怠惰の魔王

sasina

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15.母とも再会します

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 さて、部屋も片付いた事だし、いつまでも琴音姉さんを眠らせておく訳にもいかないので【安楽領域】を解除しておく。

 これで、琴音姉さんもそのうち目覚めるだろう。

 そういえば、俺が家に前で突っ立っている時に背後に居た琴音姉さんに気付かなかったのはびっくりしたな~。

 イデアでは、魔力の無い生物は珍しいので普段出歩かない俺がそんな生物の事を気にする筈もなく、魔力の小さ過ぎる琴音姉さんには気付けなかった。

 小さ過ぎる魔力は【魔力感知】では、虫とかの魔力だと思い無意識に除外してしまうのでしょうがない。

 実際に小さい魔力の持ち主に俺を害する事なんて出来ないから気にした事がなかったよ。

 しかし、琴音姉さんに魔力があるって事は、イデアから流れ込んだ大気魔力を吸収しているのかな。
 あとは勝手にイデアの住人と同じ様にその人に上限まで吸収していくだろうな。

 魔力保有の適性はイデアより低いと思うので、殆どの人が魔力保有量が少ないだろう。才能にもよると思うけど。

 琴音姉さんの魔力量は少しずつだが増えていっているな。だが、まだ上限には達してないみたいだ。

 それにしても、魔力感知に引っ掛かる程の魔力の持ち主はまだ居ないみたいなので、ここに来て琴音姉さんに会うまでは全然気付かなかった。

 これで、その内地球側でも魔法が使える様になっていくのだろうか?

 まあ、そんな訳でやる事が無くなってしまった俺は怠惰の魔王らしく、何もしないでゆっくりとするか。

 母さんにも会いたいしな。



ーーー



「ん、寝てたか」

 窓から、外を見ると既に辺りはすっかり暗くなっていた。

 俺は部屋から出て一階に降りてリビングの扉を開けると、既に母さんが帰ってきていた。

「お帰り」

「ただいま、鈴ちゃーん!」

 俺の母親 天月柚乃ゆのは、俺に気付くと、ダッシュで近付いて俺を抱き上げて頬を擦り付けてきた。

 感動の再会の筈なんだけど、二人とも普通過ぎてそんな気が全然しないね。

 俺がされるがままになっていると、柚乃母さんが何かに気付いたのか俺を見てきた。

「鈴ちゃんどうしたの? 体は少し焦げ臭いし、目がジト目になっているわ!」

 そう言えば、飛行機の爆発に巻き込まれたんだったな。流石に【自動防御】でも臭いまでは防げなかったか。

 あとジト目なのは、多分怠惰の魔王になった影響で、ジト目がデフォルトになったんだろう。

「別に」

「そう? 喋り方も変わったわね!」

 もう、子供じゃないって事ではないでしょうか?

 まあ、面倒なので演技をするつもりは無い。柚乃母さんには、琴音姉さんの影響で少し早い厨二病にでもなってしまったと思ってもらおうか。

「まあ、良いわ!琴音ちゃんが作ってくれた晩御飯をみんなで食べちゃいましょう!」

 ウチでは柚乃母さんが仕事に出ているので、柚乃母さんが休日に日以外は基本的に琴音姉さんが家事を担当している。

「お母さんも鈴もさっさと席について、」

 琴音姉さんが晩御飯を机に並べながらそう言った。

「うん」

「わかったわ!」

 全員が席について、

「いただきます」×3

 と手を合わせてからそう言って晩御飯を食べ始めた。

 頂きますなんて久し振りに言ったのに、体が憶えていたのか流れる様に出来た。

「それにしても驚いたわ!いきなり空が割れるんだからびっくりしたわよ!」

「ファンタジーだよねー」

「そうだね」

「会社でも大騒ぎになっていたわ!お母さんもいきなり凄い音がしたから、コーヒーを重要書類に零して参っちゃったわよ!」

「私は特に大丈夫だったかな、鈴は?」

「大丈夫」

「そう、良かったわ!二人共無事で、会社で聞いた話では飛行機が消えただの、突然現れただの、突然爆発しただのとよく分からない事になっているそうよ!だから、貴方達が大丈夫か心配で早く帰ってきたの!」

 突然ってやつは俺が原因だね。

「早く退社しても良かったの?」

「今日はこんな事になったから、退社がいつもより早かっただけよ?」

「まあ良いけど」

 柚乃母さんが誤魔化そうとしてそう言うと、琴音姉さんは呆れた様にそう返していた。

 会社の退社時間は柚乃母さんが決めたって事かな?

「それにしても、折角異世界ファンタジーが見える所にあるのに手が届かないなんて詰まらないな~」

「お母さんは貴方達にあまり危ない事をして欲しく無いんだけどね!」

「危ないからやめたら?」

「なんで?」

 俺がそう言うと、琴音姉さんが聞き返してきたので、ここは嘘も方便って事で。

「向こうの地面に小さいトカゲが居たから」

「トカゲなんてここから見える筈が無いって、ここから見えるサイズのトカゲって事はドラゴンって事!!」

「分かんない」

「お母さんにも分かるようにお願い!琴音ちゃん!」

「ここから、向こうの世界にトカゲが見えるって事は、ちょっとした山脈ぐらいの大きさの生き物が見えたって事になるの、分かった」

「成る程!」

 まあ、実際に地球から見た訳じゃないが、イデアの未開領域には実際にそのサイズのドラゴンも居るからな。あながち嘘とも言えないだろう。

 そんな感じで、異世界の話題だらけだったが10年ぶりの家族団欒と言うものを楽しんだ。






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