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Collectors 本編 〜無職になった男はその目で何を見る〜
第2話 ラビリンス
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占い師の後を追った先には一軒のバーが建っていた。メイン通りから少し外れた路地裏にあり環状線の線路沿いに面している小さなお店である。入り口となるドアにはちょっとしたステンドグラスが付けられ、店内から漏れる明かりでそれらが色鮮やかに輝いている。またお店の壁には『ラビリンス』という文字が取り付けられ、小さなLED電球で照らされている。
「着いたよ。ここが今日からあんたの家になるお店、ラビリンスだ」
「バー……って、俺はここで働くんですか? マスターなんてやったことないですよ。ビールを注ぐことぐらいなら出来そうかもですけど……」
そう和也が弱々しく答えると占い師は「ちょっと」と言いながら和也を睨んだ。
「話が飛び過ぎ。あんたはバーでは働けないよ、住まわせるだけ。さあ早く中に入って、話の続きをしようじゃないか」
店内はそんなに広くはない。入り口から見て左手にはカウンターがあり、それが入り口の向かい側まで続いている。カウンターには座席が十二席ほど並べられ、入り口から右手には数多くの洋酒が、銘柄種類関係なく置かれている。それらは小さなキャンドルライトの明かりを受けぼんやりと光り輝いている。入り口が少しお洒落な雰囲気なのはそのせいだろうか。カウンターの中には壁一面を覆うほどの棚が設置されており、数多くの洋酒が並べられている。
「おかえりなさいませ。鴉夜女様」
カウンターの中でコップを拭いている男性が占い師に挨拶をすると、彼女は「ただいま」と簡単に返しそのままお店の奥にある暖簾がかかった部屋に入って行った。和也もその後を追おうとその部屋に近づくが目の前で足を止める。
ここって普通入っちゃいけないよな。
和也には気になることがあった。それはこんな小さなお店に自分が住むスペースがあるのかどうかという点だ。確かこのお店の上の階にも部屋があるはず(二階建ての建物で、お店は一階に入っていた)。ということはこの暖簾の奥にはその階段があるということになる。その部屋に入るためにはカウンターの入り口を通らなくてはならないので、正直行きづらいのだ。
「どうするか……」
素直に占い師を待てばいい。簡単なことだ。しかし和也にはそんな簡単なことがとても出来るとは思えなかった。まるでトイレにどうしても行きたい人のようにどこかそわそわしてしまい、落ち着くことが出来ないのだ。早く自分が休める部屋を確認して、休みたい。和也の頭はそれでいっぱいだった。
「お客様、トイレはその部屋の横にございますドアの先です」
男の言葉に「ヒィーイ」と小さく声をあげ背筋をピンと伸ばす和也の姿は、悪いことをしていた子供が親に見つかり背後から怒鳴りつけられた時のようで少し滑稽に見えた。
「あ、ありがとうございます!」
和也はそう言うと反射的にドアを開けトイレに入っていく。ズボンを下ろすことなく便座の蓋の上に座ると一気に身体中の力が抜け、「はあ~」と深いため息をついた。
「まじで、なんなんだよ」
これは本当に現実なのか。そう和也は疑う。正直そう思うのもしかたないのかもしれない。仕事が失くなり、街中をふらふらした後、公園で占い師に会ったかと思えばヤクザに襲われそれで……。まるで映画かドラマかと思ってしまうような怒涛の展開に正直頭が追いつかない。自分の周りで何が起きているのだろうか。物語の中でこのような出来事に遭った時、それらの主人公達はそんなに深く自らが巻き込まれた現象に頭を抱えることはあまりないだろう。しかしだ、実際に体験してしまうと冷静になりたくてもそれが出来ない。公園からここまでくる間、占い師を見失わないようにしなければならないということと、ヤクザの仲間や事件を調べる警察に追いかけられるのではということに頭がいっぱいだった。冷静になれるようなことは一度もなかった。このように座って落ち着くことが出来て良かったと心から和也は思った。
