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あいつの話。
2、あいつの名前
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5月17日、放課後、シャーペンの音だけが響く静かな教室。
課題のことをすっかり忘れている、いや、聞いてもいなかった僕は今、黙々と連立方程式を解いていた。
あいつとふたりで。
まあ、ふたりといっても席は端と端で結構遠い。
いつもはじっと見つめていたあいつの事を、今は見ることができない。
普段、あいつの周りには友達がいて、僕と目が合うことなんて0%だ。
でも今日は僕があいつを見てしまったら、あいつも僕を見るだろう。多分、80%くらいの確率で。
あー、全然進まない。
カタッ、
あいつの方からペンを置く音が聞こえた。
まさかもう終わった??早すぎる、もうちょっと二人でいたいのに。
あー気になる。少し見てみようかな……。
いや、でも恥ずかしい。
普段ならこんなこと考えないのに、なんで。
顎を下げたまま、ゆっくり廊下側に頭を動かした。
「え…」
バッと頭を元の位置に戻した。なんでだ、あいつと目が合った。
落ち着いてきた心臓がまた跳ね上がったのがわかった。
っていうかあいつ、しっかり僕の方見てた!!
なんか、今も視線を感じるし、なんなんだ……!!
ギギーガタッ
立ち上がった音がして、なんだか僕の方に近づいてくる。
すっと僕の机の横に来てしゃがんだあいつが視界の隅に映った。
「ねぇ、問9の問題わかる?」
いつものあいつの声がこんな間近で聞こえてきたのは初めてだ。
「と、問9??えーーっと、まだ、そこまでは進んでない…」
無意識に震える声を押さえつけながら、なんでもないかのように返した。
「そっかー。どこまで進んだ?」
「えーと…問5、まで」
目が合わせられない。何も書いていないノートの端っこの方を見るのが精一杯だ。
「問5?じゃあ問9まで進んだら教えてよ!どうしても綺麗な数字になんなくて。間違ってる気がしてさ」
「わ、わかった」
あいつが立ち上がって自分の席に戻っていく。
静かにふぅーっと息を吐いた。
あいつの声、黒髪、第1ボタンが外れた襟元、机の上に置かれた指先。
どんな顔をしていたか見とけば良かった、と少し後悔すると同時に問9を解いてしまったら、次は僕から話しかけないといけないという緊張。
ほんと変な気分だ。
ガサガサと向こうでワークとノートと筆箱をまとめる音がしたと思ったら、Uターンしてあいつがこっちに向かってきた。
すると、隣の席の椅子が引かれて、そこにあいつが座った。
今度はすっとあいつの方を向くと、
「一緒にしようよ、早く終わるかもしんないし!」
いつも遠くから見ていた笑顔が、今は、間違いなく僕に向けられていた。
「名前、小道朝陽くんで合ってるよね?俺、城川周!なんか今更自己紹介すんのも恥ずかしいね」
恥ずかしい。確かに恥ずかしすぎる。
あいつが、僕の名前を言ったんだ。
「し、城川くん」
「ん?なに?」
今度は目を逸らせない。
なんで、わかんない。
「大丈夫?小道くん、顔赤いよ」
夕日のせいだよ、って言いたかったけど口が少し開いたまま、声は出なかった。
城川くんのせいだ。
また、心臓がうるさくなりはじめた。
課題のことをすっかり忘れている、いや、聞いてもいなかった僕は今、黙々と連立方程式を解いていた。
あいつとふたりで。
まあ、ふたりといっても席は端と端で結構遠い。
いつもはじっと見つめていたあいつの事を、今は見ることができない。
普段、あいつの周りには友達がいて、僕と目が合うことなんて0%だ。
でも今日は僕があいつを見てしまったら、あいつも僕を見るだろう。多分、80%くらいの確率で。
あー、全然進まない。
カタッ、
あいつの方からペンを置く音が聞こえた。
まさかもう終わった??早すぎる、もうちょっと二人でいたいのに。
あー気になる。少し見てみようかな……。
いや、でも恥ずかしい。
普段ならこんなこと考えないのに、なんで。
顎を下げたまま、ゆっくり廊下側に頭を動かした。
「え…」
バッと頭を元の位置に戻した。なんでだ、あいつと目が合った。
落ち着いてきた心臓がまた跳ね上がったのがわかった。
っていうかあいつ、しっかり僕の方見てた!!
なんか、今も視線を感じるし、なんなんだ……!!
ギギーガタッ
立ち上がった音がして、なんだか僕の方に近づいてくる。
すっと僕の机の横に来てしゃがんだあいつが視界の隅に映った。
「ねぇ、問9の問題わかる?」
いつものあいつの声がこんな間近で聞こえてきたのは初めてだ。
「と、問9??えーーっと、まだ、そこまでは進んでない…」
無意識に震える声を押さえつけながら、なんでもないかのように返した。
「そっかー。どこまで進んだ?」
「えーと…問5、まで」
目が合わせられない。何も書いていないノートの端っこの方を見るのが精一杯だ。
「問5?じゃあ問9まで進んだら教えてよ!どうしても綺麗な数字になんなくて。間違ってる気がしてさ」
「わ、わかった」
あいつが立ち上がって自分の席に戻っていく。
静かにふぅーっと息を吐いた。
あいつの声、黒髪、第1ボタンが外れた襟元、机の上に置かれた指先。
どんな顔をしていたか見とけば良かった、と少し後悔すると同時に問9を解いてしまったら、次は僕から話しかけないといけないという緊張。
ほんと変な気分だ。
ガサガサと向こうでワークとノートと筆箱をまとめる音がしたと思ったら、Uターンしてあいつがこっちに向かってきた。
すると、隣の席の椅子が引かれて、そこにあいつが座った。
今度はすっとあいつの方を向くと、
「一緒にしようよ、早く終わるかもしんないし!」
いつも遠くから見ていた笑顔が、今は、間違いなく僕に向けられていた。
「名前、小道朝陽くんで合ってるよね?俺、城川周!なんか今更自己紹介すんのも恥ずかしいね」
恥ずかしい。確かに恥ずかしすぎる。
あいつが、僕の名前を言ったんだ。
「し、城川くん」
「ん?なに?」
今度は目を逸らせない。
なんで、わかんない。
「大丈夫?小道くん、顔赤いよ」
夕日のせいだよ、って言いたかったけど口が少し開いたまま、声は出なかった。
城川くんのせいだ。
また、心臓がうるさくなりはじめた。
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