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あいつの話。
3、城川くん
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「小道くん?」
目が合ったあいつ、こと城川くん。
別に名前を知らなかった訳では無い。
なんか名前を呼ぶことさえ、恥ずかしかったんだ。
「あ、ううん。なんでもない、続き早く解くから」
熱い顔をとにかく落ち着けたかった僕はとりあえず、目の前の連立方程式に集中したかった。
ずっと見つめていたあいつが、今隣の席にいる。
城川くんとは今年初めて同じクラスになった。
クラス委員長になって黒板の前に立つ城川くんを見た時初めて存在を認識した。
すごい整った顔だなぁ~、とかそんなことを考えていたと思う。
よく笑うし、ハキハキとした口調でみんなをまとめる、字も綺麗。
小学校までは足が早くて、少しおちゃらけていて、よくふざける面白い人がモテていた。
そんなやつとは真反対なやつ。
いつからあいつの事を見るようになったんだっけ、もう覚えてないけど。
「小道くん、問何までいった?」
ふと、城川くんに話しかけられた。
「えっと、問8まで解けた。ちょうど。」
「お!じゃあ問9解いてみて~、綺麗な数字になるんかなぁ、俺ももう1回解いてみよ~」
会話の流れがだんだん自然になってきて、っていうか僕の心臓が少し落ち着いてきただけなんだけど。
「あ、解けたよ、綺麗に」
「え!本当!!ちょっと見ていい?」
そう言って城川くんの綺麗な黒髪が僕の黒髪に重なりそうな近さ。
「ほんとだー俺、どこ間違ってんだろ」
一瞬で離れていく
「み、見せて」
さっきよりちょっと裏返った声がでてしまったけど、城川くんはなんとも思ってないように、自分のノートを僕の机に置いた。
「あ、ここかー。+と-間違えてる。ありがと!小道くん!あとはできそう!」
僕が見る前に自分で間違ってるところを見つけられたら、何も言うこと無くなっちゃうじゃん。
「ううん、良かった!あとちょっとだし頑張ろ」
数十分たって、隣でノートの閉じる音が聞こえた。
「終わったー!小道くんはどんな感じ?」
大きく腕を上に伸ばしてこっちを見ている城川くん。
「僕ももう終わるよ。」
まだ3問くらい残ってるけど、すぐ終わらせるからまあ嘘はついてない、と思う。
城川くんがグッと上半身をこちらに伸ばして僕のノートを見た。
あ、まだ終わらないのバレたかも。
「あと3問?じゃあ俺のノート、みる?」
「え」
そんなタイプだと思わなかった。自力で解く真面目なやつだと思ってたから。
「いいの?」
「いいよ、早く写して一緒に帰ろ」
ドキン、とまた胸が鳴った。
城川くんのノートを僕のワークの上に乗っけて、綺麗な字が見えた。
サササッと急いで書いていると、
「そんなに急いでないからゆっくり書きなよ」
と笑われた。恥ずかしい。
僕がノートを写しているとき城川くんはどこを見てるんだろう。
僕の字?手?顔?それとも自分の解いた答えが合ってるか見直してるのかな。
わかんないけど、早く写そう。
「終わった!城川くんありがとう」
顔を上げて城川くんを見ると、目が合った。
「うん、じゃあ帰る用意して先生のとこ持っていこ」
ノート以外を鞄に入れて、2人で教室を出た。
廊下から見える太陽はもうだいぶ暮れかかっていた。
2人で並んで歩くことも初めてで、身長は城川くんの方が少し高い。
僕が162cmだから多分城川くんは165cmくらいかな。
身長何センチ?っていう普通の会話も聞けないくらい、廊下は静かだった。
職員室のドアをノックしてから入って、城川くんが名前と要件を言った。
数学の竹園先生が出てきて廊下で少し喋った。
「おーおつかれ、次はちゃんとやってこいよー」
髪が少し巻かれてて(天然パーマなのかもしれないけど)濃い顔立ちをしていて女子に人気な若い先生。
