怠惰の魔王

sasina

文字の大きさ
27 / 33

27.寝起きに疲れます

しおりを挟む


「鈴起きて、鈴」

 体が揺すられる事で目が覚めた。

「ん」

 どうした琴音姉さん、もう朝か?

 窓から外を見るとまだ辺りは薄暗くかなり早い時間に思える。

 こんな時間に起こすなんて何かあったのか?

「何?」

「やっと起きた。聖奈の見送りをするよ」

 見送りってまだ帰ってなかったのか。

 それに俺は寝る前に見送りを済ませたと思っていたんですが、それは俺だけでしたか。

 と言う事は、今日はまだ終わっていないのか。

 デジタル時計で時間を確認すると、今は夕方みたいだ。

「わかった」

 しょうがないので起き上がって玄関まで行くと、陽地は既に準備万端で、あとは本当に見送りをするだけだった。

「一晩ありがとうございました。このご恩は近い内に。それとお母様にもよろしくお伝え下さい」

 何と言うか、一晩ありがとうございましたと言う割には、目の下の隈が目立つよ。

 俺が寝た後もずっとアニメの続きを見ていたのか?

「聖奈、そんな堅苦しい喋り方しなくても良いのに」

「一応礼儀としてね。それじゃあ改めて本当にありがとうね琴音、鈴君」

「ん」

「聖奈も元気でね。早く帰って家族を安心させてあげて」

「うん、やっと帰る事が出来るよ。じゃあバイバイ2人共」

「バイバイ」

「ん」

 やっと家族に再会出来る事が嬉しいのか、陽地は目に涙を浮かべながら玄関の扉を開けて出ていった。

 それを俺を琴音姉さんは手を振りながら見送る。

 何と言うか、今の俺は陽地の事が羨ましいと思っているみたいだ。家族との再会をあそこまで喜べるなんて見ていて眩しいな。

 魔人の精神構造では、たった10年でそう言った感情は生まれないみたいだからな。

 さて、見送りも済んだ事だし3度寝をするか。

 その後も晩御飯で起こされたりはしたが概ね平和な時間を過ごす事が出来た。



ーーー



4/10

 おはよう、朝です。

 今日の予定は高校と小学校の入学式だ。

 こんな時に入学式なんてやっている場合か!と思うけど一応開かれると学校側からも連絡があったそうなので今日は入学式に行く。

 と、その前に陽地がウチに来た時に罅を入れた窓ガラスをどうにかしとかないとな。

復元リストア

 【復元】の魔法を掛けると時間でも巻き戻っているか様に入っていた罅が消えていった。

「怠い、学校に行きたくない」

 行った事も無いんだけどね。

 と、言う感じで物凄い魔力と精神力を一気に消費する魔法で連続発動は不可能な類の魔法だ。

 【復元】には、確かにその魔力と精神力を犠牲にするだけの能力がある。

 この魔法こそがまさにチートと言える能力だろう。この魔法は指定した空間の物理現象を巻き戻す事が出来る魔法だ。

 この魔法は巻き戻す物理現象の大きさや複雑さでは無く、その物理現象が起こった時間に比例して魔力と精神力を消費する魔法だ。

 だから、今回の様にその物理現象が1日以上も経っていると、かなりの魔力と精神力を消費する事になる。
 
 まあ、そんな訳で学校に行きたくない。と言うか眠たい。寝る。おやすみ。



ーーー



「うぐっ」

 額をぶつけた衝撃で目が覚める。

 痛みは全くなかったが、衝撃で脳が揺れたよ。

「ここは?」

「車の中よ」

「ん」

 独り言を言ったつもりだったのに返事が返ってきたので、その方向を見ると制服姿の琴音姉さんが座っていた。

 周りを見ると、琴音姉さんの言う通りここ車の中で俺もシートベルトをつけて座席に座っている様だった。

 じゃあ、さっき額をぶつけたのは車がカーブをした反動って事なのかな?

「どう言う状況?」

「見て分からない? これから入学式に行く途中なんだけど」

 そうなのか。

 確かによく見れば俺も制服を着ているみたいだし琴音姉さんも中学の時に着ていた制服じゃないな。

 【復元】を使った事で寝ていた俺が起きなかったから、寝たままの俺を着替えさせて車に乗せたって所か。

「そろそろ着くわよ!」

 柚乃母さんがそう言うので窓から外を見ると全然見覚えのない景色だった。

「ここ何処?」

「ここは私の通う高校の近くよ」

 そっか、普通寝ている俺よりも琴音姉さんを先に送るよね。だから全然知らない景色だったのか?

 でも琴音姉さんは家から一番近い高校だって言っていた様な気がするのに全く見覚えがない。

 流石7歳児、行動範囲が狭過ぎるな。

「着いたわ!」

 そんな事を考えている内に高校に着いた。

「じゃあ行ってきます」

「行ってらっしゃい!」

「行ってら」

 琴音姉さんはそれだけ言うと車から降りて学校の中に入っていった。

「じゃあ次は鈴ちゃんの小学校に行くわよ!」

「うん」


 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

二度目の勇者は救わない

銀猫
ファンタジー
 異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。  しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。  それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。  復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?  昔なろうで投稿していたものになります。

俺の伯爵家大掃除

satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。 弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると… というお話です。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

処理中です...