「そういえばスーツが尋常じゃないほど汚れてるんじゃないか……?」
ズボンに目を移すと公園で付いたのだろう砂埃が沢山付いている。ジャケットも同様であり、遠くから見ても分かるほどである。
「ああ、やってしまった」
和也はズボンの汚れたところを何回か叩く。取れるものもあるが完璧には落ちない。
「安いものじゃないのに」
リリィに引きずられた時以上に汚れたズボンは和也には見るに耐えない。自分の足が痛くなるまで何度も叩くが、しつこい汚れはあまり綺麗にならなかった。
「くそっ! なんで俺ばっかこんな目に合わなきゃならないんだ!」
そんなに強くもなく大きくもない声で和也はそう叫ぶ、するとトイレのドアが強く開きそこから先ほどトイレに案内した男性が断りもなくずかずかと入ってきた。
「な、なんですか……!」
「鍵がかかっていなかったものですから、それより鴉夜女様が呼んでいます。早く行った方がいいかと」
男性曰く先ほど占い師が入って行った部屋に入り、そのまま道なりに行けば良いという。お店の人から入る許可が出れば躊躇うこともない。和也は言われた通りに暖簾の先に足を踏み入れた。暖簾の先は小さな部屋のようになっていた。ちょっとした書き物が出来るような小さな机や、部屋に似合わないような三人腰掛けられるような革のソファー。それに冷蔵庫やカクテルの作り方が沢山書かれた本が並ぶ本棚などが置かれている。そしてそれらの奥に扉が設置されている。
「そのまま真っ直ぐ、道なりに進んでいただければいい」
男性はそれだけ言ってまたコップを拭き始めたので、それ以上の事を聞かなかったのだが、扉があるのであれば言って欲しいものである。和也は男性の言葉を信じその扉を強く押した。しかし扉は開かない。
「なんだよ、おい」
片手で開かず、両手でも動かず、終いには身体全体で押しても動かない。
「開かないじゃないか!」
そう和也が声を上げた時、後ろの方から男性の優しい声が飛んでくる。
「言い忘れてましたがそれは引き戸なんです」
それを聞いて和也は一瞬で冷静になる。和也は自分の身体が段々熱くなっていくのを感じながら、同時に恥ずかしさというもので頭がいっぱいになり慌て始める。
「あ、ああそうですか失礼しました!!」
慌てて話したため、早口でかつ吃りながら男性にそう言うと和也は早々とドアの中に入って行き、強くドアを閉めた。ドアが閉まる寸前に男性が何か言ったような気がするが、羞恥心に負けた和也にとってこの場から早く逃げ出すことで頭がいっぱいだったため、その言葉は和也の耳には届かなかった。その結果、和也の目の前は真っ暗になり光の無い世界に閉じ込められてしまったのだった。
「これって部屋の明かりをつけ忘れた……んだよな」
「はあ~」ともう一度ため息を吐く。本当にいいことがない。和也はどうにかして部屋の明かりを付けようとスイッチをさがそうとするが、全くもって何も見えない。すぐ後ろに先ほど入ってきた扉があるはずで、その扉と床の間から暖簾の部屋の明かりが入ってきてもいいはずなのにその光さえもない。
「動いて探すしかないかぁ」
そう言って和也が足を一歩踏み出すとその先には床はなく、重力に伴って下の方に落ちていく。和也の体は前のめりになり、前転をするように曲がり始める。次の瞬間、和也の頭が何か硬いものにぶつかった。和也の頭には激痛が走り段々と身体の感覚が無くなっていく。そして最後には自分の意識までもが段々と薄れていった。
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鴉夜女が連れてきたお客様がドアを全身で押しているのに気付いた男性は、またかとうんざりしながらも、優しく声をかける。
「言い忘れてましたが、それは引き戸ですよ」
そう男性が言うとお客様は慌てた様子でドアの中へと入って行ってしまった。恥ずかしかったのだろう。顔を真っ赤にて何かを喋りながら扉の奥に入って行った。ただ、扉が閉まる瞬間、ふとあのことを思い出した。
「電気付けないと危ないですよ!」
扉の先は階段になっているのだが、常時電気が付いているわけではなく、また降りる途中に窓はない。階段を降り切った先には入り口と同じ扉がつけられている。不思議な空間だ。ただ、このお店自体謎が多いのでこのようなものがあってもそんなにおかしくはないと感じてしまう。
