が暴走したからか、日本で異常気象が多発。
勿論、その正体が連中の仕業とは知らないが、政府が勝手に自爆したお陰で、日本の派閥が綺麗に分断された。
これを好機と見た俺は、反政府の荒れ狂う国民を一気に味方に付けるため、抵抗推進機構「プレデスタンス」を設立し、対政府戦に備えた。
そして、こんな情勢の中、政府側では清心将角という男が一気に権力を強めた。彼は生物の秩序に関して熱心であり、生命再起会の黒幕は間違いなくこいつだと確信した。
Episode:Black Rose Fin
「ここからは、お前が知っての通りだ。」
壮絶な過去だった。俺の前に現れなくなった兄上は、葛藤し続けていたのだ。
自身のため、仲間のため、国民のために。日陰で、日向に照らされ本性を隠す存在を探っていた。
絶望しても決して挫折しないその姿は、華隆さんの片割れとして、納得のいき過ぎるものだった。
「兄上……一生ついて行きたい。」
「信じてついて来い。闇夜に紛れて闇夜を払うぞ。」
士気が高まった俺は、身体を動かさずにはいられず、気づけば射撃場に移動していた。
関東。魔境と化したこの地域も、まだ活気が失われるほど侵食されているのは、中区のみだ。
俺達の住んだ町は、“今は”これまで通りの情景だ。
「ただいま。」
Episode:Melody
~Dissonance~
to be the continue
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる