怠惰の魔王

sasina

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23.それでも魔王はお昼寝します

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 【断界】を放つ事が出来たから、確実に仕留めたと思った。
 それぐらい自信のある技だったし必殺の攻撃だと信じてるが、結果は虚しく【断界】は止められていた。

自動防御オート プロテクション

 後もう少しで届きそうな剣身は、火花を散らせてながら透明な障壁に受け止められている。

 火花が散っているって事は私の剣の方が削られているの?

 全く歯が立たないどころか、怠惰の魔王はそれでも眠ったままだ。

 一応ちゃんと【断界】で使った分以上の魔力が怠惰の魔王からも削れている様だけど、それでも怠惰の魔王の魔力はまだ十分にある。

 この魔王を倒す事は私達では無理だ。この障壁を突破するには、せめてこの魔王と同格の魔力は必要になる。

 その事実を理解して絶望と無力感に襲われ、ここでパーティメンバー全員で死んでしまうんだ、と頭を垂れていると。

自動反撃オート カウンター転送 トランスファー

「え?」

 魔法が使われたが何もする事が出来ずに、私は光に包まれる。

 その時の私が最後に見た光景は、相変わらずベッドで気持ち良さそうに寝ている怠惰の魔王の寝顔だった。



ーーー



 視界の光が収まった後に目を開けると、そこは怠惰の領域から程近い私達が魔王の領域に入る直前までいた町の直ぐ傍だった。

 私は暫くの間、何が起こったのか理解出来ずにボーッとしていたが、パーティメンバーがまだ魔人トリシアと戦っている事を思い出した。

「戻らないと、皆んなの所に」

 立ち上がって怠惰の領域に向かおうとすると、後ろからさっきの魔法と同じ光が出ていたので、もしかしたらと思い振り返ってみると、そこにはパーティメンバーが3人ともいた。

 急いで近づいてみると、ボロボロの状態だが3人ともちゃんと息をしていたのでホッと安堵する。

 その後は、動かない体を無理矢理動かして町の治療院に3人を担ぎ込んだ。全治5ヶ月の大怪我だったが全員命に別状はなく、後遺症を伴う様な怪我も無かった。

 そして、私達はこの魔王討伐戦以降は怠惰の魔王に挑む事は一度も無かった。



ーーー



side トリシア

「さて、片付けを済ませてしまいましょうか」

 先程、屋敷に侵入してきた冒険者らしき4人組の内3人を殺さない程度に痛めつけた。

 残り1人は、ベル様を倒す為に屋敷の奥へ向かったが、【自動防御】がある限りランク9程度の者が傷つける事は不可能なので心配はしていない。

 しかし、ベル様は傷付かなくても屋敷が傷ついてしまうかもしれないので急がなくては。

 半殺しにした3人を引きずって、ベル様の寝室まで急ぐ。

 寝室に付くと、既に終わった後の様で残りの1人はもう居なかった。

 ベル様に魔力が減っている事と未だにお休みになられている事から、どうなったのかは簡単に予想出来る。

「ベル様、起きて下さい」

「ん、どうした~?」

 ベル様を揺すり起こすが、まだ睡眠が足りていないのか寝ぼけている様子だった。

「この荷物達を町に送ってほしいのです。いつもの私の様に」

 そう言って、引きずっていた3人をベル様に見える様に持ち上げる。

「ん~」

転送 トランスファー

 ベル様は、適当に返事をし特に確認もしないで手を翳すと3人を町に送って下さった。

 カラミタ様に言われた通りに、無謀にもベル様へ挑んだ相手は殺さず町へ送り返す事が出来ました。

 これで、ベル様がカラミタ様にお叱りを受ける事ありませんでしょう。

「おやすみ」

「おやすみ中、失礼しました」

 ベル様は【転送】を使い終わると直ぐにお休みに戻られたので、私も寝室から出ていつも通り屋敷の仕事に戻ります。



ーーー



side 何も知らなかった怠惰の魔王

 今日はいつもより怠い気がするので、いつもより寝よう。

 おやすみなさい。



ーーーーー



 side 現在 やっと事実を知った怠惰の魔王

「と、こんな感じで戦ったって言えるのかもよく分からない話だけどね」

 へえ~そんな事があったんだね。

 陽地の話を聞いて一番最初に思った事は、魔王の中で俺が最弱だと思われていると言う事だった。

 そんな事、初めて知ったんだけど。

 確かに自信を持って上の兄弟に勝てるとは、とても言えないが負けているつもりも無い。

 兄弟喧嘩があっても決着がついた事は無いし、例え最弱だったとしても、そこまで差があるとも思えないんだけどね。

 まあ、最弱だと思われてもしょうがないかもしれない。

 まさか、冒険者に襲撃されていたのに、結局最後まで気付かなかったなんてな。恥ずかしくて他の兄弟には言えないよ。

 トリシアもそう言う事があったなら教えてくれればいいのに。

 まあ、その報告の時ですら寝ぼけていたなんて事なら、もうどうしようもないけどね。

 通りで覚えてない訳だよ。寝ていたんだから知っている訳がないよな。

 逆に俺の方はバッチリ寝顔を見られていたと。

 これでやっと公園で陽地に出会った時の疑問が解決したよ。

 しかし、攻撃したのが寝ている時で良かったな。

 屋敷で寝ている間の俺は【自動反撃】が、町への【転送】に設定してあるから殺さずに済んだよ。

 この設定はトリシアが町へ行きたい時に一々俺を起こさなくてもいい様に、俺を攻撃すれば【自動反撃】で自動的に町へ行く事が出来るって寸法だ。



 それにしても、俺達がやっている兄弟喧嘩は人類から見ると魔王同士の殺し合いに見えていたのか。

 今度、皆んなに教えてあげよう。

 そして、ルシア姉さんに聞いていた通り、魔王は人類からは人類の敵として認識されているみたいだね。

 事実としては知っていたけど、実際に魔王を殺しに来ていた人に会うと、改めてその事を実感したよ。

 





 


 
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