「行ってしまった」
先ほどのお客様は今頃暗闇のなかで困っているか、どうにかして電気を点けようと壁にぴたりとくっついて身体全体で探してるかのどちらかだ。ただ足を滑らせ階段を転がり落ち怪我をされては困る。そう考えた男性は助けに行こうとコップを置いたその時、お店の入り口がカラりという音を奏でながらゆっくり開いた。
「あ、いらっしゃいませ……ん?」
男性が立っている前に現れたのは、背の低い女性……いや、女の子だった。年は中学三年生から高校二年生くらいだろうか大人っぽいというよりは子供っぽく童顔だ。背は160センチよりも小さいと思われ、髪は肩まで伸びるミディアムヘア。頭には缶バッジが付いた猫耳のニット帽を被り、ゴールデンレトリバーと同じ色をしたカーディガンを身につけている。サイズが少し大きいようで長く伸びた袖で女の子の両手は隠れている。萌え袖とかいうやつだ。クリスマスカラーをベースにしたスカートを身につけ、その下には薄黒い色をしたストッキングを履いている。
「ここは子供が来ていいところじゃないのですが……」
「ユメは子供じゃないのです」
女の子はそう言いながら男性の前の椅子に座る。
「あ、あのちょっと……」
「ユメはオレンジジュースが飲みたいのです。お客様さまは神さまなのですよ? さあ準備するのです!」
なんだこの子はと男性は驚きつつも「分かりました」と注文を受ける。コップにオレンジジュースを注ぎ、女の子の目の前に出すとありがとうも言わずに彼女は手にって子供のように両手でコップを掴み口に運んだ。段々と中身が減り、オレンジジュースはほんの数秒で無くなってしまった。
「ぷはぁ~!」
「これは……いい飲みっぷりで」
「すごく喉が渇いていましたから。美味しかったのですよ!」
無邪気な笑顔でそう言われるとなんだか全てを許してしまいそになるが、ここは子供の来る場所ではない。どうにかしてそのことを理解してもらい、女の子をお店から出さないと。
「飲み物をくれたお礼をしたいのですよ」
「はい? お礼……ですか?」
「そうなのです。何かしてあげたいのです」
「な、ならお会計をして、お店から出て行ってもらいたいんですが」
「それはしてあげるのです。ユメはお客様ですから。お兄さんが今一番したいこと、叶えたいことを体験させてあげたいのです」
「今一番したいこと?」
「ですですよ。さあ、なんでも言ってみるのです」
先ほどからユメと名乗る女の子は両手を天井に大きく伸ばしながら話している。その姿はまるでキューピーマヨネーズのキャラクター、キューピーちゃんを彷彿とさせる。しかしどうしたものかと男性は頭を抱えて考える。ここで男性はマジメに自分の欲望を考えているわけではなく、彼女が帰ってくれるような無理があることをお願いしようと探しているのだ。ユメというこの子でも体験できないこと、叶えられないことは沢山あるはずである。
「なかなか決まらないようですのね。なんでもいいのですよ? お金持ちになりたい、死んだ人に会いたい、未来に行きたい、なんでもです」
「そこまで言うのなら……」
叶えることが不可能な欲望ばかりがユメの口から語られたことで本当になんでもいいことが分かった。もしかしたらこれは自分を困らせるための質問らしいと男性は納得する。だったら完全に叶えることのできないことを言ってみるのがいいかもしれない。そう考え男性は絶対にユメが体験させることの出来ないことを口にする。
「自分が存在しない世界を見てみたいかな」
男性の言葉を聞いたユメは一瞬瞬きをし、首を横に傾ける。
「や、やっぱり出来ないよな、そんなこと……」
男性が心の中でガッツポーズをしたその時、「きゃは」と小さい子がすごく嬉しいときに出すような笑い声が聞こえてくる。改めてユメの顔を見ると両手で口元を押さえながら笑う姿がそこにはあった。
「出来るのですよ。ユメの手にかかれば! すぐに始めるのですよ!」
「え!?」
男性が驚くのと同時にユメは座っていた椅子の上で正座をしはじめる。そして被っていた猫耳ニット帽を静かにとって眉毛に被っている前髪を額を出すように掻き分けた。すると額には六角形の透明な宝石が埋め込まれるような形でそこの中心に大きく付いており、部屋の明かりを受けて眩しいくらいに輝いている。