「遅れてすみません。次はやってきます」
「すみません」
と2人で返事を返した。
「城川はしょうがないけど、小道は授業休んでなかったろ~ちゃんと話聞いとけな~」
と低い声で言った。
城川くんって課題の話した時いなかったっけ。
ノートを受け取った先生が気をつけて帰れな、と優しく言ってくれた。
校舎を出ると、まだ部活をしている生徒の声が小さく聞こえてきた。
校門までの道で、城川くんが言った。
「俺、いつも自転車なんだけど小道くんはいつも何で来てる?」
「僕は歩きだよ」
あーじゃあ一緒に帰れないのか、という悲しい気持ちとほっとするの気持ちとごちゃ混ぜになって変な感じ。
「そうなんだ、門出て左の方面?」
「うん、そうだよ」
「お、じゃあ今日は自転車押して帰ろうかな~」
「え、いいよいいよ!先帰って大丈夫だから」
「そんなん言うなよ、今日は誰かと一緒に帰りたい気分なんだ」
「わかった。」
駐輪場の方向へと行き先が変わって、歩いていく途中、さっきの竹園先生の話を思い出した。
「そういえばさ、城川くん、前の数学の授業受けてなかったの?」
「あー数学の前の体育の授業で足やっちゃって、1時間保健室で休んでたんだ」
あ、思い出した。そうだった、あの体育の授業で城川くんが怪我して保健室運ばれてたな。
え、うわ、もうひとつ思い出した。僕それで城川くんが気になって授業聞いてなかったってことか。
あー墓穴掘った、恥ずかしい。
「小道くんはなんで授業聞いてなかったの?」
城川くんは自転車の鍵を開けて方向転換している。
今聞かないでそれ、、。
「あー、いや、なんだっけな」
ハハッと苦笑いしたけどごまかせたかな、わかんない。
それからどこかのお寺を超えたあたりで、城川くんとは分かれた。
何話したっけな、なんか色々、さっきの連立方程式むずかったなーとかそんな面白くもない話をしてたと思う。
今日はもう色々疲れた。早く帰ろう。
その反面、気持ちは軽やかだった気がする。
目が合ったあいつ、こと城川くん。
別に名前を知らなかった訳では無い。
なんか名前を呼ぶことさえ、恥ずかしかったんだ。
「あ、ううん。なんでもない、続き早く解くから」
熱い顔をとにかく落ち着けたかった僕はとりあえず、目の前の連立方程式に集中したかった。
ずっと見つめていたあいつが、今隣の席にいる。
城川くんとは今年初めて同じクラスになった。
クラス委員長になって黒板の前に立つ城川くんを見た時初めて存在を認識した。
すごい整った顔だなぁ~、とかそんなことを考えていたと思う。
よく笑うし、ハキハキとした口調でみんなをまとめる、字も綺麗。
小学校までは足が早くて、少しおちゃらけていて、よくふざける面白い人がモテていた。
そんなやつとは真反対なやつ。
いつからあいつの事を見るようになったんだっけ、もう覚えてないけど。
「小道くん、問何までいった?」
ふと、城川くんに話しかけられた。
「えっと、問8まで解けた。ちょうど。」
「お!じゃあ問9解いてみて~、綺麗な数字になるんかなぁ、俺ももう1回解いてみよ~」
会話の流れがだんだん自然になってきて、っていうか僕の心臓が少し落ち着いてきただけなんだけど。
「あ、解けたよ、綺麗に」
「え!本当!!ちょっと見ていい?」
そう言って城川くんの綺麗な黒髪が僕の黒髪に重なりそうな近さ。
「ほんとだー俺、どこ間違ってんだろ」
一瞬で離れていく
「み、見せて」
さっきよりちょっと裏返った声がでてしまったけど、城川くんはなんとも思ってないように、自分のノートを僕の机に置いた。
「あ、ここかー。+と-間違えてる。ありがと!小道くん!あとはできそう!」
僕が見る前に自分で間違ってるところを見つけられたら、何も言うこと無くなっちゃうじゃん。
「ううん、良かった!あとちょっとだし頑張ろ」
数十分たって、隣でノートの閉じる音が聞こえた。
