多面性を持つ最強暗殺者はただ日常を望む

やみくも

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ChapterⅧ:FinalZone

No137.This world is so self-centered

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 蜥蜴の消えては現れてを繰り返す戦闘スタイルと、自動車でさえも粉砕するワイヤーをいとも簡単に断ち切れる訳に気付けないまま、俺は翻弄され続けていた。
 後方から奴の刃物が飛んでくる気配を感じ取り、身体を振り向かせてワイヤーを放つが、上から奴が降ってきたため、刃物を絡め取ったワイヤーを引き、上を防御した。

 「無駄だ無駄だ!」

 「ッチ!」

 だが案の定、奴はワイヤーを切り離し、刃物を目の前に突き出してきた。
 俺は慣れない拳銃を取り出し、足止め程度にしかならないが奴の足元を撃った。すると、とある事に気づけた。

 「銃弾が通ってない……?ッ!」

 しかし思考する時間など有らず、奴は煙幕を展開した。だが、至近距離だからか、気配や殺気を感じ取ることなど、造作もない。
 後方に回られ、尖った金属が向けられたのを直感的に感じた俺は、高度な事は一切考えずワイヤー三本を前方に投げとばし、壁に引っ掛かったような感覚が伝わったと同時に、俺はワイヤー引っ張った。
 すると俺の身体が持ち上げられたため、短めのワイヤーを出して振り向きながら奴を切り裂いた。

 「あがぁぁ!」

 慣性が落ち着き俺は着地して、ワイヤーをこちらに引き戻した。
 煙幕が晴れると、右腕が完全に切断された蜥蜴が膝を着けていた。
 さっきから刃物を投げたり持ったりしているのは右手だ。利き手の可能性が高い。

 「さっきからなんでワイヤーが切られるのか不思議で仕方が無かったが、……分かれば単純だな。ただ靴に何か仕込んでいただけか。それがお前の身体さばきと組み合わさる事で、あれだけ動きながら切れただけの話。間違ってねぇな?」

 そう尋ねると蜥蜴は負傷部を左手で抑えながら立ち上がり、口を開いた。
 
 「Leviathan孤高。ワイヤーをあそこまで巧みに操る奴は初めて見た。……あの実力がありながら、ライブジャックを制せなかったのは何故だ。」

 「なんでそれをお前に……」

 「讐鈴の歴史背景から推察して、貴様が異彩を放っていると感じた。興味深い。」

 「敵同士だ。話してるうちに奇襲する気か?それか、お前が話を聞いている間に俺が急襲するかもな。」

 「見ろ。」

 そう言って、奴は地に転がる自身の右腕に目線を向けた。

 「この世界、死ぬまでが仕事だ。だが、このダメージの差は悪足掻き程度にしかならない。それも、出血はしているが全治一週間程度の貴様と、片腕の破損によりパフォーマンスが低下した私では、明白だろう?」
 
 「は、潔く敗北を認めてくれるなら、ありがたい話だ。」

 互角だった状況が、あの一撃で全てひっくり返った。あの忍者のような奴の動きから考えて、長引けば俺が先に力尽きていたはずだ。
 恐らく、奴もそれは分かっている。この戦いは既に決着が着いているのだ。

 「俺が何故ライブジャックを制せなかったのかだって?……話終わったら始末するで文句無いか?」

 「勝者の特権だ。好きにしろ。」






 俺は語り始めた。
 
 「単純な話だ。……Leviathanは、心の拠り所みたいなチーム。全員、本来帰るべき場所はあるんだよ。ただ、それすら失いかけた。……俺は、そんな故郷に再び舞い降りた。だが、そこに昔のような日々なんかねぇ。時は流れるものだからな。」

 「それはどういう事だ。」

 「どういう事…か……。二度と戻れない昔に戻りたいが故、それを壊した存在への復讐心に刈られて実行した。……それはあまりにも自己中心的過ぎた、全員が幸せになるなんて思っちゃいねぇ。ただ、愛する人恋音だけは絶対に傷付けては駄目だろ……。そう、気付かされた。旧友と、俺と全く逆になった希望にな。」

 そう一通り話し終え、俺が奴の首に結ばれたワイヤーを弾こうとすると、奴が何か言いたそうだったので、俺は指を止めた。

 「清心や彼岸、蝙蝠より先にそちらの側の人間と出会いたかった。」

 「………何を吹き込まれていた。」

 「私は裏切られた。裏社会の中でさえも、最下層にまで転落した。」







 暗い路地の道端で大人からサンドバックにされていた時、そいつらは後ろから殺された。

 「惨めな連中ですねぇ…。雑魚の傷の舐め合いとは……。」

 「その辺りにしておけ!……名は何と言う。」

 「……ありません。」

 「そうか、なら呼び名はまた考えるとする。……私は政治家だ。この身勝手が誰かを蹴落とす社会、共に変えたいと思わないか?」

 「……ですが…。」

 「ここだけの話、清心様は元不良です。信じられませんよねぇ?反社会の人間が、今は世のために尽くしなんてぇ!一緒に来ましょう。そして理想郷を共に創り上げてやりましょう。」







 「そういう経緯で生命再起会の一員となった。が、そこで行われていたのは理想郷とは程遠い計画の数々。何も、最初からそうだった訳では無い。」

 全貌が見えてくる話だった。

 「……お前達がしっかり何かを尽くそうとした事は分かった。だが、そのために払った犠牲が、他人から殺意を向けられる行為だという事は自覚すべきだったはず。……本当、人間ってのは自己中心的だから。俺達も、だからこそ対立し、殺し合う夜を今過ごしている。」

 「……すまない。」

 「……考えが変わった。もう大して憎んではいねぇよ。来世ってものがあるなら、次は正しい理想郷を追求できるといいな。」

 そう言って、俺はワイヤーを弾いて奴を殺した。
 これが俺の使命。私怨も最初はあったが、今は虚しい程どうでもいい。生命再起会は、利用されてるだけの奴が数人はいる。それが知れただけで、未来は変わる。

 「聖薇のさじ加減だな。……どんな運命を辿るかは。」

 互いにエゴを持っている。それがぶつかる過程で、人も死に、社会が動く。
 革命を起こせない者は、振り回され続ける。その在り方で本当によいのか、それは俺が決める事じゃねぇ。

 ひとまず今は歪達と合流し、恋音を取り戻す事が先決だ。
 
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