独自ダンジョン攻略

sasina

文字の大きさ
上 下
83 / 125
未定

83.全部山田弟の所為だよ!

しおりを挟む

 
 陸上部のエースか。

 今はどんな気持ちで陸上の部活動で走ったり跳んだりしているんだろうな? と出て行った山田姉を思い出して考える。

 山田姉のステータス。

【名前:山田 海里
 性別:女
 年齢:17
 職業:学生
 lv:2
 スキル:
 HP:144/144
 EP:17/17 】 

 lvが低過ぎる。

 山田姉のさっきの反応からして、弟のダンジョンについて昨日今日知ったという感じではなかった。

 なのにlvが低く。勿論スキルも無い。

 弟もスキル無いけどな。

【名前:山田 大地
 性別:男
 年齢:17
 職業:学生
 lv:12
 スキル:
 HP:892/892
 EP:233/233 】

 それでも流石にlvが10も差が付いているのはおかしい。

 lv0ならまだ分かる。生き物を殺す事に抵抗がある、モンスターが怖い、とかな。

 でもlv2以上という事は、複数のモンスターを倒している可能性が高かった。

 一気にlvを飛ばして上げるなんてのは、慶みたいに自分より格上のモンスターを狩れるから出来る事で、山田姉弟の様な一般人にはまず無理だろう。

 山田姉は昨日今日弟のダンジョンについて知った訳でもなく、複数のモンスターを倒した実績もある。

 そんな山田姉が何故lv2なんて低レベルなんだろうか?

 特にダンジョンがトラウマになっている様子もない。時間が無かったとしてもlv2は流石に低い。

 それなら山田姉は何か明確な理由があって、ダンジョンに入る事をやめる事にしたと考える方が良い。

 なら思い付く理由は一つだった。

 山田姉は陸上を本気で頑張っているという事だ。

 初めてダンジョンに入ったのは、ダンジョンが出現してから直ぐにだろう。

 山田姉は好奇心からダンジョンに入り、モンスターを倒していく。
 そしてlv2になった所で違和感に気づいた。

 ダンジョンのモンスターを倒す事によって身体能力が上がっている事が分かった。

 だから、その時点でダンジョンに入るのをやめたんだろう。

 簡単に言えば、今の俺なら殆どの陸上競技で余裕で世界記録更新してしまえる。
 今の俺の身体能力は人間では確実に不可能な限界を越えているからな。

 まあ、俺でなくても山田弟のさっき割って入ってきた動きですら、もう普通の人間の動きとは言えなかった。

 たったlv12でもそうなるんだ。このlvをスポーツに持ち込んではスポーツが成り立たなくなる。見ていても面白くも何ともない。

 単純に、ああこの人はlvが高いんだな。と思われるのが関の山だろう。

 ドーピングなんてものではない。こんなのは唯の反則で、一生出場停止処分になるのが妥当だろう。

 スポーツを真剣にやっている山田姉にとってlvアップの恩恵は地獄の様な足枷となっていた。

 山田姉には身体能力が僅かとは言え上がったこの状態は、常にズルをしている様に感じてしまうだろう。

 これまで必死に鍛えてきた時間が無に帰してしまう。

 たったlv2分の身体能力とは言え、自分で認識出来る程度には身体能力が上がっているんだ。だから、俺はそんな状況でも陸上を続けている山田姉はどう思っているんだろうと柄にもなく考えて混んでしまった。

 ドーピングしなくても十分に強い人が、ドーピングをしたくもないのにしてしまった様な状況か。

 これが唯の馬鹿で、lvアップの恩恵を使って試合に勝つような奴だったら、もっとlvを上げていただろうな。

 山田弟を見ていれば、力の調節は簡単に出来て日常生活も普通に送る事が出来る事は、直ぐに分かっただろうからな。

 それなら俺や慶がやっている様に、lvアップの恩恵を使わずに試合に出ればいいだけだろ? と考えるかもしれない。

 しかし、アレは俺達が上手く調整しているだけで、恩恵無しの状態で全力を出そうとすれば、自然と体は恩恵を使ってしまう。
 スポーツの様な自分の限界に挑戦する動きで、恩恵を使わないようにするのは無理だろうな。

 それでも試合に出ようとすると、恩恵を使ってしまうか、恩恵無しの状態を意識し過ぎて自分の身体能力以下の動きしか出来なくなってしまうだろう。

 鑑定にも欠点があったな。

 見えてしまう事で簡単に予測が立てられる。見なくてもいい現実まで見えてしまうスキルというのも考えものだな。

 まあ、解決策なら無い事もないけどな。

 やり方自体は簡単だ。

 自分のEP以上の消費EPのパッシブスキルスクロールを使えば、俺が天眼を覚えた時の様にEP不足で、スキルやlvアップの恩恵が全く使えなくなるので、lv0の人間と同じ状態になる。

 その状態なら例え全力を出したとしても人間の限界を超える様な事はないので、フェアに陸上を続けていく事も出来る。

 特に罪悪感も抱く事もなく、自分の努力だけの力でな。

 俺は助けないし教えないけどな。

 流石にこれ以上、一気に秘密を共有する人数を増やすのは怖い。それに山田姉だけなら兎も角、山田弟はさっきの不用意な行動からも秘密の共有なんて不可能に近いから無理だった。

 山田弟は小池さんよりも調子に乗っていて、俺の親しい相手の友達という訳でも無いから、まあ運が無かったという事で陸上は諦めてくれ。

 これから変わっていく世界では、普通のスポーツが残っているのかも分からないんだからな。



しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

聖女召喚に巻き添え異世界転移~だれもかれもが納得すると思うなよっ!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,065pt お気に入り:845

僕たちは正義の味方

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:6

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,002pt お気に入り:33

ダンジョン世界で俺は無双出来ない。いや、無双しない

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:33

鉱夫剣を持つ 〜ツルハシ振ってたら人類最強の肉体を手に入れていた〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,002pt お気に入り:160

処理中です...