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未定
61.スマホの価値(本体価格:約10万円)
しおりを挟む腕時計のアラームが鳴ったのでタイマーを切る。
この腕時計は昔使っていた物だ。
ダンジョン探索中はスマホが壊れない様にマジックポーチに入れているので、その間に使う為に持ってきた。
ダンジョン探索中に時間を確認する度に一々マジックポーチからスマホを取り出すのは非効率だからな。
腕時計を見ると、既に19時40分になっていた。
母さんには20時ぐらいには帰ると伝えたので、そろそろ帰らないとな。
稽古で汗だくなった服をさっさと着替る。
「帰るか」
帰る準備が出来た。
試練の扉から出てレッドウルフを確認すると、鹿は既に無くなっていた。
しかし、これがダンジョンの所為か、それともレッドウルフが食べたのか分かりづらい。
少し観察すると、レッドウルフの口が血で汚れている事が分かった。
レッドウルフは鹿の肉を食べたみたいだな。
まあ、それでもどのくらい食べたのかは分からない。最初の少しだけ食べて食べるのをやめたかもしれない。
まあ、そんな事もあろうかと、スマホを録画状態で此処に置いといた。
スマホを拾い、録画を止める。
録画した映像は帰ってから見よう。
「じゃあ、俺は帰るから大人しくしておけよ」
俺はそう言ってから、この部屋を出てダンジョンの外に向かう。
レッドウルフは声を掛けられても、今はまだ俺の事を憶えている様で近づいてこようしなかった。
これは鞭が上手くいっているという事で良いのかな?
まあ、こういうのは継続していく事が大事だからな。きっとその内、飴も受け入れて懐いてくれる筈だ。
このレッドウルフは忘れっぽいみたいだから、先は長そうだけどな。
ーーー
もう直ぐダンジョンの出口という所まで来たので、この辺に落としておいたロングソードを探す。
空間把握があるので見落とす事は無いと思うが、一応気をつけて通路を探したが何処にも無かった。
周辺にはスライムも居ない事から検証は成功だ。
ダンジョンに物を放置していると消える。
ダンジョンに取り込まれると言った方が分かりやすいか?
周辺にスライムは居ないので、ロングソードがスライムに食べられた訳ではないだろう。
スライムの移動速度では1時間で50mも進めなく、この周辺ではスライムを倒していないからな。
あとはダンジョンに取り込まれるまでの時間だ。
ロングソードをここに置いたのが1時間前になるから、1時間以内なのは確実だな。
鹿肉が血すら綺麗に消えていた事から、もっと短いかもしれない。
そして、スマホ。
賭けの要素でがあったが、1時間経っても放置していたスマホは消えなかった。
俺の予想通りならスマホは動いていたから消えなかった。電源を切った状態なら消えていたと思う。
スマホの画面を消しただけの待機状態なら、どうなっていたか分からない。
今回は録画状態にして放置していたので、スマホの中身は動いており消える条件を満たさなかったんだろう。
まあ、本当はスマホを録画状態で置いた時には、そんな検証にスマホを使おうなんて思っていなかったけどな。
ちょうど腕時計のアラームをセットしている時に、このままだと自分のスマホが危険だと気が付いた。
このままだとスマホが消えてしまう。
でもこの検証もやっておきたいのは確かだ。
この検証にそこまでの価値があるのか?
いや、ダンジョンの知識は重要だ。特に放置した物がどんな条件で消えるのかは今度のダンジョンに大きく関わる。
今どうしてもやらないといけない事なのか?
早いに越した事はない。
そして、悩んでいて思った。
あれ?命を賭けて挑んだ終末の使徒レプリカ戦より悩んでる?ってな。
確かにあの時は悩む余裕すらなかったかもしれない。
それでも今ここでこんなに悩んでいたら、スマホが俺の命より重いと言っている様に見える。
俺のスマホを取りに行こうとしていた足が止まる。
別にこの検証はスマホである必要性は全く無かった。
付けているこの腕時計でも十分その役割を果たす事が出来ただろう。
でも、ここでスマホを拾ってしまったら、俺はスマホより自分の命の方が価値が低い事を認めた事になる。
という思い込みもあって、スマホは検証の為、そのまま放置される事になった。
本当に無事にスマホが戻ってきて良かった。
あの時は意固地になっていたが、もしスマホが消えていたら父さんになんて説明するつもりだったんだ?
スマホが壊れたならまだ良いが、スマホが消滅したなんてどう言い訳すればいい。
まあ、何にせよ無事に戻ってきたんだ。たらればの話はやめる。
検証結果は確認出来た。さっさと帰ろう。
ダンジョンを出ようと思ったが、まだあったな。
今日は間引きがあまり出来たとは言えない。
もしかしたらモンスターがダンジョンの外に出てしまうかもしれなかった。
だから、さっき消えてしまった洗剤の壁をもう一度作る。
洗剤が消えないようにするには、ダンジョン内に壁を作らない事だ。
神眼の鑑定でダンジョンと外との境目を探す。
洞窟の出口少し手前で、鑑定結果がダンジョンの壁から土壁に変わった。
「ここがダンジョンの境目か」
俺はマジックポーチから洗剤を取り出し、ダンジョンの境目から少し出た所に袋ごと洗剤を積んでいく。
ダンジョン内なら兎も角、自然の中で洗剤を撒くのは心苦しかった。
洗剤をあるだけ全部並べていきスライムが通れない様道を塞ぐ。
これで洗剤は消えない。スライムも出てこれない。
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