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22.聖奈、魔王討伐します
しおりを挟むイデア怠惰の魔王領域
side聖奈
複数ある魔王の領域の中で私達が選んだのは、私達が召喚された帝国に面している怠惰の魔王と呼ばれている魔王だ。
この怠惰の魔王は魔王の中でもかなり若く、魔王の中では最弱だとも言われていたのでちょうど良かった。
私達のパーティは、ランク9が1人、ランク8も1人でランク7が2人の計4人で怠惰の未開領域に行く。
帝国にはあと3人の勇者が居るが、全員ランク6以下なので未開領域に連れて行くには危険過ぎる上に、魔王との戦いでは足手纏いになってしまう。だから未開領域に行く時は、基本的にランク7以上の4人で行く事にしている。
という事で、怠惰の魔王討伐の為に未開領域に私達は入った。
実は私には魔王討伐以外にも目的がある。それは本当に魔王がイデアの人々が言うような者なのかを確かめる事だ。
確かに未開領域から出てきたドラゴンを倒しておいて、そんな事を言うのはおかしいかもしれない。でも日本にあった小説では魔王は話の通じない生物ではなかったりもするので、もしかしたら戦わないで済む方法があるかもしれない。
だから怠惰の魔王に会ったら先ずは話をしてみよう。
怠惰の領域に入ってから1ヶ月が経った頃、怠惰の未開領域内にポツンと一つの屋敷が建っているのを見つけた。
その屋敷に近づいて慎重に窓を除くと、中は誰かが今も住んでいるかのように隅々まで掃除が行き届いていて、廊下の花瓶には今朝摘んできたかの様な花も生けてあった。
私達はこの見つけた屋敷を、怠惰の魔王が住んでいる屋敷だと当たりをつけて侵入を試みる。
トラップなどに気を配りながら正面玄関から屋敷内に入ると、突然に扉が閉まった。
突然閉まった扉に気を取られていると、いつの間にか屋敷の奥へと続く扉の前には魔族が立っていた。
「いらっしゃいませ」
その魔族は、女性なのに執事服を身を包み綺麗なお辞儀を披露していた。
「お休み中の主人に代わり、このトリシアが皆様のお相手をさせていただきます」
そう言ってトリシアは袖から短剣を取り出す。
最初は一瞬話が通じるんじゃないかな?と思ったけど駄目そうだね。
このトリシアと言う魔族は、主人とやらの言う事しか聞かないんじゃないかなと思わせる雰囲気を出している。
魔力の大きさからランクは9、魔族から進化して魔人になっているね。そして私よりも強い。
でも、4人がかりで戦えば勝てない相手じゃない!
瞬時に仲間とのアイコンタクトでタイミングを合わせる。一番速い私が背後、魔法使いがその場に残り、後の2人左右からの四方同時攻撃。
【エクスプロージョン】【スピリットソード】【六の太刀・氷花】【一閃】
【金属操作】
私の剣が何か硬い物に弾かれた!
攻撃を当てた筈のトリシアがいた場所には金属の球体があり、その代わりにごっそりと床が無くなっていた。
今にして思えば、西洋風の屋敷なのに床は金属の細かいタイルでおかしいとは思っていたが、このトリシアと言う魔族の魔法は金属を操作する事が出来るのか。
この魔法は防御に秀でた魔法みたいで、金属の球体が崩れていき出てきたトリシアは無傷のままだった。
「皆様、それなりに出来る様ですね」
ここで時間をかける訳にはいかない。私が単独で寝込みの怠惰の魔王を殺す。
本当は対話をしたかったが、このトリシアは無理そうだ。そしてここでトリシアを殺してしまったら、どの道対話なんて出来ない、なら今の内に不意打ちで殺すしか勝つ方法はない。
アイコンタクトでパーティメンバーに私だけが突破して先に行く事を伝えると、3人は返事もせずに頷くとトリシアへ連携しながら息もつかせない連続攻撃を繰り出しトリシアをその場所に釘付けにしてくれた。
その間に私は魔力での身体強化で、屋敷の奥へと全力疾走する。
魔力察知で居場所は分かっているので、最短ルートで魔王の所向かった。
魔王がいると思われる部屋の前まで来た。中からは確実にランク9を余裕で超えている凄まじい魔力が感じられる。
怖い、まともに戦えばまず勝ち目は無い。4人でなら勝てるかもしれないなんて唯の自惚れだった。
でも、寝ている今だからこそ殺せるかもしれない。
恐怖心を抑えてそっと扉を開ける。中は寝室になっていて広いその部屋には、その部屋の面積の半分を占める大きなベッドがあった。そのベッドの上では、私より年下と思われる容姿をした美少年が気持ちよさそうに眠っている。
人間と全く変わらない容姿にこれは人殺しなるんじゃないかと一瞬気持ちが揺らいだが、肌で感じる魔力がこの少年が怠惰の魔王だと改めて教えてくれる。
仲間の為にも、時間が無いので急ぎ決着をつける。
私の中で最大の攻撃を使い一撃で倒す。この技は精神集中に時間がかかり使用後には体力と魔力が尽きるので、動けなくなる。実戦ではまず使えない技だ。
精神を集中させ剣身に全魔力の半分を収束させると、剣身は青白く光り輝やく。
残り半分の魔力を全て身体強化に回すと、あまりの大量の魔力を身体強化に使ったので体からも青白い魔力のオーラが滲み出ていた。
準備が整い、私は怠惰の魔王の首に狙いを定め長剣を構える。
【断界】
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