「終わったー!小道くんはどんな感じ?」
大きく腕を上に伸ばしてこっちを見ている城川くん。
「僕ももう終わるよ。」
まだ3問くらい残ってるけど、すぐ終わらせるからまあ嘘はついてない、と思う。
城川くんがグッと上半身をこちらに伸ばして僕のノートを見た。
あ、まだ終わらないのバレたかも。
「あと3問?じゃあ俺のノート、みる?」
「え」
そんなタイプだと思わなかった。自力で解く真面目なやつだと思ってたから。
「いいの?」
「いいよ、早く写して一緒に帰ろ」
ドキン、とまた胸が鳴った。
城川くんのノートを僕のワークの上に乗っけて、綺麗な字が見えた。
サササッと急いで書いていると、
「そんなに急いでないからゆっくり書きなよ」
と笑われた。恥ずかしい。
僕がノートを写しているとき城川くんはどこを見てるんだろう。
僕の字?手?顔?それとも自分の解いた答えが合ってるか見直してるのかな。
わかんないけど、早く写そう。
「終わった!城川くんありがとう」
顔を上げて城川くんを見ると、目が合った。
「うん、じゃあ帰る用意して先生のとこ持っていこ」
ノート以外を鞄に入れて、2人で教室を出た。
廊下から見える太陽はもうだいぶ暮れかかっていた。
2人で並んで歩くことも初めてで、身長は城川くんの方が少し高い。
僕が162cmだから多分城川くんは165cmくらいかな。
身長何センチ?っていう普通の会話も聞けないくらい、廊下は静かだった。
職員室のドアをノックしてから入って、城川くんが名前と要件を言った。
数学の竹園先生が出てきて廊下で少し喋った。
「おーおつかれ、次はちゃんとやってこいよー」
髪が少し巻かれてて(天然パーマなのかもしれないけど)濃い顔立ちをしていて女子に人気な若い先生。
「遅れてすみません。次はやってきます」
「すみません」
と2人で返事を返した。
「城川はしょうがないけど、小道は授業休んでなかったろ~ちゃんと話聞いとけな~」
と低い声で言った。
城川くんって課題の話した時いなかったっけ。
ノートを受け取った先生が気をつけて帰れな、と優しく言ってくれた。
校舎を出ると、まだ部活をしている生徒の声が小さく聞こえてきた。
校門までの道で、城川くんが言った。
「俺、いつも自転車なんだけど小道くんはいつも何で来てる?」
「僕は歩きだよ」
あーじゃあ一緒に帰れないのか、という悲しい気持ちとほっとするの気持ちとごちゃ混ぜになって変な感じ。
「そうなんだ、門出て左の方面?」
「うん、そうだよ」
「お、じゃあ今日は自転車押して帰ろうかな~」
「え、いいよいいよ!先帰って大丈夫だから」
「そんなん言うなよ、今日は誰かと一緒に帰りたい気分なんだ」
「わかった。」
駐輪場の方向へと行き先が変わって、歩いていく途中、さっきの竹園先生の話を思い出した。
「そういえばさ、城川くん、前の数学の授業受けてなかったの?」
「あー数学の前の体育の授業で足やっちゃって、1時間保健室で休んでたんだ」
あ、思い出した。そうだった、あの体育の授業で城川くんが怪我して保健室運ばれてたな。
え、うわ、もうひとつ思い出した。僕それで城川くんが気になって授業聞いてなかったってことか。
あー墓穴掘った、恥ずかしい。
「小道くんはなんで授業聞いてなかったの?」
城川くんは自転車の鍵を開けて方向転換している。
今聞かないでそれ、、。
「あー、いや、なんだっけな」
ハハッと苦笑いしたけどごまかせたかな、わかんない。
それからどこかのお寺を超えたあたりで、城川くんとは分かれた。
何話したっけな、なんか色々、さっきの連立方程式むずかったなーとかそんな面白くもない話をしてたと思う。
今日はもう色々疲れた。早く帰ろう。
その反面、気持ちは軽やかだった気がする。
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