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13.家に着きます
しおりを挟む荷物も捨てれたし、やっと故郷に帰ってきたって感じだな。
しかし、今の俺は靴を履いてないんだよな。子供が履いている靴を取るわけにも行かなかったしね。
あと、下着も着ていない。これは普通に無かったんじゃなく、他人の下着は使いたくなかっただけだ。
さて、これからどうするか? いざ日本に帰ってくると何をしていいのか分からないな。
う~ん、まあ、まずは家族を見てから考えようか。
もし日本に帰れたら、遠目でもいいから一目姿を見たいと思っていたんだよね。
という事で、家に向かうか。
ーーー
と思ったが、10分で挫折した。
全然進まない。6歳児の歩幅で10分なんて高が知れているもんね。
しかも、俺は怠惰の魔王、基本仕事以外ではあまり動かない生き物で、今日の飛行機の運搬はかなりの例外的な事な気がする。
しょうがない、飛行機を運んだ時と同じ要領で行くか。
【転移】
で、飛行機が日本上空に待機していた高度まで【転移】する。
【反重力】
そして、飛行機の時と同じ様に重力をゼロにして、日本を見下ろす。
日本にある家への行き方なら簡単だ。テレビで見た天気予報では、局で地域ごとの天気予報もやるので、自分が大体日本のどの辺に住んでいたかは分かる。
「あった」
あの辺りが俺の住んでいた県だ。そして、母さんが天気予報で気にしていた場所があの県のあそこ辺りだから、多分その場所が俺の家がある場所だろうな。
慣性の法則でその場所に行く為に、後ろを魔力を固めて、その固めた魔力を踏み締め思いっきり跳ぶ。
今は俺一人だし手加減無しでも大丈夫だろう。それにこの速度ならすぐに着く上、普通の人では目で追えない速度だろうからな。
地面に着く前に大気中の魔力を固めて着地する。直接地面に着地してしまったらコンクリートが砕けてしまうからな。
「よっと、着地成功」
コンクリートは人工物だから、気を使わないといけないのが面倒だな。
さて、ここは何処だろう?
まあ、10年も経っている訳だしね。そりゃ変わっているところもあるだろうし、もしかしたら引っ越しているなんて事も十分にありえるよな。
数日この辺を探し回って見つからなかったら、一先ずイデアの方に帰るとするか。
ーーー
それから、夕方まで探し回ると(半分以上は休憩に使ったが)見覚えのある景色を見つけた。
「ここは確か」
そう、イデアに異世界転移していなかったら、その数日後に通う筈だった小学校だ。
姉さんの学校行事で何度か、母さんと一緒に入った事がある。
でも、何か違和感があるな。何かは分からないが。
まあ、この小学校を見つけてしまえば家を見つけたも同然だな。
地球での記憶を引き出して、家までの記憶を思い出す。
「記憶だとこっちか」
思い出した記憶を元に家に行く道を辿っていく。
そして、俺はこれからの事を特に何も考えず家に向かってしまった。
ーーー
家に着いた。
が、これからどうしようか?
全く考えてなかった。表札は、天月となっているので、引っ越していない事は分かる。
まあ、姉さんが未だに実家住まいなのかは分からないけどね。
ウチの家は、2階一戸建ての家で既にローンも払い終わっていると母さんが言っていた。
母さんが、どんな仕事をしているかは知らないが、今思えばシングルマザーなのにお金に困った様子のなかったので結構裕福な家庭だった様に感じる。
そんな仕事に生きている様な人だから、10年経った今でも再婚は出来ていないかもしれないけどね。
まあ、子育てに関しては真面目にやっていたし、どちらかと言えば、溺愛されていた様に今になっては思う。
昔はあれが普通だと思っていたが、イデアに行ってから世界を自分の目で見るようになってから溺愛されている事が分かったし、世界がどうしようもない事も分かった。
だからと言って、怠惰の俺が何かを変える訳でも無いけどな。
でも、イデアに来て一つだけ変わった事がある。
それは自分で見た世界でもまだその裏がある、その裏ですら実際の本当の裏と比べれば生温いと言う事だ。
俺はカラミタ母さんに何でどうしようもない人類を助けるのかと聞いた事がある。
その時母さんは『人類の全てが悪い訳じゃ無いの。悪いのは一部だけど、その一部が人類を操っているから、ベルの目には人類全てがダメに映るのよ』
『じゃあ、その悪い奴を殺せば良いんじゃないの?』
『それが一番簡単ね』
『なら』
『でも、それは私達の問題じゃないわ、協力だけなら兎も角ね。それに私も誰が本当に悪いのか分からないの、そういう連中は自分達では何もしないから、実行犯を幾ら始末してもキリがないわ、この問題は同じ人類が自分達で解決しないとね』
とまあ、そんな話をしたんだ。イデアでも地球でも、きっと同じ何だろうな。一部の権力者なんてモノではなく、裏で世界を牛耳っている奴らはどうせ居ると思う。
イデアから来た今だから言えるが、地球という世界は歪んでいる。それも特に日本と言う国がね。
だが、それに気付いたからと言っても俺は魔人になってしまった部外者なので、カラミタ母さんが言った様に敵と同じ人類の問題だから手助けはしても解決は人類がやるべきなんだろうな。
だから、怠惰の魔王である俺は、俺の家族に手を出さない限り今の人類を見守る事にするよ。
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