「その額は……?」
「あなたはただ私の額を見ていればいいのです。じっ……と、ずっ……と凝視するのです。するとだんだん色が変わっていくのが分かるはずなのです」
ユメの言葉通り、水晶はだんだんと茶色くなり始め土星の表面のような色に変わっていく。それはまるでピクチャード・ジャスパーという宝石の色と瓜二つであり、先ほどの六角形の宝石と入れ替わったように変化したのだ。男性はユメの額の宝石をじっと見つめているうちにそれから目を離せなくなっていることに気づく。体が石の様に硬くなり動こうにも動けない。夜寝ている時に金縛りに遭ったことはある。今自分の身体に起きている不思議な現象はそれによく似ていた。助けを呼ぼうにも口も動かせない。今男性の目に見えているのはユメとその額に光る宝石だけである。
『やっとかかりました、ですね』
男性の頭の中にユメの声が響きわたる。
『私の力であなたが望んだ事を叶えてあげようと思うのです。先ほどあなたはなんと言ったでしょうか。そうです、「自分が存在しない世界を見てみたい」です!』
そう言うユメは男性を嘲笑っている。当然、その様子を見ている男性は身動き一つ取れない。
『最初から存在しない世界だとちょっとつまらないというか、ただ傍観するしかないので、自分が死んだ後の世界を見に行くことにしましょう、です! あなたも実際に体験したいですよね?』
石像にでもなったかのように男性は静かだ。
『では早速見ていくのです。私の言う通りにするですよ、その通り体が動くので。まずは目を閉じるですよ。そしてゆっくり鼻から深呼吸。心を落ちつかせて。次に目を開いた時、あなたが最初に見るのは自分が死ぬ三秒前です、いいですか~』
ユメはそう言うと男性の顔に左手を当てる、すると彼女の目が宝石と同じ色に輝きはじめ、それと同時に額についた宝石から茶色の電流のようなものが溢れ出し彼女の身体全体を覆い始めた。そしてそれはユメの左腕を通って男性に伝わっていく。男性の身体が小刻みに揺れ、感電した時の様な反応を見せた途端、立っていた男性が背後に吹き飛び、洋酒の並ぶ棚を破壊しつつコンクリートの壁にめり込んだ。それから五秒ほどしてポキリという木の枝が折れた時の様な音がしたかと思うと、右腕と左足が勢いよく不自然な方向に曲がった。再び静寂な店内に戻った時には、棚から落ちた高級なお酒が地面に散らかっており、各々の中身と中身が混ざり合い、お酒独特のモワッとする匂いが辺り一面に広がっていた。
「あら、この人は電車に轢かれて死んだみたいですね。すごく痛そうです」
椅子からおり散らかったカウンターの中に入るユメは壁に埋もれた男性に目もくれず、被害の受けていない洋酒の並んだ棚の前へ歩いていく。一番下の段に置いてある洋酒を見ていると何かを見つけたらしくボトルを一本手に取った。
「ノブクリークじゃないですか! このお店はいいもの置いてありますね」
ノブクリーク独特の黒いキャップを回し、飲み口から匂いを嗅ぐ。ゴムと接着剤の匂いに似た独特な香りがユメの鼻腔をくすぐった。
「ユメはこう見えて二十歳を超えてるのですよ。ではいただくのです」
そのままボトルを口につけ、ノブクリークを飲み始める。その姿はお風呂上りに冷えた牛乳を飲むものと同じだ。ゴクリという音を四回鳴らした後、口からボトルを離す。
「あ~! おいしいですね! これがたまらんのですよ」
可愛らしい顔と声に似合わないような台詞を言ったところで、先ほどから埋もれたままの男性に目を移す。
「言ってなかったですが、夢の中で自分の死を迎えるともうこちらには帰ってこれないのです。ごめんなさいですね。なので代金は置いてかなくていいですよね? きゃは、きゃははは」
ユメは壁にめり込んだ男性に眩しいくらいの笑顔を向けて笑った。
「次はあの扉の先、暗闇の中で階段を踏み外した和也さんと遊ぶですよ」
ユメはどこからともなく手のひらサイズの人形を取り出す。クマとウサギの人形である。
「はやくこの人形で遊びたかったですよ。和也さんも楽しんでくれるといいですねぇ」
