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24.魔王は待機しています
しおりを挟む「魔王ってそんなに強いの?聖奈」
琴音姉さんは不安そうな顔をして陽地を見つめる。
そっか、今の話だと魔王は悪者で人間の領地を奪う為に侵略しているって事になっていたな。
それなら、地球に侵略して来るかも?と思ってもおかしくはないか。
「うん、強いし勝てない。でも私は魔王が全て悪人だとは思えない。実際にパーティメンバーも誰一人殺される事が無かった。私はあの人間と何ら変わりない寝顔見てそう思った」
いや、陽地お前思いっ切り殺そうとしてたじゃん!憶えていなかったけど。
それにこれでも元人間ですから人間だった頃と寝顔は変わらないんじゃないかな?
それに殺さなかったのはトリシアの判断だから俺は関係ないんだけど、多分トリシアはカラミタ母さんが言っていた事に従っただけだと思うよ。
全然、善意の心からやった訳じゃないと思うよ。だって半殺しにされたんでしょ。
なら、ほぼ確実にカラミタ母さんの言いつけ通り、人類の主力人物を殺すなってのを守っただけだよ、きっと。
まあ、アマルティア家の皆んなには地球に手を出さないように言ってあるから、侵略の心配は元々無いんだけどね。
「でも」
「大丈夫だって、私達は地球を守る為に戻ってきたんだから、1年前の私とは違がって強くなった。もし魔王が地球に来たとしても戻ってきた全員で掛かれば一人ぐらいならきっと大丈夫だと思うから安心して、琴音」
「……そうだね、私が出来る事は無いと思うけど聖奈を信じる事にするよ。私に手伝える事があったら何でも言ってね」
陽地がそう言って琴音姉さんを励ますと、琴音姉さんは気持ちを切り替え覚悟を決めた表情をする。
そんな死地へ赴くみたいな雰囲気で会話をされても、地球に魔王が侵略しに来るなんて事は無いよ。
なんか逆にごめんね。
「えっと、じゃあ電車賃貸してくれない?」
そうだった、陽地の実家はこの辺じゃなかったな。そして、2年前に借りていたアパートも引き払われていたんだった。
でも今の会話の流れでそれを言うかな?普通。
まあ、お金を貸してくださいなんて普通は切り出しづらいか。
「良いけど、なんで?」
当然の疑問だよね。
「そう言えば、まだ話していなかったね。イデアと地球が繋がったその日に空から飛行機が墜落して来たんだよ。帝都の近くに」
「そう言えば、社員の間で飛行機の行方不明になっているって騒いでいたわね! きっと、その飛行機が落ちて来たんだわ!」
「そうですね、その墜落した飛行機からは日本人と思われる人も発見されています。 でも、なにせ飛行機の墜落事故ですから、生存者は少なくその少ない生存者も殆どが重体で治療院からは動ける状態では無いです」
そうだったのか。
なんで、イデアに飛行機が落ちている筈なのに、陽地達勇者が帰って来たのかが不思議だったけど、全員で戻って来た訳じゃないのか。
さっきの私達は戻って来たみたいな事を言っていたけど、それはイデアにも勇者が残っているって意味の‘私達は,なのか。
「それでその治療院に居る人達にも、勇者の人が付いているの?聖奈」
「そう、だから暫くしたら交代する為に私もイデアに戻るよ。ってそうじゃなくて電車賃を貸してほしいのは、イデアから地球に戻る時に2年前に借りていたアパートの近くに降りたら、当たり前だけどアパート既に引き払われていてね」
「うん、聖奈ちゃんはドジっ娘だね!」
「お母さん、今はそんな事今はどうでも良いから」
「はい、私はドジっ娘で、ボッチで、戦うしか能の無い脳筋です」
「そこまで、言ってないよ聖奈」
う~ん、さっきの話だとイデアでは仲間と上手くやっていた様に感じたんだが違ったのか?
パーティ内でハブられていたのか?
「まあ、そういう訳で偶々その時に出会った鈴君を頼ったと言う訳です」
だから、何故7歳児を頼る?
「交番とかには行かなかったの?」
「ぐっ、行きませんでした。私達が地球でどう言う扱いをされるのか分かりませんでしたから」
まあ、交番には行ったんですけどね。逃げてきたらしいけど。
「それに、何故か分かりませんが鈴君なら助けてくれる気がしたんです。直感的に」
直感か。このレベルのイデア冒険者の直感は馬鹿に出来ないからな。
何と無くにでも、俺が普通の7歳児では無い事が分かったのかもね。
それにしても、陽地達勇者もちゃんとイデアに墜落した飛行機に付いて知っていたのは助かった。
この問題は、勇者を中継役としてイデアの国と地球間で解決する事が出来そうだからな。
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