怠惰の魔王

sasina

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25.緊急離脱します

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 それからは、たわいもない話をしながらカレーライスを食べる。

 琴音姉さんがここ2年であった出来事をアニメやゲームを中心に話したり、陽地がイデアでの明るい思い出話を話す。

 そんな感じで、カレーライスが冷めるぐらいゆっくりとした団欒の時間が過ぎていった。



ーーー



「さて、そろそろ遅くなってきたからお母さんは寝るわ!」

 柚乃母さんはそう言って立ち上がった。

「お母さん、聖奈の話を聞いたのに明日も仕事に行くんだね」

「私、聖奈ちゃんの話を聞いて思ったの!」

「ちゃん?」

 陽地、気持ちは分かるが柚乃母さんはこう言う人なんだよ。

「聖奈ちゃんの話は理解出来たけど、私が直接何か出来る事は無いと思うの! 私は私に出来る働いて家族を養う事を一番に頑張るわ! だから聖奈ちゃんは琴音ちゃんの友達なんだから、いつでもウチに来ていいからね! 何かあれば話を聞くだけなら私にも出来るしね!」

「……ありがとうございます琴音のお母さん……これからも迷惑を掛けるかもしれませんがよろしくお願いします」

 柚乃母さんの言葉に涙目になりながらも陽地は頭を下げ返事を返した。

 柚乃母さんは頭を下げたままの陽地の頭を撫でた。

「あまり頑張り過ぎないようにね聖奈ちゃん。それじゃあ、お母さんはもう寝るから!」

 それだけ言うと柚乃母さんはリビングを出ていった。

 柚乃母さんは良い感じで離脱出来たから良いけど、どうするんだよこの状況。

 陽地は本格的に泣いているんですけど。

 そんなに辛かったの?勇者。まあ、地球を守るとか言ってもまだ10代の少女だもんな。

 それに、イデアには勝てないと分かっている、攻め込まれたら命を捨てないといけない様な魔王なんて生物も居るからな。

 本当にごめんなさいね。俺達魔王の所為で不安にさせてしまって。でも、俺の正体を教えて大丈夫だと言う訳にもいかないからね。

 今の陽地は恐怖や不安と言った感情を押し殺して頑張っていたけど、柚乃母さんが相談くらいはしても良いと言う言葉が嬉しかったのかな。

 慰めとは違うが、そう言うのは俺には無理なので、緊急離脱!

「トイレ」

 俺は空気を読んだだけだ。きっと陽地も7歳児の前でガチ泣きは恥ずかしいだろうと思い気を使っただけだよ。

 と言う事で、あとは琴音姉さんに任せた!

「ちょっと鈴!」

 呼び止める琴音姉さんに通じているかも怪しいアイコンタクトをして俺はリビングを出た。

 今の反応で陽地の事はある程度信用出来たので、俺が離れていても大丈夫だろう。

 それに念の為、も掛けてあるから心配は無い。

 さて、トイレに行きたいのは本当なのでトイレに行ってくる。



ーーー



 side 琴音

 どうすれば良いんだろう?

 お母さんは言いたい事を言ったらさっさと行っちゃうし、鈴は鈴でトイレなんてあからさまな嘘をついて出て行くし私はどうすれば。

 と、オロオロしていると。

「もう大丈夫です、琴音」

 聖奈は涙を拭い、まだ潤んだ瞳で言った。

 ごめん聖奈、全然大丈夫には見えないよ。

 でも、聖奈がそう言うなら私も切り替えていこうかな。

「はぁ、お母さんもカッコいい台詞を言うんだったら後片付けぐらいしてほしいよ」

「ふふ、それが琴音のお母さんらしいって事じゃないかな?」

「良い母親なのは分かるけどね。聖奈、お母さんが言っていた様に聖奈が家に帰った後はいつでもウチに来て良いからね。何ならアパート代わりの下宿先にしても良いから、ウチの家は広いのに3人暮らしで部屋が余っているしね。」

「ありがとう琴音、私が召喚されたのは高校入学の直前だったから高校に通う為にまたお世話になるかもね」

「高校入学直前って事は今は17歳なの?聖奈さんは」

 ってっきり、同い年ぐらいだと思っていたのに。

 しかも、鈴に渡した服を聖奈が着ているって事は、私と変わらない体格だって事だよね。

「さん付けはいいよ、琴音。それよりも食器類の片付けしよ」

「うん、わかった聖奈」

 テーブルの食器を重ねて持ち、台所の流しに入れる。

「食器洗い手伝うよ」

 そう言って聖奈が流しの前で腕捲りをする。

「じゃあ、お願いしようかな」
 
「食器を洗うのなんて2年振りだけど、頑張ってみるよ」

「え?」

 意気込んでいるところ悪いけど、2年振りって不安しか無いんだけど大丈夫かな?

「どうしたの?琴音」

「何で2年振りなの? イデアではやらなかったって事だよね」

「うん、イデアでは勇者勇者でそんな時間は無かったよ。使用人の人が何でもやってくれていたからね」

「仕事で野宿する時はどうしていたの?」

「帝国の勇者では私が一番強かった所為か、こう言う雑用みたいな事は雰囲気的にやらせてもらえなかったんだよね」

 それってハブられていた訳じゃないんだよね?

「そうだったんだ、なら尚更手伝ってもらおうかな」

「うん、頑張る」

 その後は、久し振りな所為かぎこちない聖奈にハラハラしながらも、一緒に食器を全て片付けた。

 


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