カウンターから出たユメはその入り口近くの椅子に座り人形に力を送る。そして二つの人形がピクチャード・ジャスパーの色に包まれたのを確認すると和也が入っていったドアの中に放り込んだ。
「一緒に楽しもうなのですよ。三村和也さん」
続く
Collector's
第一章
First collect サリィ編
第二話 完
「着いたよ。ここが今日からあんたの家になるお店、ラビリンスだ」
「バー……って、俺はここで働くんですか? マスターなんてやったことないですよ。ビールを注ぐことぐらいなら出来そうかもですけど……」
そう和也が弱々しく答えると占い師は「ちょっと」と言いながら和也を睨んだ。
「話が飛び過ぎ。あんたはバーでは働けないよ、住まわせるだけ。さあ早く中に入って、話の続きをしようじゃないか」
店内はそんなに広くはない。入り口から見て左手にはカウンターがあり、それが入り口の向かい側まで続いている。カウンターには座席が十二席ほど並べられ、入り口から右手には数多くの洋酒が、銘柄種類関係なく置かれている。それらは小さなキャンドルライトの明かりを受けぼんやりと光り輝いている。入り口が少しお洒落な雰囲気なのはそのせいだろうか。カウンターの中には壁一面を覆うほどの棚が設置されており、数多くの洋酒が並べられている。
「おかえりなさいませ。鴉夜女様」
カウンターの中でコップを拭いている男性が占い師に挨拶をすると、彼女は「ただいま」と簡単に返しそのままお店の奥にある暖簾がかかった部屋に入って行った。和也もその後を追おうとその部屋に近づくが目の前で足を止める。
ここって普通入っちゃいけないよな。
和也には気になることがあった。それはこんな小さなお店に自分が住むスペースがあるのかどうかという点だ。確かこのお店の上の階にも部屋があるはず(二階建ての建物で、お店は一階に入っていた)。ということはこの暖簾の奥にはその階段があるということになる。その部屋に入るためにはカウンターの入り口を通らなくてはならないので、正直行きづらいのだ。
「どうするか……」
素直に占い師を待てばいい。簡単なことだ。しかし和也にはそんな簡単なことがとても出来るとは思えなかった。まるでトイレにどうしても行きたい人のようにどこかそわそわしてしまい、落ち着くことが出来ないのだ。早く自分が休める部屋を確認して、休みたい。和也の頭はそれでいっぱいだった。
「お客様、トイレはその部屋の横にございますドアの先です」
男の言葉に「ヒィーイ」と小さく声をあげ背筋をピンと伸ばす和也の姿は、悪いことをしていた子供が親に見つかり背後から怒鳴りつけられた時のようで少し滑稽に見えた。
「あ、ありがとうございます!」
和也はそう言うと反射的にドアを開けトイレに入っていく。ズボンを下ろすことなく便座の蓋の上に座ると一気に身体中の力が抜け、「はあ~」と深いため息をついた。
「まじで、なんなんだよ」
これは本当に現実なのか。そう和也は疑う。正直そう思うのもしかたないのかもしれない。仕事が失くなり、街中をふらふらした後、公園で占い師に会ったかと思えばヤクザに襲われそれで……。まるで映画かドラマかと思ってしまうような怒涛の展開に正直頭が追いつかない。自分の周りで何が起きているのだろうか。物語の中でこのような出来事に遭った時、それらの主人公達はそんなに深く自らが巻き込まれた現象に頭を抱えることはあまりないだろう。しかしだ、実際に体験してしまうと冷静になりたくてもそれが出来ない。公園からここまでくる間、占い師を見失わないようにしなければならないということと、ヤクザの仲間や事件を調べる警察に追いかけられるのではということに頭がいっぱいだった。冷静になれるようなことは一度もなかった。このように座って落ち着くことが出来て良かったと心から和也は思った。
「そういえばスーツが尋常じゃないほど汚れてるんじゃないか……?」
ズボンに目を移すと公園で付いたのだろう砂埃が沢山付いている。ジャケットも同様であり、遠くから見ても分かるほどである。
「ああ、やってしまった」
和也はズボンの汚れたところを何回か叩く。取れるものもあるが完璧には落ちない。
「安いものじゃないのに」
リリィに引きずられた時以上に汚れたズボンは和也には見るに耐えない。自分の足が痛くなるまで何度も叩くが、しつこい汚れはあまり綺麗にならなかった。
「くそっ! なんで俺ばっかこんな目に合わなきゃならないんだ!」
そんなに強くもなく大きくもない声で和也はそう叫ぶ、するとトイレのドアが強く開きそこから先ほどトイレに案内した男性が断りもなくずかずかと入ってきた。
「な、なんですか……!」
「鍵がかかっていなかったものですから、それより鴉夜女様が呼んでいます。早く行った方がいいかと」
男性曰く先ほど占い師が入って行った部屋に入り、そのまま道なりに行けば良いという。お店の人から入る許可が出れば躊躇うこともない。和也は言われた通りに暖簾の先に足を踏み入れた。暖簾の先は小さな部屋のようになっていた。ちょっとした書き物が出来るような小さな机や、部屋に似合わないような三人腰掛けられるような革のソファー。それに冷蔵庫やカクテルの作り方が沢山書かれた本が並ぶ本棚などが置かれている。そしてそれらの奥に扉が設置されている。
「そのまま真っ直ぐ、道なりに進んでいただければいい」
男性はそれだけ言ってまたコップを拭き始めたので、それ以上の事を聞かなかったのだが、扉があるのであれば言って欲しいものである。和也は男性の言葉を信じその扉を強く押した。しかし扉は開かない。
「なんだよ、おい」
片手で開かず、両手でも動かず、終いには身体全体で押しても動かない。
「開かないじゃないか!」
そう和也が声を上げた時、後ろの方から男性の優しい声が飛んでくる。
「言い忘れてましたがそれは引き戸なんです」
それを聞いて和也は一瞬で冷静になる。和也は自分の身体が段々熱くなっていくのを感じながら、同時に恥ずかしさというもので頭がいっぱいになり慌て始める。
「あ、ああそうですか失礼しました!!」
慌てて話したため、早口でかつ吃りながら男性にそう言うと和也は早々とドアの中に入って行き、強くドアを閉めた。ドアが閉まる寸前に男性が何か言ったような気がするが、羞恥心に負けた和也にとってこの場から早く逃げ出すことで頭がいっぱいだったため、その言葉は和也の耳には届かなかった。その結果、和也の目の前は真っ暗になり光の無い世界に閉じ込められてしまったのだった。
「これって部屋の明かりをつけ忘れた……んだよな」
「はあ~」ともう一度ため息を吐く。本当にいいことがない。和也はどうにかして部屋の明かりを付けようとスイッチをさがそうとするが、全くもって何も見えない。すぐ後ろに先ほど入ってきた扉があるはずで、その扉と床の間から暖簾の部屋の明かりが入ってきてもいいはずなのにその光さえもない。
「動いて探すしかないかぁ」
そう言って和也が足を一歩踏み出すとその先には床はなく、重力に伴って下の方に落ちていく。和也の体は前のめりになり、前転をするように曲がり始める。次の瞬間、和也の頭が何か硬いものにぶつかった。和也の頭には激痛が走り段々と身体の感覚が無くなっていく。そして最後には自分の意識までもが段々と薄れていった。
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鴉夜女が連れてきたお客様がドアを全身で押しているのに気付いた男性は、またかとうんざりしながらも、優しく声をかける。
「言い忘れてましたが、それは引き戸ですよ」
そう男性が言うとお客様は慌てた様子でドアの中へと入って行ってしまった。恥ずかしかったのだろう。顔を真っ赤にて何かを喋りながら扉の奥に入って行った。ただ、扉が閉まる瞬間、ふとあのことを思い出した。
「電気付けないと危ないですよ!」
扉の先は階段になっているのだが、常時電気が付いているわけではなく、また降りる途中に窓はない。階段を降り切った先には入り口と同じ扉がつけられている。不思議な空間だ。ただ、このお店自体謎が多いのでこのようなものがあってもそんなにおかしくはないと感じてしまう。
「行ってしまった」
先ほどのお客様は今頃暗闇のなかで困っているか、どうにかして電気を点けようと壁にぴたりとくっついて身体全体で探してるかのどちらかだ。ただ足を滑らせ階段を転がり落ち怪我をされては困る。そう考えた男性は助けに行こうとコップを置いたその時、お店の入り口がカラりという音を奏でながらゆっくり開いた。
「あ、いらっしゃいませ……ん?」
男性が立っている前に現れたのは、背の低い女性……いや、女の子だった。年は中学三年生から高校二年生くらいだろうか大人っぽいというよりは子供っぽく童顔だ。背は160センチよりも小さいと思われ、髪は肩まで伸びるミディアムヘア。頭には缶バッジが付いた猫耳のニット帽を被り、ゴールデンレトリバーと同じ色をしたカーディガンを身につけている。サイズが少し大きいようで長く伸びた袖で女の子の両手は隠れている。萌え袖とかいうやつだ。クリスマスカラーをベースにしたスカートを身につけ、その下には薄黒い色をしたストッキングを履いている。
「ここは子供が来ていいところじゃないのですが……」
「ユメは子供じゃないのです」
女の子はそう言いながら男性の前の椅子に座る。
「あ、あのちょっと……」
「ユメはオレンジジュースが飲みたいのです。お客様さまは神さまなのですよ? さあ準備するのです!」
なんだこの子はと男性は驚きつつも「分かりました」と注文を受ける。コップにオレンジジュースを注ぎ、女の子の目の前に出すとありがとうも言わずに彼女は手にって子供のように両手でコップを掴み口に運んだ。段々と中身が減り、オレンジジュースはほんの数秒で無くなってしまった。
「ぷはぁ~!」
「これは……いい飲みっぷりで」
「すごく喉が渇いていましたから。美味しかったのですよ!」
無邪気な笑顔でそう言われるとなんだか全てを許してしまいそになるが、ここは子供の来る場所ではない。どうにかしてそのことを理解してもらい、女の子をお店から出さないと。
「飲み物をくれたお礼をしたいのですよ」
「はい? お礼……ですか?」
「そうなのです。何かしてあげたいのです」
「な、ならお会計をして、お店から出て行ってもらいたいんですが」
「それはしてあげるのです。ユメはお客様ですから。お兄さんが今一番したいこと、叶えたいことを体験させてあげたいのです」
「今一番したいこと?」
「ですですよ。さあ、なんでも言ってみるのです」
先ほどからユメと名乗る女の子は両手を天井に大きく伸ばしながら話している。その姿はまるでキューピーマヨネーズのキャラクター、キューピーちゃんを彷彿とさせる。しかしどうしたものかと男性は頭を抱えて考える。ここで男性はマジメに自分の欲望を考えているわけではなく、彼女が帰ってくれるような無理があることをお願いしようと探しているのだ。ユメというこの子でも体験できないこと、叶えられないことは沢山あるはずである。
「なかなか決まらないようですのね。なんでもいいのですよ? お金持ちになりたい、死んだ人に会いたい、未来に行きたい、なんでもです」
「そこまで言うのなら……」
叶えることが不可能な欲望ばかりがユメの口から語られたことで本当になんでもいいことが分かった。もしかしたらこれは自分を困らせるための質問らしいと男性は納得する。だったら完全に叶えることのできないことを言ってみるのがいいかもしれない。そう考え男性は絶対にユメが体験させることの出来ないことを口にする。
「自分が存在しない世界を見てみたいかな」
男性の言葉を聞いたユメは一瞬瞬きをし、首を横に傾ける。
「や、やっぱり出来ないよな、そんなこと……」
男性が心の中でガッツポーズをしたその時、「きゃは」と小さい子がすごく嬉しいときに出すような笑い声が聞こえてくる。改めてユメの顔を見ると両手で口元を押さえながら笑う姿がそこにはあった。
「出来るのですよ。ユメの手にかかれば! すぐに始めるのですよ!」
「え!?」
男性が驚くのと同時にユメは座っていた椅子の上で正座をしはじめる。そして被っていた猫耳ニット帽を静かにとって眉毛に被っている前髪を額を出すように掻き分けた。すると額には六角形の透明な宝石が埋め込まれるような形でそこの中心に大きく付いており、部屋の明かりを受けて眩しいくらいに輝いている。
「その額は……?」
「あなたはただ私の額を見ていればいいのです。じっ……と、ずっ……と凝視するのです。するとだんだん色が変わっていくのが分かるはずなのです」
ユメの言葉通り、水晶はだんだんと茶色くなり始め土星の表面のような色に変わっていく。それはまるでピクチャード・ジャスパーという宝石の色と瓜二つであり、先ほどの六角形の宝石と入れ替わったように変化したのだ。男性はユメの額の宝石をじっと見つめているうちにそれから目を離せなくなっていることに気づく。体が石の様に硬くなり動こうにも動けない。夜寝ている時に金縛りに遭ったことはある。今自分の身体に起きている不思議な現象はそれによく似ていた。助けを呼ぼうにも口も動かせない。今男性の目に見えているのはユメとその額に光る宝石だけである。
『やっとかかりました、ですね』
男性の頭の中にユメの声が響きわたる。
『私の力であなたが望んだ事を叶えてあげようと思うのです。先ほどあなたはなんと言ったでしょうか。そうです、「自分が存在しない世界を見てみたい」です!』
そう言うユメは男性を嘲笑っている。当然、その様子を見ている男性は身動き一つ取れない。
『最初から存在しない世界だとちょっとつまらないというか、ただ傍観するしかないので、自分が死んだ後の世界を見に行くことにしましょう、です! あなたも実際に体験したいですよね?』
石像にでもなったかのように男性は静かだ。
『では早速見ていくのです。私の言う通りにするですよ、その通り体が動くので。まずは目を閉じるですよ。そしてゆっくり鼻から深呼吸。心を落ちつかせて。次に目を開いた時、あなたが最初に見るのは自分が死ぬ三秒前です、いいですか~』
ユメはそう言うと男性の顔に左手を当てる、すると彼女の目が宝石と同じ色に輝きはじめ、それと同時に額についた宝石から茶色の電流のようなものが溢れ出し彼女の身体全体を覆い始めた。そしてそれはユメの左腕を通って男性に伝わっていく。男性の身体が小刻みに揺れ、感電した時の様な反応を見せた途端、立っていた男性が背後に吹き飛び、洋酒の並ぶ棚を破壊しつつコンクリートの壁にめり込んだ。それから五秒ほどしてポキリという木の枝が折れた時の様な音がしたかと思うと、右腕と左足が勢いよく不自然な方向に曲がった。再び静寂な店内に戻った時には、棚から落ちた高級なお酒が地面に散らかっており、各々の中身と中身が混ざり合い、お酒独特のモワッとする匂いが辺り一面に広がっていた。
「あら、この人は電車に轢かれて死んだみたいですね。すごく痛そうです」
椅子からおり散らかったカウンターの中に入るユメは壁に埋もれた男性に目もくれず、被害の受けていない洋酒の並んだ棚の前へ歩いていく。一番下の段に置いてある洋酒を見ていると何かを見つけたらしくボトルを一本手に取った。
「ノブクリークじゃないですか! このお店はいいもの置いてありますね」
ノブクリーク独特の黒いキャップを回し、飲み口から匂いを嗅ぐ。ゴムと接着剤の匂いに似た独特な香りがユメの鼻腔をくすぐった。
「ユメはこう見えて二十歳を超えてるのですよ。ではいただくのです」
そのままボトルを口につけ、ノブクリークを飲み始める。その姿はお風呂上りに冷えた牛乳を飲むものと同じだ。ゴクリという音を四回鳴らした後、口からボトルを離す。
「あ~! おいしいですね! これがたまらんのですよ」
可愛らしい顔と声に似合わないような台詞を言ったところで、先ほどから埋もれたままの男性に目を移す。
「言ってなかったですが、夢の中で自分の死を迎えるともうこちらには帰ってこれないのです。ごめんなさいですね。なので代金は置いてかなくていいですよね? きゃは、きゃははは」
ユメは壁にめり込んだ男性に眩しいくらいの笑顔を向けて笑った。
「次はあの扉の先、暗闇の中で階段を踏み外した和也さんと遊ぶですよ」
ユメはどこからともなく手のひらサイズの人形を取り出す。クマとウサギの人形である。
「はやくこの人形で遊びたかったですよ。和也さんも楽しんでくれるといいですねぇ」
カウンターから出たユメはその入り口近くの椅子に座り人形に力を送る。そして二つの人形がピクチャード・ジャスパーの色に包まれたのを確認すると和也が入っていったドアの中に放り込んだ。
「一緒に楽しもうなのですよ。三村和也さん」
続く
Collector's
第一章
First collect サリィ編
第二話 完
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